2007年10月25日

●SUN209/エルヴィス最初のシングル(EJ第2192号)

 エルヴィス、スコティ、ビル、フィリップス――この4人は、
「危険な音」を生み出した翌日、再びサン・レコードのスタジオ
に集まって、打合わせをしています。「B面を何にするか」を決
めなければならなかったからです。しかし、この日もB面に入れ
る曲は決まらなかったのです。
 しかし、サム・フィリップスは焦らず慎重に仕事を進めるタイ
プであり、この日も一日やって結論が出ないと、少し間を置いて
またはじめようということにしてその日は終ったのです。サムは
自分が心からいいと思わない限り妥協しなかったからです。
 みんなが引き上げると、サムは親友のデューイ・フィリップス
に電話します。 このもうひとつのフィリップスであるデューイ
は、ラジオ放送局でディスクジョッキーの仕事をやっており、自
分の番組「レッド・ホット・アンド・ブルー」を持っていたので
す。サムの要請を受け入れて、その日の夜、デューイは自分の放
送終了後にスタジオにやってきたのです。
 2人はビールを飲みながらエルヴィスの「ザッツ・オール・ラ
イト」を聴いたのです。何回も何回も繰り返して聴いたのです。
そのうえでデューイは次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
   これはヒットになる。でっかいヒットになるぜ。
            ――デューイ・フィリップス
―――――――――――――――――――――――――――――
 次の日、デューイはサムに電話を入れ、昨夜聴いた「ザッツ・
オール・ライト」のデモ盤をカッティングして欲しいと要請して
います。サムは早速デモ盤を作って放送局に届けたのです。
 デューイは自分の番組で「ザッツ・オール・ライト」を流した
ところ、もの凄い反応を呼んだのです。放送局にはリクエストが
殺到し、何十回も曲は反復して流されたのです。それでもリクエ
ストは止まらなかったのです。
 あまりの反応の凄さにデューイは、サムにエルヴィスを放送局
に連れてきてくれと依頼します。サムから話を聞いてエルヴィス
は震えあがって逃げ出し、映画館に姿を隠してしまったというの
です。やっとのことで、放送局に連れてこられたエルヴィスは、
マイクの前で怯えて何も話せない状況であったといいます。
 そこでデューイは本番前の打ち合わせをしようと騙して本番の
インタビューをはじめたのです。最初は次の質問――実は一番大
事な質問からはじめたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     デューイ :高校はどこだった?
     エルヴィス:はい、ヒュームズです
―――――――――――――――――――――――――――――
 なぜこの質問が大事かというと、このやりとりでエルヴィスが
白人であることがわかるからです。ヒュームズ・ハイスクールは
白人用の高校であったからです。レコードを確実に売るには歌手
が白人であることを知らせておく必要があったからです。
 その日、サン・レコードの電話も鳴りっ放しだったのです。と
にかく急いでB面を決める必要がある――サム・フィリップスは
鳴り止まない電話を眺めながら考えていたのです。
 また、スタジオに集まった4人は、B面の選曲をはじめたので
す。その時点でまだ、できていないレコードの予約は5000枚
以上入っていたというのです。
 しかし、いつものように決定的なものが出ずにその日も終ろう
としていたときです。今度はビル・ブラックが「ブルー・ムーン
・オブ・ケンタッキー」という曲を少しテンポを上げながら、お
どけた甲高い裏声で歌い始めたのです。エルヴィスとスコティも
演奏に加わったのです。
 「これだ!!これはいける」とサムは叫んだのです。「ザッツ・
オール・ライト」は、黒人のブルースの上に白人のカントリーを
乗せているのに対し、「ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー」
は白人のカントリーの上に黒人のブルースを乗せているのです。
これでやっとB面は決定されたのです。
 サム・フィリップスは「ザッツ・オール・ライト」と「ブルー
・ムーン・オブ・ケンタッキー」の2曲を表裏に収録したレコー
ドを作って、メンフィス中のディスク・ジョッキーに配布したの
です。各局とも反響は上々だったのです。
 そして、1954年7月19日、サン・レコードからエルヴィ
スの最初のシングル「SUN209」が発売されたのです。「ザ
ッツ・オール・ライト」はメンフィスのヒットチャートを一気に
駆け上がって第1位となり、「ブルー・ムーン・オブ・ケンタッ
キー」もそれに続いたのです。
 ビルボード誌は、エルヴィスについて、次のように書いてエル
ヴィスを絶賛したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 エルヴィス・プレスリーは、カントリーにおいても、リズム&
 ブルースにおいても、メロディをたたき出すことのできる有望
 な新人歌手である。           ――ビルボード誌
             ――前田絢子著/角川選書/413
      『エルヴィス、最後のアメリカン・ヒーロー』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 エルヴィスを中心として、3人の関係者が生み出した「危険な
音」は、南部社会はおろか、全米を巻き込み、ついには全世界を
征服する音になろうとは、さすがのサム・フィリップスも考えて
いなかったと思います。
 とにかくこのサン・レコードの発表した「SUN209」が、
後のロックンロール――略してロックという音楽の最初の音楽に
なったことは確かなのです。
 いや、今にして考えると、このロックという音楽は、黒人文化
を吸い込んだ新しい価値観の主張であり、時を同じくして起こっ
た公民権運動を社会の内部から支える強烈なエネルギーになった
といえるのです。         ――[エルヴィス/04]


≪画像および関連情報≫
 ・小泉純一郎元首相とエルヴィス
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ポップミュージックの「キング」と呼ばれたエルビス・プレ
  スリーが亡くなって30年。命日の8月16日には「キング
  ・オブ・ロックンロール」をしのぶイベントがエルビスゆか
  りのメンフィスでも大々的に開かれたが、秋に入っても、そ
  の熱気は冷めない。米テネシー州メンフィス。エルビスが長
  年暮らした場所で、ファンにとっての聖地だ。昨年6月、エ
  ルビスファンの小泉純一郎元首相も訪問した邸宅グレースラ
  ンドは、一部が観光施設として公開され、今も多数のファン
  が内外から訪れる。    ――エルヴィス関連サイトより
  ―――――――――――――――――――――――――――

サン・レコードと「SUN209」.jpg
posted by 平野 浩 at 04:24| Comment(0) | TrackBack(0) | エルヴィス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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