2023年10月03日

●「『インボイス』という名前の増税」(第6021号)

 国民のほとんどが何だかよくわからない内に、10月から「イ
ンボイス」が導入されています。メディアも政府に配慮してか、
導入直前でも報道のトーンを控えている感があったので、いまだ
に知らない人がたくさんいるはずです。どのような制度か、定義
を掲載しておきます。
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 インボイス制度とは、一定の項目が記載された適格請求書(イ
ンボイス)に基づいて、消費税の仕入税額控除額を計算し、証拠
書類を保存する消費税法上の制度である。
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 要するに、ごく簡単にいうと、これまで消費税を納めなくても
よかった人(年売上高1000万円未満)からも消費税を取り立
てることができる制度です。つまり、その人にとってはインボイ
スの導入は増税になるわけです。飲食店、雑貨店、フリーランス
の仕事をしている人にとっては増税となる可能性があります。
 10月1日といえば、4600品目以上の食品が値上がりし、
サービス価格の上昇についても予定されています。それに酒税の
改正で税額が上がる第三のビールなどがあります。どこも値上げ
ラッシュです。ちなみに、東京ディズニーランドの大人1日券は
繁忙期の最高額が1万9000円になるほか、日本郵便の「ゆう
パック」の運賃も上昇します。ところが岸田首相は、これから行
う経済対策について、次の趣旨のことを述べています。
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 コロナ禍で苦しかった3年間を乗り越えて、経済状況は改善し
つつある。しかし、国民はインフレによる物価高に苦しんでいる
ので、税収増を国民に還元する。長年続いてきたコストカット型
の経済から30年ぶりに歴史的転換を図り、人への投資や設備投
資などに取り組む。決して後戻りすることがないよう経済対策を
実行していきたいと考える。          ──岸田首相
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 なんと岸田首相は「減税」を口にしたのです。しかし、岸田首
相が掲げたのは、「賃上げ税制の減税制度の強化」、「国内投資
に対する減税制度の促進」、「ストップオフションの減税措置の
充実」などです。国民の期待する「消費税減税」や「社会保険料
の引き下げ」という言葉がどこにもないのです。そのため、「偽
減税」という声が多数上がっています。
 なかでも、青山繁晴自民党参議院議員は、「もっと庶民の負担
軽減に直結する政策を打ち出すべきである」として、次のように
岸田首相に直言しています。
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 岸田首相は増税に敏感になっているが、増税ばかりを考えてい
ると、国民に見透かされる。社保料引き上げも「ステルス的」と
受け止められている。増税・負担増の現実に気づかない国民はい
ない。それだけ、窮状は切実である。では、今、どういった施策
が必要なのか。
 武漢熱(新型コロナ)がようやく収束しつつあり、景気回復の
兆しがある。税収増はそのサインだ。賃上げと同時に、消費税の
減税などに踏み切れば、需要が喚起され、さらに税収も増える。
「新たな財源」は必要がなく、国民に還元される。消費減税はタ
ブーではない。もともと、消費税は柔軟に引き下げることができ
るのが特徴の税制である。   ──青山繁晴自民党参議院議員
              ──9月29日発行「夕刊フジ」
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 話をインボイスに戻します。「自分には関係がない」と考える
人も多いと思うので、「消費税は悪法である」とする消費税の権
威といわれる元静岡大学教授で弁理士の湖東京至氏との一問一答
をご紹介します。
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湖東:課税売上高が「1000万円以下」の人たちに影響が大き
 く出るということが問題なんです。建設業での1人親方、赤帽
 や個人タクシーの運転手、ウーバーイーツなどの宅配、映画や
 演劇の俳優、音楽家、英語の講師、外注の社員、農家、貸家、
 駐車場経営、太陽光販売、自販機業者など、今まで税金が免除
 されていた個人事業者が一番影響を受けます。とくに親会社が
 「消費税の課税事業者」だと困ることになる。
――:「インボイス」とは、一体何なのですか?これだけの個人
 事業主に影響が出るのですよね?
湖東:「インボイス」とは何だと聞かれると、「請求書」のこと
 です。日本の消費税法では、ただ、「請求書」と訳さずに「適
 格」という文字をつけて、「適格請求書」と言います。正規の
 「適格請求書」を総称して「インボイス」と言っています。そ
 の「インボイス制度」が、2023年10月1日から始まりま
 す。「インボイスの番号の登録」は2022年10月1日から
 始まっており、来年3月31日までに「インボイスの登録番号
 の登録」をすると決められています。
――:もう登録は始まっていたのですね。私は全然知りませんで
 した。
湖東:今現在、すでに登録をすませている人はいますが、まだ少
 数ですね。みんなこんなことを知りませんから、税務署は必死
 になって登録を勧めています。
――:先ほど「適格請求書」と「不適格請求書」があるといいま
 したが、同じ「請求書」なのに、何が違うのですか?
湖東:正規の請求書となる「適格請求書」と、「不適格請求書」
 の違いは「番号」です。登録申請書を税務署に提出し、審査を
 経て登録番号が通知されると、適格請求書発行事業者になりま
 す。この番号を付けた請求書が「適格請求書」で、番号なしの
 請求書を「不適格請求書」というようなります。この「番号を
 もらう」ということが大事なんです。
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           ──[物価と中央銀行の役割/031]

≪画像および関連情報≫
 ●これでマルわかり/「インボイス制度」「電子帳簿保存法」
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   請求書は手書き、もしくはパソコンで作成し、押印、封入
  して郵送する。請求書を受け取った側も、それを見ながら支
  払いを行い、請求書はファイルに保存する。
   どの事業者でもおこなっている日常的な業務だ。しかし、
  2023年10月以降、そのごく当たり前の業務は通用しな
  くなってしまう。「インボイス制度導入」と「電子帳簿保存
  法」の改正に対応しなければならないからだ。もちろん、中
  小の建設事業者とて例外ではない。
   インボイス制度がスタートすると、「請求書に記載すべき
  項目」が増える。しかも要件を満たした請求書を授受して保
  存しなければ、税額控除が受けられず、負担が増える場合も
  あるという。
   また、2024年1月からは、改正電子帳簿保存法の規定
  により、データで発行された請求書や領収書などは、紙のま
  までの保存は原則NGとなる。きちんと対応できていない事
  業者には罰則もあるのだ。
   制度に詳しい税理士の袖山喜久造氏は、「とくに一人親方
  などの職人に仕事を依頼している事業者にとっては他人事で
  はなく、早急な対応が必要」と指摘する。どんな点に注意し
  何から始めればよいのだろう
  https://www.sumitomokenki.co.jp/power/report/1269/
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青山繁晴参院議員.jpg
青山繁晴参院議員
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物価と中央銀行の役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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