2023年11月06日

●「なぜ、給付一本に絞れなかったか」(第6040号)

 岸田減税──もし、物価対策を素早くやるつもりであったなら
ば「国民1人当たり4万円」「住民税が非課税世帯に1世帯当た
り7万円」を定額で給付するべきであったといえます。この案で
あれば、年内に給付を完了できるからです。そうすれば、金額に
不満はあるとしても、電気・ガソリンなどの補助金と合わせて、
立派な物価対策として機能したはずです。
 そもそも「増税メガネ」といわれて思考停止に陥っていた岸田
首相に、減税のアイデアをアドバイスしたのは、木原誠二幹事長
代理ではないかといわれています。木原氏は、10月10日のあ
るインターネット番組で、「政府が10月中にもまとめる経済対
策で減税や給付措置が選択肢になる」といっているのです。
 岸田首相は、木原誠二氏のいうことなら何でも聞くといわれて
います。だから、官房副長官に起用したのですが、文春砲で妻が
奇怪事件の関係者として大きく報道され、身近の側近としては起
用できなくなったのです。しかし、今も頻繁に岸田首相に会って
いることはわかっています。
 減税の話は、岸田政権でも政権の情報通として知られる田崎史
郎氏が、10月23日朝、読売テレビ系「ウェークアップ」に出
演して、次のように話しています。
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 検討中の経済対策について、年収が一定額を超えたパート労働
者らに社会保険料負担が発生して手取りが減る「年収の壁」の解
消策や、賃上げした中堅企業の法人税を軽減する「賃上げ税制」
に加えて、「3番目が一番注目されるが、減税をやろうという話
がある」と切り出した。
 減税は「首相周辺から聞いた話」といい、田崎氏は「やろうと
したら財務省がめちゃ抵抗するはず。やれるかどうか分からない
が、やるというのを10月下旬に表明して、その前に旧統一教会
の解散命令を出して、減税を打ち出して、解散総選挙という声も
聞こえてくる。          ──SAKISIRUより
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 今回の減税について、自民党の幹部のなかにも反対者が多いの
は、このような事情があるからです。「相談がなかった」として
不満を感じているのです。
 日本は、1990年台からバブルが崩壊してデフレに陥り、約
30年間経済が成長していない国です。賃金がまったく伸びてい
いないのです。ところが、コロナ禍の終わり頃にインフレになり
物価が上昇し、目標の2%を連続して超える状況がこのところ続
いています。したがって、日本は、政府が経済の舵取りをうまく
やれば、経済成長を取り戻せるかもしれない状況にあります。今
回のEJのテーマの狙いは、そこににあります。
 経済の成長を決める指標に「潜在経済成長率」というのがあり
ます。少しわかりにくい指標ですが、GDP(国内総生産)とい
う指標が、個人消費や企業の設備投資などの「需要サイド」から
見た場合の増減率であるのに対し、潜在成長率は次の3つの生産
性の要素の「供給サイド」から見た増減率のことをいいます。
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            @資 本
            A労働力
            B生産性
─────────────────────────────
 添付ファイルのグラフをご覧ください。これは、主要先進国の
潜在成長率の推移を示したものです。日本は、1980年代には
3〜4%台だったのですが、90年代初めのバブルの崩壊で下が
り、2009年以降の平均は、0・6%にとどまっています。
 生産年齢人口の減少による労働投入の低下や、設備投資などの
資本投入の縮小が主な原因です。いわゆる岸田首相のいう「コス
トカット型経済」になってしまっているのです。潜在経済成長率
は、平均で先進国順位では次のようになっています。
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       ◎潜在成長率推移
         米国 ・・・・ 1・7%
        ドイツ ・・・・ 1・2%
       フランス ・・・・ 1・1%
         日本 ・・・・ 0・6%
─────────────────────────────
 これに関連して「GDPギャップ」もしくは「需給ギャップ」
と呼ばれるものがあります。
─────────────────────────────
     ◎「総需要」−「総供給」=儒給ギャップ
       プラスの場合 ・・ インフレギャップ
      マイナスの場合 ・・  デフレギャップ
─────────────────────────────
 経済・物価情勢を的確に判断していくうえでは、経済の活動水
準を表し、物価変動圧力の目安となる「需給ギャップ」や、長い
目でみた日本経済の成長力を映し出す「潜在成長率」をチェック
していくことが有益であるといえます。しかし、これらは、客観
的なデータとして観察できるものではないため、何らかの方法で
推計する必要があります。
 日銀は10月4日、日本経済の需要と供給力の差を示す「儒給
ギャップ」が、2023年4〜6月期にマイナス0・07%だっ
たと推計値を発表しています。マイナスは、13四半期連続です
が、マイナス幅が1〜3月期よりも縮小しています。内閣府が公
表した別の推計ではプラスであり、このことから需要不足は解消
しつつあるといえます。
 いずれにせよ、現在日本経済は、デフレからの脱却期にあるこ
とは確かです。まさにそういう意味で「経済、経済、経済」とい
えます。しかし、岸田内閣は、本当のところはわかっているので
しょうか。円安など課題が山積しています。
           ──[物価と中央銀行の役割/050]

≪画像および関連情報≫
 ●コラム:デフレ脱出の日本と突入危機の中国、マネーは
  日本株に/田巻一彦氏
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  [東京 7日/ロイター]─デフレ脱却の確度が高まりつつ
  ある日本とデフレ突入の瀬戸際にある中国をめぐり、一部の
  海外勢が中国株売り・日本株買いの動きをみせている。脱デ
  フレは日銀の超緩和金融政策からの脱却をイメージさせやす
  いが、日銀の政策修正は「スロー」との見通しが海外勢に多
  く、日本株買いの大きな障害にはならないとの声が広がって
  いる。
  <前週の海外勢、日本株を5319億円買い越し>
   足元で海外勢の日本株買いが増加している。財務省が7日
  に発表した対外対内証券契約等の状況によると、8月27日
  から9月2日の1週間に海外勢は5319億円の日本株を買
  い越した。その前の2週間で計1兆3440億円を売り越し
  ていただけに一部の市場関係者からは「やはり海外勢は方針
  を転換した」(国内証券)との声が出ていた。
   背景には、2つの大きな要因があるようだ。1つは日本の
  脱デフレの動きが鮮明になってきたことだ。内閣府が1日に
  公表した2023年4─6月期国内総生産(GDP)のGD
  Pギャップ推計値はプラス0.4%だった。プラスになった
  のは15四半期ぶりで、このデータに注目したのは国内勢で
  はなく海外勢だった。発表をきっかけにマクロデータに注目
  する一部の海外勢のマインドが大きく変化したという。
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潜在成長率の推移.jpg
潜在成長率の推移


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物価と中央銀行の役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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