は中央銀行の金融政策によって決まりますが、長期金利は、長期
資金の需給関係によって決まるもので、物価の変動、短期金利の
推移(金融政策)などの長期的な予想で変動します。そういう意
味で「長期金利は経済の基礎体温」と呼ばれています。
米国では、その長期金利が下がっています。長期金利は、一時
4・84%程度まで上がっていましたが、それが4・57%程度
まで下がっています。この0・27%の下げ幅は、8カ月ぶりの
大きさなのです。何が起きているのでしょうか。
米国では、このように、市場予想を下回る経済指標の発表が相
次いでいます。具体的には、3日発表の10月米雇用統計で、非
農業部門の就業者数は前月から15万人増えていますが、市場予
想では17万人の増加であり、下回っています。平均時給の伸び
も鈍化し、FRBが12月のFOMCにおいて、利上げを見送る
根拠にされているといわれます。
これによって今のところ株価の上昇が続いています。米FRB
のパウエル議長の発言も慎重で、FRBは、明らかに経済のソフ
トランディングを狙っているからです。すなわち、FRBは、利
上げをしてインフレを抑制するが、景気を悪化させず、経済を安
定させて、ソフトランディングを成功させつつあります。
この先週末に発表された米国の経済指標がことごとく市場予想
を下回ったことから、FRBの金融引き締めの長期化への懸念が
後退したとの判断から、米国では株高が進んでいます。そして、
この流れを受け、日本株にも買いが入っています。その結果、日
経平均株価は、6日の東京株式市場において、大幅に続伸してい
るのです。
しかし、今回の日米およびアジアの株高には留意しなければな
らないことがあります。そもそも今回の株高は、米国の長期金利
が予想よりも下がったことによって起きています。米FRBはイ
ンフレを抑えようとして短期金利を連続して上げてきています。
金利を上げると、金融を引き締めることになるので、景気が悪
くなります。しかし、米国の経済は予想以上に強いので、景気は
悪化していません。米経済の強さは、添付ファイルの米国の指標
によく表れています。
したがって、もはや米国のインフレはこのまま収束して、今後
利上げを行わないので済むのではないかという期待が株価を押し
上げているといえます。本来であれば、長期金利は次の理屈で上
昇します。
景気がよくなると企業の業績がよくなり、従業員の賃金が上昇
して個人消費も活発になります。モノが売れるようになるので企
業は設備投資を行う意欲が増し、お金を借りたいと資金需要が高
まります。そこで金利の上昇が予想されます。このため、多くの
人が今後、景気がよくなると考えるようになれば、長期金利は上
がるということになるわけです。また、この逆もあって、景気が
悪くなると多くの人が思えば、長期金利は下がることになるので
す。景気は人々の気分で変化します。
このように経済はそこそこ悪くないのに、岸田内閣の支持率は
落ち込んだままです。これまでの世論調査において、内閣支持率
が30%を下回った調査は次の6つです。一体どこに問題がある
のでしょうか。
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◎内閣支持率が30%を下回った世論調査
支持する 支持しない
時事通信 26・3% 40・4%
朝日新聞 29・0% 60・0%
毎日新聞 25・0% 68・0%
ANN 26・9% 51・8%
共同通信 28・3% 56・7%
JNN 29・1% 68・4%
──2023年11月06日/夕刊フジ
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なかでも重要なのは、自民党支持層における岸田内閣への支持
率です。これは、2021年9月の菅義偉内閣の退陣表明時の支
持率49・5%に次ぐ低さです。
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支持率
自民党支持層 52・9%
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この岸田内閣の低支持率について、政治評論家の有馬晴海氏は
次のように指摘しています。
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防衛増税はじめ増税が既定路線であるにもかかわらず、減税を
打ち出したことに、有権者は「選挙目当て」「首相は自分の立場
を維持しようとしているだけ」と感じているのだろう。来年は増
税論議も控えて状況がさらに厳しくなる中、被害が少ない年内解
散を唱える声もあるが、岸田首相は決断できず、来年9月の総裁
選をスルーして衆参ダブル選という選択肢をとるのではないか。
支持率回復には一時的なバラマキ策ではなく、憲法改正や、北朝
鮮問題など、大きな課題に取り組む姿勢も必要かもしれない。
──2023年11月06日/夕刊フジ
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岸田文雄という政治家は、何回も申しているようにもともと増
税イメージの強い人です。岸田氏が首相就任時に記者団から「財
務省のポチ」といわれているが・・」と聞かれたことがあるくら
い財務省寄りといわれています。
そういう人が首相になって、いきなり打ち上げたのが防衛増税
であり、増税のイメージが一層濃くなったといえます。それが一
転して「4万円の定額減税/非住民税世帯7万円給付」です。選
挙目当てとしかいいようがなくなっています。
──[物価と中央銀行の役割/052]
≪画像および関連情報≫
●定額減税、効果限定的=ばらまき批判も不可避―─
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政府が閣議決定した総合経済対策は、1人当たり計4万円
の定額減税と低所得者層向けの7万円の追加支給が目玉だ。
必要な財源は計5兆円規模に上るが、公平性を担保した複雑
な制度設計が求められるほか、経済効果は限定的との見方も
ある。対象が幅広い減税や追加給付には、ばらまきとの批判
も避けられそうにない。
政府は「成長の成果を国民に適切に『還元』する」として
来年6月に所得税を3万円、個人住民税を1万円をそれぞれ
減税。住民税非課税世帯には、7万円を追加で給付する方針
だ。一連の還元策について、第一生命経済研究所の星野卓也
主任エコノミストは「年に1兆円程度消費を押し上げるとみ
られるが、(景気を押し上げる)効果は限定的だ」と分析す
る。減税と給付を組み合わせることで、制度設計は複雑さを
増す。政府は「両方の支援の間にある者に対しても丁寧に対
応する」と強調するが、自民党の税制調査会幹部の間では、
「本来ならば給付でやるのが筋だ」との意見が多い。
住民税のみを納税しているため所得税の減税や給付金の対
象にならなかったり、所得税を納めていても所得水準がそれ
ほど高くなく、今回の減税の恩恵を十分に受けられなかった
りする「隙間」には、約900万人がいると想定される。住
民税のみ課税されている世帯にも給付などで支援するが、制
度が複雑になれば、企業や自治体の対応もより煩雑なものに
なり、狙った効果を発揮するまで時間がかかる恐れもある。
https://sp.m.jiji.com/article/show/3089486
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好調な米経済指標