平均株価は3万1075円36銭です。9月14日から10月5
日までの15日間の騰落数は次の通りです。○印は前日より上昇
/●印は前日より下落を表しています。
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14日 〜 5日
○○●●●●○●○●●●●●○
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下落の原因は何でしょうか。何よりも米国のインフレが収まっ
ていないことが原因としてあります。米国の長期金利の高止まり
を受けて、米景気の下押しリスクへの警戒感が強まったので、米
連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの懸念
もあって、日本株はほぼ全面安の展開になったのです。一般的に
金利上昇の局面には、次の2つのパターンがあります。
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@好景気に伴う企業の資金需要を見込んで上がる
A財政悪化など国債の信用リスクの悪化で上がる
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今回の金利上昇は明らかにAであるといえます。米政府は政府
封鎖こそ何とか回避したものの、10月3日には米連邦議会下院
が野党・共和党トップがのマッカーシー議長の解任動議を可決し
ています。そのため、米政府の利払い負担が急増するなか、財政
運営が混乱するとの見方から債券売りが進んだのです。
これに伴い、米国では、長期金利が5%を超えるとの観測が強
まっています。金利が上昇すれば国債価格は下がり、米地銀など
が保有する国債の含み損がさらに脹らみ、銀行が融資を絞り込む
と、金融市場への負荷が高まる恐れがあります。
長期金利の上昇について10月6日付の日本経済新聞では、4
人の米著名投資家の見解を掲載しているので、その見解を以下に
ご紹介します。
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◎ラリー・フィンク/ブラックロックCEO
「長期金利は少なくとも5%かそれ以上になる」
◎ビル・アックスマン/バーシング・スクエア・キャピタル・
マネジメントCEO
「長期金利は近く5%に迫るとみている」
◎ビル・グロス/ビスコム共同創業者
「債券市場は国債供給の人質」
◎JPモルガン/ジェイミー・ダイモンCEO
「7%のような金利上昇への備えはできているだろうか。最
悪のケースは7%の高金利と(インフレと景気後退が共存す
る)スタグフレーションの併存だ」
──2023年10月6日付、日本経済新聞
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ここで考えてみるべきことがあります。「長期金利が上がる」
ということについてです。どのようなときに、長期金利は上昇す
るのでしょうか。金利には、その期間によって、次の2つがあり
ます。
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@長期金利
1年以上の金融資産の金利。代表例は10年物国債
A短期金利
1年未満の金融資産の金利。 代表例は政策金利
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一般的に「利上げする」というときは、中央銀行が金融政策と
して、短期金利(政策金利)を上げることをいいます。長期金利
は、需給バランスや短期金利の推移、物価の変動などさまざまな
要素で変動します。なかでも、関係が深いと考えられているのが
国内景気、国内物価、為替、海外金利などです。
長期金利が下落すると、株価は上昇するのが一般的です。なぜ
なら、金利が下がると、債券を購入するよりも株式を購入したほ
うが有利だと考えられるからです。逆に金利が上昇すると、債券
を買う投資家が増えるため株価は下がる傾向があります。とくに
米国債の長期金利は、世界中のさまざまな金融商品の指標にされ
ています。その利回りが上昇しつつあるのです。
加えて長期金利は住宅ローンの金利にも関係します。当然金利
が低いほうが総返済額を低く抑えられます。とくに固定金利の場
合、借りた時点での金利によって、総返済額が大きく変わってく
るのです。
問題は米国の長期金利の上昇はどこまで続くのでしょうか。上
昇した結果、どうなるのでしょうか。これについて、10月5日
付の日本経済新聞は、次のように報道しています。
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米長期金利の上昇はどこまで続くのか。「市場は金利の適正水
準を探りあぐねている」。米ゴールドマン・サックスのトレーダ
ーは9月末の顧客向けメモでこう指摘した。10月に入っても状
況は変わっていない。
「5%を超えても大きく上昇していく可能性はある」。大和証
券の谷栄一郎チーフストラテジストは、バイデン米政権の積極財
政に伴う国債の増発が今後も金利上昇を促していくとみる。もっ
とも、「5%という心理的節目に達すれば、マクロ系のヘッジフ
ァンドなどを中心に買い場とみる投資家も増えてくる」(東海東
京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト)と、一部の投資家
の買いが上昇トレンドを一服させるとの見方も根強い。
FRB高官による講演や6日発表の9月の米雇用統計など、週
内は年内の利上げ見通しを左右するイベントが相次ぐ。米長期金
利の動向が世界の金融市場を揺らす展開はしばらく続きそうだ。
──2023年10月5日付、日本経済新聞
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──[物価と中央銀行の役割/034]
≪画像および関連情報≫
●米国債メルトダウン:米国10年国債利回り5%に
強い違和感
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米国債の価格急落、利回りの急上昇が続いている。いわば
メルトダウン状態である。米国10年国債利回りは足元で、
4・8%まで上昇し、5%台が目前に迫っている。30年国
債利回りは既に4日に5%に達している。これは、2007
年以降で初めてである。米国での長期国債利回りの上昇は、
今春に生じた米銀の経営不安を再燃させかねない。
米国の長期国債利回りの上昇こそが、日本では円安進行を
促し、物価高を助長することで政府を苦しめている。またそ
れは、日本の長期国債利回りを上昇させ、7月のイールドカ
ーブ・コントロール(YCC)柔軟化後の日本銀行の利回り
コントロールを難しくさせている。さらに、米国の長期国債
利回りの上昇が米国の株価下落を促し、その影響で日本の株
式市場も逆風に見舞われている。
7月以降、米国の10年国債利回りは、ほぼ1直線に1%
ポイント程度上昇してきた。これとほぼ連動して生じている
のが、ドル高だ。7月に実施したYCCの運営柔軟化措置に
よって、日本の10年国債利回りには上昇余地が広がった。
これは米国の国債利回りが上昇する中でも、日米長期利回り
の拡大を一定程度抑え、円安リスクを軽減しているはずであ
る。しかしながら、米国の10年国債利回りの上昇があまり
にも急速であるため、YCCの運営柔軟化後に円安はさらに
進んでいる。 https://onl.bz/MeZMCPL
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9月のFOMC後に米金利上昇が加速