説明を繰り返していますが、これは必ずしも正しい表現とはいえ
ないのです。
米国の中央銀行制度は、FRSと呼ばれますが、FRBはその
中心機関になのです。FRSは、「連邦準備制度」といい、次の
英語の頭文字をとったものです。
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◎FRS連邦準備制度
Federal Reserve System
なお、「Federal」の「Fed」(フェッド)と呼ぶこともある
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したがって、米国の中央銀行(制度)というと、「FRS」を
指しますが、その中心機関がFRB(連邦準備理事会)であるの
で、FRBを中央銀行といっているのです。
なお、FRBは、FRSの最高意思決定機関ですが、金融政策
を実施するほか、全米12地区の地区連銀──連邦準備銀行を総
括しています。
そして、このFRBのメンバーと、地区連銀総裁が年8回集ま
って行われるFOMC(連邦公開市場委員会)がありますが、こ
れは、日銀の「金融政策決定会合」と同じです。
制度の違い以外にも日銀とFRBには、その目的に違いがあり
ます。日銀もFRBも、金融政策、すなわち金利の上下を通じて
景気をコントロールする役割そのものは同じですが、掲げている
目標は微妙に異なります。
日銀は、「物価の安定」と「インフレ目標2%達成と維持」が
目標ですが、FRBの場合は、それらに加えて「雇用の最大化」
つまり失業率を下げるという役割も担っています。
しかし、「物価」と「雇用」は密接に関係しています。失業率
が高いとします。この場合、中央銀行は金融緩和をしておカネの
流れをよくして景気を回復させようとします。この政策がうまく
いって、景気が回復し、失業率が低下したとします。すると企業
は、労働者を確保するために賃金を上げます。すると今度は企業
がコスト増加に見合った利益を確保するため、販売価格を引き上
げ、物価が上がります。このように、雇用と物価と賃金はそれぞ
れ表裏一体の関係にあるのです。
10月8日付の日本経済新聞に「米長期金利迫る5%」の見出
しとともに、次の報道が掲載されています。
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6日の米債券市場で長期金利の指標となる10年物国債利回り
は、一時、前日比0・16%上昇(債券価格は下落)の4・88
%と、2007年8月以来16年ぶりの高水準に上昇した。直近
2カ月の上昇幅は0・8%に達し、5%が視野に入ってきた。
金利を押し上げたのは同日、米労働省が公表した9月の雇用統
計だ。非農業部門の就業者数は、前月比33万6000人増えて
17万人程度だった市場予想を大きく上回った。人手不足感の強
かった娯楽・接客業が、約10万人増え、全体の増加につながっ
た。 ──2023年10月8日付、日本経済新聞
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この記事のなかに「金利を押し上げたのは同日、米労働省が公
表した9月の雇用統計だ」という部分があります。この米国雇用
統計に注目してみます。
米国雇用統計のなかで、とくに注目すべきは、「非農業部門雇
用者数」や「失業率」です。「非農業部門雇用者数」は、農業関
連以外の産業で働く人の数や増減をまとめたデータです。「失業
率」は、米国内の失業者数を労働力人口(失業者数と就業者数の
合計)で割った数値です。
原則、毎月第1金曜日に、前月分の統計が発表されるので月次
データとしての速報性があります。厳密には毎月12日を含む1
週間を対象とし、約16万の企業や政府機関の中から約40万件
のサンプルを調査・集計し発表します。
発表時間は米国時間の朝8時半です。日本時間では、米国夏時
間(サマータイム。3月第2日曜日から11月第1日曜日)の場
合は夜21時半、それ以外の時期(冬時間)は夜22時半です。
この米国雇用統計のデータがメディアに流れる前後に為替や株
が大きく動くことが多く、世界中の投資家にとって重要なイベン
トになっています。動画などのライブ放送をしているメディアも
あるほど、注目されているのです。
この米国雇用統計は、単にトレンドを見るのでなく、市場予想
との対比で見ることが主流です。経済調査機関が出した経済予想
の平均値を「市場予想(コンセンサス)」といいます。米国雇用
統計を見る場合、非農業部門雇用者数や失業率が、市場予想に対
して「ポジティブ・サプライズ(いい数字)」だったか、「ネガ
ティブ・サプライズ(悪い数字)」だったかによって、金融市場
に与える影響が異なってきます。
ちなみに、非農業部門雇用者数は前月比の増減で表し、「前月
比○万人増」というように発表されます。失業率は失業者数を労
働力人口で割った比率で表し、「失業率○%」というように発表
されます。この結果において、次の判断ができます。
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◎米国雇用統計の結果がよいとき
──ドルが買われやすい
◎米国雇用統計の結果が悪いとき
──ドルが売られやすい
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数次の利上げにもかかわらず、米国の労働市場は依然として堅
調で、FRB関係者によれば「バランスを崩している」。急激な
利上げにもかかわらず、労働力の需要が供給を上回っているので
です。なぜでしょうか。このあたりの関係について、来週のEJ
で分析していきたいと考えています。
──[物価と中央銀行の役割/037]
≪画像および関連情報≫
●長期金利が上昇 → 金利がわかれば経済がわかる
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「長期金利6年ぶりに一時0・2%台に上昇」「住宅ロー
ン固定金利、6年ぶり高水準」、「米FRB/3月に利上げ
へ」。最近の朝日新聞に載っていた記事の見出しです。どれ
も金利が久しぶりに上がっているという内容です。金利が上
がることの何がニュースなのか、と思う人もいるかもしれま
せんが、金利は「経済の体温計」です。金利の動きを理解す
れば、今の世界経済がわかります。ひょっとすると、今の金
利上昇は世界経済の転換点を示しているのかもしれません。
まず、金利とは何かというそもそも論から始めます。金利
は貸し借りするお金に対する利子の割合のことです。では、
利子とは何かということです。お金を借りる人が貸す人に払
うお礼と考えればわかりやすいと思います。モノを借りると
きも貸してくれる人にお礼をするのが一般的ですが、お金も
同じです。わたしたちが銀行にお金を預けると利子がつきま
すが、それはわたしたちが銀行にお金を貸すので、銀行はわ
たしたちにお礼をしているのです。国が発行する国債にも利
子がついています。国債を買う人は国にお金を貸すというこ
とですから、借りる側の国が買う人にお礼をしています。お
金を借りたい人が世の中にたくさんいて、お金を貸す人が少
ないと、たくさんのお礼をしないと貸してくれません。この
状態は景気のいいときですので、景気のいいときは一般的に
利子の割合、つまり金利が高くなっていくといえます。逆に
お金を借りたい人が少なくて、お金を貸したい人が多いと、
お礼は少なくてすみます。これは不景気のときですから、一
般的に金利は低くなっていきます。
https://www.asahi.com/edua/article/14543422
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米長期金利は一時4・88%まで上昇