2007年08月03日

●なぜ、公共投資を押さえ込むのか(EJ第2136号)

 もし、リチャード・クー氏の理論が正しいとした場合、世界経
済を牽引する日米独の3大経済大国が現在揃って「陰」の局面に
ある−−このとき効く経済政策は「財政政策」のみであるという
ことになります。
 しかし、この財政政策は現在非常に使いにくくなっている−−
このことはここまで何回も述べていることです。7月29日に投
開票が行われた参院選で民主党が勝利すると、すぐさま新聞には
『バラマキ復権の気配も』というタイトルで次の記事が掲載され
たのもその一環です。
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 地方への配慮が公共事業や中小企業政策の見直しに及ぶ可能性
 もある。国の公共事業費は、98年度の14兆9千億円(補正
 後)をピークに減少傾向が続き、07年度は当初予算で8兆9
 千億円まで落ち込んだ。  2007.7.31付、朝日新聞
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 このように「公共事業費=バラマキ」ととらえるほど公共事業
削減路線は正当化され、「公共事業=悪い政策」となってしまっ
ています。それが、地方重視の民主党が参院選で勝利したので、
再びバラマキが復権するのではないかという論調です。
 しかし、なぜ公共事業を削減するのでしょうか。それは832
兆円に及ぶ国の借金(政府長期債務)があるからであり、それを
少しでも減らすためのはずです。それならば、公共事業をひたす
ら削減し、国民に痛みを押し付けてそれを目指した小泉政権と安
倍政権はその目標を少しでも達成できたのでしょうか。
 政府長期債務は減るどころか増えています。小泉政権になって
からの2002年の421兆円、2004年の499兆円、安倍
政権になってからの2006年の832兆円というようにです。
 それでは、小泉政権から現安倍政権の間、税収はどうなったで
しょうか。2OOO年から2006年までの税収の推移は次のよ
うになっています。
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  2000年・・503兆円 ≪税収の推移≫
  2001年・・493兆円 2004年・・498兆円
  2002年・・489兆円 2005年・・503兆円
  2003年・・493兆円 2006年・・506兆円
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 ここで、添付ファイルを先に見ていただきたいのです。これは
不良債権の新規増加率と名目GDP成長率の推移です。
 まず、名目GDP成長率の線(点線)に注目してください。こ
の線は右目盛であり、0よりも上がマイナス、下がプラスです。
いわゆる橋本失政によって、1998年に名目GDP成長率はマ
イナス1.3%になっていますが、これが小渕政権に代わると、
小渕首相の積極財政によって2000年に名目GDP成長率はプ
ラス1.2%に回復します。財政出動の重要さが、これによって
はっきりと読み取れるはずです。
 しかし、森政権を経て2OO1年に小泉政権がはじまると、緊
縮財政をとったため、名目GDP成長率は再びマイナス2.1%
となり、2004年になるまでプラスにならなかったのです。さ
らに税収は2001年から500兆円を割り、2005年になっ
てやっと500兆円に戻るという有様です。
 そして、極め付きは不良債権処理です。小泉政権は銀行の不良
債権処理をやったということを政権の看板にしていますが、実際
はどうなのでしょうか。
 グラフの中の実線は、新規不良債権増加率をあらわし、左目盛
です。新規の不良債権が増えたのはやはり橋本政権の末期の19
98年ですが、小渕政権になってからは減少し、2000年には
9%まで減っています。しかし、2001年以降の小泉政権から
は逆に増加しています。
 小渕政権は低支持率でスタートし、良い仕事をしているのにそ
の後も人気が上らず、高く評価されないで、最後は首相が病に倒
れるという不幸な終わり方をしたのですが、今考えると、日本経
済にとって、国民によって一番あたたかい配慮をした政権だった
と思うのです。しかし、小渕首相はいわゆるケインズ政策をとっ
たために現在でも評価されないで終わっています。
 それに対して、小泉政権は日本経済にとっても、国民にとって
も最悪の政策をとったと思えるのですが、なぜか比較的高い評価
が与えられているのは問題があると思うのです。
 橋本、小渕、小泉3政権の政策の成果がよくわかる例をひとつ
紹介します。あまり新聞や雑誌に取り上げないのですが、「1人
当たり名目GDPの国際順位」というものがあります。
 1994年度には日本は1位だったのですが、橋本財政改革の
失敗で7位に転落−−しかし、その後の小渕政権の積極財政で2
位に戻しています。それを2001年からの小泉内閣の構造改革
の失敗で2005年度には14位に急落してします。これによっ
て日本の国際的評価も急落してしまっています。安倍政権も小泉
政権の政策を引き継いでおり,そういうことが今回の参院選にお
いて安倍自民党の大敗北につながったと考えます。
 『増税が日本を破壊する』(ダイヤモンド社)の著者、菊池英
博氏は、日本の政府長期債務の832兆円は、あくまで借り入れ
総額であり、粗債務であるが、政府の保有する金融資産530兆
円を差し引いた純債務で見るべきであるといっています。
 菊池氏は、純債務で見れば日本は302兆円であって、何ら危
機的状況ではないというのです。とりわけ日本のように金融資産
がGDPを上回る国は粗債務だけでは財政事情を正確に判断でき
ず、純債務で判断すべきであるとしています。ちなみに他の主要
国では、金融資産はGDPの10%から15%程度なのです。
 要するに借金の大きさで危機感を煽り、増税による財政再建を
正当化しようと画策しているのです。もっと経済のことをわれわ
れは研究し、事態を正確に把握する必要があります。長い間のご
愛読を感謝します。 −−[日本経済回復の謎/46・最終回]


≪画像および関連情報≫
 ・菊池英博教授のコメント(添付ファイル)
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  「不良債権はデフレの結果である」ことは、経済成長と不良
  債権の発生状況を調べるとよくわかる。名目国内総生産(名
  目GDP)の伸び率の低下と、不良債権の発生率とは相関関
  係にある。つまり、名目GDPの成長率が低下すると、不良
  債権の発生率が高くなり、名目GDPの成長率が成長率が増
  加すると、不良債権の発生率は低下するのである。
  −−菊池英博著、『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』
                     ダイヤモンド社刊
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

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posted by 平野 浩 at 04:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本経済回復の謎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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