2001年07月19日

●日銀の『窓口指導』とは何か(EJ第662号)

 佐々木直、前川春雄、三重野康――これら3人のプリンスの関
係をもう少し調べてみる必要があります。佐々木が人事部長をし
ていたときのことです。一人の目立った学生と面接したのです。
それが三重野康だったのです。彼は野心家で上方志向があり、第
一志望は大蔵省で、日銀は第二志望だったのです。
 佐々木は本能的にこの男を大蔵省にやってはならないと考えて
三重野を説得し、日銀に入社させます。そしてほどなく、自分の
はじめてのプリンスにすることを決意し、計画的に重要なポスト
を歴任させていったのです。
 1958年から60年まで三重野はニューヨーク日銀駐在事務
所の勤務を命じられます。そのときのニューヨーク事務所長が前
川春雄だったのです。一万田が蔵相をしていた時代のことです。
佐々木、前川、三重野はこうように繋がっており、そのバックに
は一万田蔵相がいたのです。
 さて、日銀の政策について研究するさい「窓口指導」というも
のについて知っておく必要があります。この「窓口指導」こそ一
万田が作り出した銀行の信用統制の方法であり、1991年7月
にそれが突如廃止されるまで、この信用統制システムを佐々木、
前川、三重野らが引き継いでいくことになるのです。
 1950年代のはじめには経済は2桁の成長をしており、融資
の申し込みは莫大になっていたのです。1946年6月から19
54年6月までの8年間、一万田は日銀総裁として、さらに19
57年7月から1958年6月までは蔵相として金融界に絶大な
権力を振るったのです。
 その銀行信用の統制システムとは、日銀総裁が融資総額の伸び
率を決定し、それから営業局長と2人で増加分を各銀行に融資割
り当てをして配分するのです。このときの営業局長は、もちろん
佐々木直です。
 そのさい銀行は大口の借り手の氏名にいたるので細かい融資計
画を毎月日銀に提出するよう求められていたのです。営業局は、
信用配分計画(どの銀行にいくら出すかを決める計画書)を作り
銀行の融資計画と調整をして銀行に伝えるのです。その融資の配
分額を聞くために銀行首脳が日銀に行くと、文字通り日銀のカウ
ンター、つまり窓口で融資割り当て額を告げられたので、誰がい
うともなく「窓口指導」というようになったのです。
 これは銀行間の過当競争を防ぐために一万田が考案した銀行の
競争を制限するシステムだったのです。このように、銀行の命運
を握る信用統制の権限を一手に握っていたのは、一万田と佐々木
だったのです。佐々木は、1951年4月から54年9月まで元
締めである営業局長を務めていたのです。
 しかも、1962年4月から佐々木は副総裁になり、1969
年からは総裁に就任、以後5年間総裁として君臨するのです。つ
まり、佐々木は実に12年間にわたって、日本経済の操縦桿をに
ぎっていたことになるのです。
 しかし、戦後一万田総裁を中心に信用配分を行う日銀の権力の
阻止に動いたのは大蔵省です。戦時中大蔵省は軍部と企画院に報
告義務を負い、さらに内務省によってその持てる力を大きく制約
されていました。
 ところが戦後軍は消滅し、内務省は解体、企画院は経済企画庁
という下位官庁になり、そこに権力の大きな空間がぽっかりと空
いたのです。大蔵省はそこにたちまち割り込み、徴税、関税、国
際金融、金融機関の監督、財務政策、金融政策を司るという政府
機関の中で最大の官庁になっていったのです。
 当時、日銀はその大蔵省に属する政府機関であり、大蔵省には
頭が上がらなかったのです。占領軍は1949年に日銀法を改正
したのですが、金融政策は依然として大蔵省の手の内にあったの
です。しかし、一万田総裁は日銀ために巧妙な策をめぐらして日
銀に何とか金利のコントロールと市場資金量の調節機能を取り込
むために活躍します。
 一万田総裁は大蔵省に金利の裁量権を委ねることを持ちかける
と、大蔵省はそれに飛びついてきたのです。しかし、大蔵省が金
利コントロールの政策について教えを乞うと、一万田とその部下
は専門用語を多用して素人にわかる代物ではないことを印象づけ
ることに成功するのです。
 そして、一万田総裁は世間に対して次のようにPRを行い、金
利と市場資金量の調節機能の権限を握ることに成功します。
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 『中央銀行にゆだねるべきことは、何といっても公定歩合の問
 題である。これは日本銀行にまかせ、政治的な介入があっては
 ならないと思う。また、準備預金制度についての、これは市場
 資金量の調節操作であり、技術的なことが多いので、日本銀行
 にまかせる方がよいと思われる』。
 (ヴェルナー著、『円の支配者』P114より。草思社刊)
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 さて、ここでひとつクイズを出します。どこの国の話は当てて
いただきたいのです。
 この国はまじりけのない資本主義が特徴。この国では企業が外
部資金を調達する主たる場は株式市場なのです。株主は非常に強
力で、高い配当を要求します。そのために経営者は短期的利益を
求める傾向があります。
 経営役員の多くは社内から選ばれず、外部の者が任命されるの
が通例です。強烈な企業買収戦のために経営者はいつ企業買収の
攻撃を受けるかわからないので不安です。もし、業績を上げなけ
れば、即座に地位を追われる可能性があるのです。
 この国の労働市場では採用・解雇が頻繁に行われ、従業員の転
職率も高いのです。所得と富の格差は巨大です。貯蓄率は低く、
消費が80%と国内総生産の最大部分を占めています。
 政府の規制は少ないし、官僚が経済に直接的な影響力を行使す
ることは少ないのです。政策課題については激しい論争があり、
国民は政治に強い関心を持っているのです。
 さて、この国はどこの国でしょうか。
               −−[円の支配者日銀/18]
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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