日まで、長期金利が、1日に「0・1%」以上変動する日は7割
を超えています。これは、3月の米地銀の破綻が相次いだ以来の
荒い値動きになっています。
ウクライナ戦争に加えて、中東でも戦争が起きる一歩手前にあ
り、情勢が読み難くなっています。そこで今日は金曜日でもある
ので、国内の問題を取り上げることにします。
日本の政治の世界では不思議なことが起きています。岸田首相
が「減税」を口にしているからです。何度も述べているように、
岸田首相の辞書には「減税」ということばはないはずです。
ネットでは、岸田首相のことを「増税メガネ」と呼んでいます
が、「なぜ、増税メガネ」なのでしょうか。これについて、国民
民主党代表の玉木雄一郎氏は、次のようにいっています。
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私はやっぱり、総理がもう少し、喜怒哀楽を出されたほうがい
いんじゃないか。この前もパネル作ってやってましたけど、何か
学校の先生がやってるみたいで、多くの人が黒板を見て指差しさ
れると嫌な感じばっかり印象に残っている。メガネかけた学校の
先生に難しい授業を教わっている感じになって、伝わるべきもの
は伝わってないんじゃないかな。
──玉木雄一郎国民民主党代表
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それにしてもなぜメガネなのでしょうか。それは、2015年
の第28回目になる「日本メガネベストドレッサー賞」の政治部
門の賞を外務大臣のときに受賞しているからです。
確かに岸田首相は、上品で、メガネも似合うし、スーツをきち
んと着こなして、外務大臣としての風格はあります。外務大臣を
長くやっているところから、語学力も達者です。しかし、岸田内
閣の最新の支持率は、今月の14日から15日に実施された朝日
新社の調査によると29%、不支持率は60%です。
時事通信の10月調査によると、岸田内閣の年代別支持率は若
者の支持率が非常に低いのです。
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◎岸田内閣の年代別支持率
18〜29歳 ・・ 10・3%
30歳代 ・・ 18・1%
40歳代 ・・ 25・1%
50歳代 ・・ 24・0%
60歳代 ・・ 32・4%
70歳以上 ・・ 36・0%
──時事通信の10月調査
2023年10月18日発行「夕刊フジ」
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内閣の支持率は年齢にほぼ比例するといわれます。そうすると
29%という支持率は70歳以上に位置づけられます。「70歳
以上」と「18〜29歳」は「25・7%」の開きがあります。
数字は出していませんが、男女別では「男性/29・9%」「女
性/22・5%」となっています。
つまり、岸田内閣は、高齢者/男性の支持が高く、若者/女性
の支持が低いのが特徴なのです。若者の支持が高かった安倍内閣
と大きな違いがあります。これについて、井田正道明治大学教授
(計量経済学)は次のように述べています。
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安倍内閣はキャッチフレーズがうまく、何か新しいことをやっ
ているイメージがありました。若者の雇用も改善した。菅内閣に
は携帯電話の料金を大幅に下げるという実績があった。だから、
若者の支持が高かったのでしょう。ところが岸田内閣からは何を
やりたいのか、ビジョンやメッセージが見えてこない。若者は、
そこにモノ足りなさを感じているのだと思います。
──井田正道明治大学教授
2023年10月18日発行「夕刊フジ」
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10月17日のことです。自公両党は、岸田首相に経済対策の
提言を提出しています。しかし、このなかには、所得税減税の明
記は見送られています。これは、岸田首相が「減税の話は自分が
直接話す」といったからです。減税の話をする前に、先にアドバ
ルーンが上がってしまうと、自分が話すときのインパクトという
か、効果が小さくなると考えているのだと思います。
すべてにおいて話が小さいのです。岸田内閣は、当初は「賃上
げ税制」など、国民に直接給付するのではなく、ガソリンの補助
金のように企業を通して給付しようとします。ガソリンに関して
は「トリガー条項」があるにもかかわらずです。お蔭で補助金を
託された石油会社は大儲けです。国民に直接給付するより、企業
を通して渡した方が、企業も政府に協力してくれるという発想で
しょうか。
もし岸田内閣が所得税を減税をするとなると、どのくらいの規
模になるでしょうか。2020年に一律10万円配った特別定額
給付金の予算規模は、12兆8800億円ですが、今回はそんな
余裕があるわけはなく、せいぜい2兆〜3兆円の規模にとどまる
ことになると思います。
しかも、これだけでは、課税最低限以下の低所得層には恩恵が
及ばないので、給付金が必要です。これら非課税世帯への給付金
とワンセットにすると、減税の規模は大きく縮小され、物価高対
策にはならないでしょう。岸田内閣は、何かそういうケチくさい
ところがあります。
国民が真に望んでいるのは、やはり時限付き消費税減税です。
これについては、「法律改正に時間がかかる」「買い控えが起き
る」「一度下げると元に戻すのが困難」と、財務省(ザイム真理
教)は、できない理由ばかり並べて反対します。
──[物価と中央銀行の役割/041]
≪画像および関連情報≫
●日本人の生活が苦しいホントの理由、なぜ「減税」は当てに
ならないのか?
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私たち日本人は、仕事を持っている人の場合、所得税や地
方税といった税金に加え、年金や医療など社会保障の保険料
を納める必要がある。近年、こうした国民負担の重さについ
て強く認識する人が増えている。ネットでは「日本のような
重税国家では窒息してしまう」といった意見をたくさん目に
するが、諸外国と比較すると日本の国民負担率はそれほど高
くない。
このように書くと、瞬間湯沸かし器のように怒り出す人が
いるが、筆者は「負担率が低いので大したことはない」と主
張したいのではない。むしろ筆者の見立てはもっと深刻であ
る。諸外国と比較して負担率が低く推移しているにもかかわ
らず、国民の負担感は諸外国より大きいのが現実であり、日
本が置かれた状況はさらに厳しいと主張したいのだ。以下で
はなぜそうなっているのか、どうすれば解決できるのかつい
て考察していく。
メディアでは「国民負担率」という言葉をよく目にするが
実は国民負担率というのは日本独特の概念であり、諸外国に
は存在しない。財務省が国民負担率の国際比較結果を公表し
ているが、これは日本だけで通用する資料である。
諸外国においては、所得税や地方税などの税金は一方的に
徴収されるものなので「負担」とみなされるが、年金や医療
については保険料を払っている本人が直接的な受益者であり
負担とは位置付けられていない。だが、ここでは税と社会保
障の支出を国民負担とする日本式の概念で議論を進めていく
ことにする。 ──経済評論家 加谷珪一氏
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メガネが似合う岸田首相