なければならなくなりました。原因は、いうまでもなく10月7
日に発生したイスラエルとイスラム組織ハマスとの激突です。
2023年10月16日付、日本経済新聞は、3面に次の記事
を掲載しています。なお、この原稿は16日に書いているので、
2日間で中東情勢がどう動くかについては予想できていません。
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◎米金利乱高下・中東緊迫、揺れる市場/中東緊迫/混迷深まる
FRB追加利上げ見方割れる
米長期金利の乱高下で世界の金融市場が揺れている。米連邦準
備理事会(FRB)による追加利上げを巡る見方はなお割れる。
イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突に伴う中東情勢の影響も
読み切れず、市場は原油高の再燃などに身構える。
──2023年10月16日付、日本経済新聞
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一般的な常識として、中東で何かが起きれば原油価格が上昇し
経済に影響を与えることは必至です。しかし、こんなことが起こ
ろうとは、だれも予想していなかったはず。大きな情勢変化であ
るといえます。
このところEJは米長期金利の動きに注目しています。10月
上旬の米長期金利は、9月中旬の4・3%から4・88%まで上
昇し、5%を窺う勢いだったのです。このままでは、FRBは、
さらなる利上げが必要となり、インフレを軟着陸させることは困
難になります。
ところが、9月の米雇用統計の数字がかなり良かったことによ
り、米長期金利は4・6%台に下がったのです。FRB高官の発
言も原因になっています。この数字は、過去50年で最低のレベ
ルです。日経平均株価はこれを好感して3日間で1500円近く
上昇していますが、今回のハマスによるイスラエル襲撃後の12
日、米国の消費者物価指数(CPI)は、市場の予想を大きく上
回ったのです。これによって、長期金利は4・7%へ上昇に転じ
潮目が変わったように見えます。
問題は、このイスラエルとハマスの戦闘が原油高に火をつける
かどうかでです。これについてイスラエルのネタニアフ首相は、
「ガザに軍事侵攻し、制圧し、ハマスを根絶やしにする」といっ
ています。イスラエルは、ハマスによって突然攻撃され、大勢の
人が亡くなっています。したがって、イスラエルとしては、ハマ
スに対して、手緩い対応ができないのです。
イスラエル軍は、形式上はガザ地区の住民に対し、「南に逃げ
ろ」と呼び掛けていますが、その一方でガザ地区のライフライン
を絶ったうえで、空爆をしており、実際に南に逃げられる人ごく
小数であると思われます。「できないことをやれ」といっている
のに等しいのです。
ここで大事なことは、「パレスチナ=ハマス」ではないという
ことです。この関係について、明確にしておく必要があります。
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ハマスとは、パレスチナ・ガザ地区を実効支配する武装組織。
イスラエルの破壊と、その後のイスラム国家の樹立を、目標に掲
げている。2007年にガザ地区を掌握して以来、イスラエルと
何度か交戦してきた。戦争と戦争の合間にも、イスラエルに向け
てロケット弾を何千発も発射するほか、他の武装勢力にも発射さ
せてきた。別の攻撃方法でもイスラエル人らを殺害してきた。一
方のイスラエルも、繰り返しハマスを空爆。2007年からは治
安対策を理由に、ガザ地区をエジプトと共同で封鎖している。
https://onl.bz/ErS33qu
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もし、イスラエル軍によるガザ地区への軍事侵攻が行われ、そ
こで大勢のパレスチナ人が亡くなると、ヒズボラがハマスを支援
する可能性が高いといわれます。
ヒズボラとは、1982年に結成されたレバノンのシーア派イ
スラム主義の政治組織であり、ハマスを上回る武装組織です。イ
ランとシリアの政治支援を受け、その軍事部門はアラブ・イスラ
ム世界の大半で抵抗運動の組織とみなされています。ヒズボラの
バックにはもイランが控えています。
この原稿を書いている時点では、まだ地上戦ははじまっていま
せんが、欧州金融大手UBSは、事態の推移によって、次の3つ
のシナリオを立てています。
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◎欧州金融大手UBSによる3つのシナリオ
@イスラエルとハマスの敵対行動の速やかな停止が、人道的に
最善で、市場の緊張も和らぐ。
A長期化しても、対立がイスラエルとハマスの地域に限定され
るなら市場への影響は薄れる。
Bイランが関与し、米国がイラン制裁を強化する事態になると
原油価格に重大な影響が出る。
──2023年10月16日付、日本経済新聞
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ドルと原油は逆相関の関係にある──原油が上がるときは、ド
ルが下がったのです。この関係は、資源輸入国にとっては、自国
通貨建ての原油価格を安定化させる方向に働いてきています。し
かし、この経験則がコロナ禍とウクライナ戦争を機に、効かなく
なってしまっています。つまり、供給面から原油高を招きやすい
構図が出来上がってきているといえます。
もし、「ドルと原油の同時高」ということになると、日本や欧
州のような資源輸入国は一層苦しくなります。そして何よりも、
原油高によるインフレの懸念が浮上すれば、FRBの引き締めの
長期化は必至です。さらに西側陣営にとって何よりも困ることは
原油高がロシアを利することであり、それを中国がどのように見
るかという点にあります。
──[物価と中央銀行の役割/040]
≪画像および関連情報≫
●イスラエルとハマス衝突、ロシアは双方に停戦要求
──ウクライナ支援への関心低下狙いか
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イスラム主義組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に対し
ロシアが双方に停戦を求めた一方で、ウクライナはイスラエ
ル支持を明確に打ち出し、対照的な反応を示した。ロシア側
がウクライナ侵略への関心を低下させるため、情報戦に乗り
出したとの見方もある。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は7日、事態の深
刻化に懸念を示した上で「75年にわたる紛争は武力ではな
く、政治・外交的な手段でのみ解決できる」とし、双方に即
時停戦を求めた。ロシアは中東情勢で中立的な立場を維持し
てきた。ハマスを支持するイランとは友好関係にあり、イス
ラエルとも関係を維持するためだ。イスラエル側も米欧主導
の対露制裁やウクライナへの軍事支援からは距離を置く。
米政策研究機関「戦争研究所」は7日、ロシアは中東の軍
事衝突を「西側諸国のウクライナへの支援や関心をそぐため
の情報戦に利用する」と分析した。実際、メドベージェフ前
大統領はSNSに「(中東情勢こそ)米国やその同盟国が取
り組むべきだ」と投稿した。
一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領
はSNSでハマスの攻撃を「テロ」とし、「イスラエルが自
衛権があるのは議論の余地がない」と投稿した。米欧各国と
同様、イスラエルを支持する姿勢を示している。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20231008-OYT1T50138/
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米長期金利の振れ幅の大きさが市場を揺らす