2023年09月28日

● 「中国における5つの20%とは何か」(第6018号)

 中国の情報をお届けします。「中国における5つの20%」と
いわれているものがあります。これは、ネットなどには載ってい
ない最新情報といえるのではないかと思います。
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 @若年層失業率が20%を突破したこと
 A工業部門企業の利益が前年同期比で20%近く落ちたこと
 B地方政府の土地譲渡金収入が前年同期比で20%減ったこと
 C不動産の新規着工面積が前年同期比で20%減ったこと
 D消費者信頼感指数が20%以上落ちたこと
                   ──高橋洋一/石平著
 『断末魔の数字が証明する/中国経済崩壊宣言』/ビジネス社
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 第1の25%は、「若年層失業率が20%を突破したこと」で
す。中国の国家統計局は、23年6月15日、同年5月に16歳
〜24歳までの若年層失業率が20・8%に達したと発表してい
ます。ちなみに、日本の場合は、2022年、15歳〜24歳ま
での若年層完全失業率は、男性は4・9%、女性は3・5%、平
均して4・2%であり、同じ年齢層では、中国の現在の失業率は
日本の5倍になっています。
 第2の25%は、「工業部門企業の利益が前年同期比で20%
近く落ちたこと」です。これは、6月28日に中国の国家統計局
が発表した数字であり、23年1月〜5月、全国規模以上の工業
企業の利益は前年同期比では18・8%減になったといいます。
そのうち、民営企業の利益は前年同期比で21・3%の減です。
 第3の25%は、「地方政府の土地譲渡金収入が前年同期比で
20%減ったこと」です。これは、6月16日に中国財政部(財
務省)が発表した通りの数字です。地方政府土地譲渡金収入の大
幅減は、不動産業の衰退を意味すると同時に、各地方政府が深刻
な財政難に陥っていることを示しています。
 第4の25%は、「不動産の新規着工面積が前年同期比で20
%減ったこと」です。6月16日に中国国家統計局の発表した数
字で、正確にいうと、23年1月〜5月、全国の不動産新着工面
積は、前年同期比では22・6%減です。
 BとCの数字は、中国の不動産業の衰退と今後の減速を示して
いますが、中国経済の3割をつくりだしている不動産業の大不況
は、中国経済全体の沈没を意味しているといえます。
 第5の25%は、「消費者信頼感指数が、20%以上、落ちた
こと」です。消費者信頼感指数というのは、消費者の観点から米
国経済の健全性を図る指標の中国版のことです。いずれにしても
現在中国では、23年4月から「消費の大崩壊が起きている」と
いえます。
 これら「5つの20%」は、2023年6月25日に北京で開
催された経済シンポジウムの席上で、中国人民大学・国家発展と
戦略研究院の劉暁光教授が行った基調報告のなかで、話をされて
います。
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 ポストコロナにおいて、中国の経済回復は思うとおりに進んで
おらず、問題点として「5つの20%」があり、これを根拠に中
国経済は、すでに自己回復能力を失っているといえる。
             ──高橋洋一/石平著の前掲書より
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 現在の中国において、中国人民大学・国家発展と戦略研究院の
劉暁光教授とはいえ、ここまでいうとは大変なことです。
 ここで、中国のGDPのことを考えてみることにします。20
22年1年間のGDPは次の通りです。
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       ◎2022年1年間の中国のGDP
           121兆円02076億元
             2021年対比3%増
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 石平氏によるとこの数字は明らかに水増しされているといいま
す。しかも、3%増になっていますが、2022年の政府の定め
た経済成長率目標は5%であり、目標を大幅に下回っていること
になります。注目すべきは国内消費です。
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   ◎国内消費/2022年社会消費品小売総額
              13兆9733億元
           2021年対比0・2%減
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 高橋洋一氏によると、中国の統計が異常なのは、消費の割合が
異様に低いことです。普通の国であれば、消費は大体GDPの6
割であるのに、中国では実際にこの20年間、消費率はずっと4
割を切ってきています。その不足分を埋めているのが、投資であ
るといえます。
 2022年の固定資産投資総額は、57兆2130億元、全体
のGDPに占める割合は、約47%になっています。しかし、普
通の国であれば、投資は2割ぐらいであり、中国では、消費も投
資も異常といえます、
 投資の内容を調べると、一番大きかったのは、インフラ投資で
す。2022年のインフラ投資は9・4%増であり、明らかにイ
ンフラ投資に頼っていることがわかります。ウソか本当かは別と
して、何とか中国経済を3%成長させようとしています。
 しかし、いわゆる公共投資では、その社会便益が投資のコスト
を上回るものしかやらないのが大前提ですが、中国ではそれを全
く無視しており、その結果、必要もない、とんでもないものが、
たくさんできています。しかも作って終わりではない。維持、運
用、廃棄などで後々莫大なコストがかかります。
 現在、中国では、その不動産投資が危機的状況にあるのです。
中国経済は一体どうなってしまうのでしょうか。
           ──[物価と中央銀行の役割/028]

≪画像および関連情報≫
 ●中国経済は「時限爆弾」なのか 危機と根深い課題に直面
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   中国経済にとって、この半年間は悪いニュースが続いてい
  る。成長率の鈍化、若者の失業率の記録的な上昇、外国から
  の投資の減少、輸出と通貨の低迷、そして不動産セクター危
  機だ。アメリカのジョー・バイデン大統領は、世界2位の規
  模である中国の経済を「時限爆弾」と表現し、中国の国内で
  不満が高まると予測している。
   中国の習近平国家主席はこれに反論。同国の経済について
  「強い回復力、途方もない潜在力、強大な活力」があるとし
  ている。正しいのは、バイデン氏なのか、それとも習氏なの
  か。多くの場合でそうであるように、おそらく答えは2人の
  中間にある。中国の経済がすぐに崩壊する可能性は低い。だ
  が、中国は巨大で根深い課題に直面している。
   中国の経済問題の中心は不動産市場だ。最近まで、中国全
  体の富の3分の1を不動産が占めていた。{おかしな状態だ
  った。まったくおかしかった」。シンガポールのビジネスス
  クールINSEADで経済学を教えるアントニオ・ファタス
  教授はそう言う。
   中国の不動産セクターはこの20年間、民営化の波で、開
  発が進み、活況を呈した。しかし、2020年に危機が訪れ
  た。新型コロナウイルスのパンデミックと国内の人口減少が
  急ピッチの住宅建設に水を差した。
                 https://onl.bz/fUpVvW3
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石平氏.jpg
石平氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物価と中央銀行の役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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