2023年11月21日

●「『ミセス・ワタナベ』の再来の意味するもの」(第6048号)

 2023年5月から6月にかけて、日本経済売新聞系の新聞や
雑誌に「ミセス・ワタナベ」の記事が出ています。参考までにそ
の3本のそれぞれのタイトルと、リード文をを以下に記載してお
きます。
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@「帰ってきたミセス・ワタナベ」
 東京市場の為替相場動向に大きな影響力を持つ個人投資家の外
国為替証拠金(FX)取引に異変が生じている。昨年秋には、約
32年ぶりに1ドル=150円の節目を超える大幅な円安・ドル
高が進むなど、為替取引が再び活況を示すなかでかつて「ミセス
・ワタナベ」と呼ばれた中高年層の投資家が市場に帰ってきた。
そして彼らの復活は、為替相場動向にも少なからぬ影響を及ぼし
つつある。 ──「日経ヴェリタス」2023年5月28日号」
A「円脹らむ投機売り/ミセス・ワタナベ「白旗」で下値も」
 外国為替市場で円安・ドル高が止まらない。米連邦準備理事会
(FRB)の利上げ継続観測が強まるなか、日銀は大規模な金融
緩和を維持。金融政策の方向性の違いが目立ちやすく、投機によ
る円売り・ドル買いが増えている。「ミセス・ワタナベ」と呼ば
れた日本の外為証拠金(FX)取引を手掛ける個人投資家は円
安にあらがうものの、「白旗」を揚げる事態に追い込まれれば円
相場が下値を探るシナリオも浮上する。
      ──2023年5月29日付、日本経済新聞電子版
B変容するミセス・ワタナベ/22年は順張り転向、日銀調査
 「ミセス・ワタナベ」と呼ばれる外国為替証拠金(FX)取引を
手掛ける日本の個人投資家が2022年、従来のイメージと異な
る取引を繰り返していたことが日銀の調査で浮かび上がった。こ
れまで「相場に逆張り」「高金利の外貨で運用益を狙う」という
イメージが強かったが、歴史的な円安が進むなか、相場の流れに
沿った「順張り」取引が増えた。世界の個人関連取引の約3割を
占める日本勢の変容が相場変動を増幅した可能性がある。
       ──2023年6月9日付、日本経済新聞電子版
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 1990年代終わりの「バブル」というと、誰でも「日本のバ
ブル」と思ってしまいますが、米国のバブル──インターネット
・バブルもあります。このバブルは、1990年代前期から20
00年代初期にかけて、米国市場を中心に起こっています。ハイ
テク・バブルとか、ITバブルとか、ドットコムバブルなどとい
われています。
 このとき、「ドットコム会社」と呼ばれる多くのIT関連ベン
チャーが設立され、1999年から2000年までの足掛け2年
間に亘って株価が異常に上昇しますが、2001年には完全には
じけてします。これがITバブルです。
 日本では竹中改革が終了し、やっと景気が少し回復して日本経
済に薄明かりが差すようになったのです。このときの日銀総裁は
福井俊彦氏であり、そのとき福井日銀は、量的緩和策の長期維持
を打ち出していたのです。そのため「円キャリー取引」ができる
環境があったのですが、そのときの日本と米国の中央銀行の事情
について、河浪武史氏の本から引用します。
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 日本の個人投資家が世界の外為市場でカを持ったのは、低金利
の円を借り入れて高金利のドルきに投資する「円キャリートレー
ド」の環境があったからだ。福井日銀は量的緩和の長期維持を打
ち出していた。一方で、米連邦準備理事会(FRB)はITバブ
ル崩壊の傷が癒え、10%まで下がった政策金利を急ピッチで引
き上げようとしていた。グリーンスパン議長(当時)は04年に
利上げを再開して17会合連続の金融引き締めを断行する。20
06年には政策金利は5%まで引き上げられた。日米金利差は一
気に拡大して、個人の円キャリートレードが爆発的に広がってい
く。           ──河浪武史著/日本経済新聞出版
         『日本銀行/虚像と実像/検証25年緩和』
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 今とは事情が違うものの、このときも日米の金利差については
今と同じようなことが行われていたのです。グリーンスパン議長
は、17会合連続の利上げを行ったのに対して、福井総裁は量的
緩和を継続していたのです。これでは、日米の金利差は開き、ミ
セス・ワタナベが活躍する環境になるのです。
 「干天の慈雨」という言葉がありますが、日照り続きのときに
降る雨のことです。当時のバブル処理が癒えない日本経済にとっ
て、この円キャリートレンドがまさに慈雨となり、輸出主導によ
る経済の持ち直しが可能であったのです。
 雇用量、生産量、輸出入量など時間的、場所的に異なる値を示
すものについて、その相対的な差異を実体的変化として数量的に
把握できるように作成された統計数値のことを、輸出数量指数と
いいますが、この指数が2002年〜2004年は伸び続け、海
外に散らばっていた製造拠点は、それに伴う円安により、国内回
帰が鮮明になったのです。
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      ◎輸出数量指数
       2002年 ・・・  7・9%
       2003年 ・・・  4・9%
       2004年 ・・・ 10・6%
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 しかし、日本の輸出を支えた円安トレンドは、まさに「砂上の
楼閣」に過ぎなかったのです。金利差を当て込んで、円キャリー
トレードによって、円安が増幅していたからです。したがって、
経済のバランスを反映しておらず、2008年のリーマン・ショ
ックで円キャリー取引は一気に巻き戻されてしまったからです。
これによって、白川日銀が急激な円高・ドル安が起こり、もがき
苦しむことになるのです。
           ──[物価と中央銀行の役割/058]

≪画像および関連情報≫
 ●大円安相場と注意すべき円キャリートレードの巻き戻し
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   ドル/円は2022年9月7日のNY市場で一時145円
  に迫る水準まで値下がりした。1998年8月以来の24年
  ぶりの円安ドル高水準となっている。
   来年4月の黒田東彦日本銀行総裁の任期満了もにらみ、市
  場では日銀の政策修正に対する思惑がくすぶり続けているが
  政府債務の多い日本は、「金利を上げたくても上げられない
  国」なのである。日本がB級の新興市場のように見える急激
  な円安に対して日銀は何も問題がないと見ていることを世界
  に示すためにオペで対応した。
   日本人は今、「給料は上がらないが物価は上がる」という
  典型的なスタグフレーションの渦中にいるのである。公的債
  務の対GDP(国内総生産)比の限界は256%程度と言わ
  れ、1940年代に英国が一度経験しているだけである。公
  的債務の対GDP比256%で少子高齢化が進む日本は、金
  利が上がれば厳しい事態を迎える。
   24年前の1998年も為替が大きく動いた一年だった。
  2月に一時130円を割り込んだドル/円は3月、4月、5
  月と上昇を続け、6月には140円を抜け、その後1週間ほ
  どで  一気に、146円まで上昇。8月には147円台ミ
  ドルまでドルが買われ、そこでピークアウトし反転、10月
  にはほんの数日のうちに30円近くも円高が進む目まぐるし
  さであった。後にも先にも1998年のようなすさまじい円
  高相場を筆者は体験したことがない。
    https://media.rakuten-sec.net/articles/-/38827
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白川方明元日銀総裁.jpg
白川方明元日銀総裁


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物価と中央銀行の役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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