2023年09月26日

●「中国のGDPの虚偽のからくり」(第6017号)

 7月25日に中国人民銀行の総裁に潘功勝氏が就任しましたが
前任者の易鋼氏との関係についてもう少しふれておきます。習近
平国家主席の考え方がわかるからです。
 易氏は、2018年3月に人民銀行総裁に就任し、2022年
10月に5年に一度の中国共産党大会において、中央委員候補か
ら外れ、退任が囁かれていたのです。これは中国の人民銀行の指
導部内での地位低下を表しているとの見方もあります。
 ちなみに、中国共産党大会で中央委員候補になるということは
大変なことなのです。しかし、易氏は候補から外れ、副総裁の潘
氏が人民銀行の総裁に昇進していますが、潘氏は、中央委員はお
ろか中央委員候補にすら名を連ねていないのです。潘氏は、国有
商業銀行の中国工商銀行などで勤務した後、2012年に人民銀
行副総裁に就任し、16年からは外国為替を監督する国家外貨管
理局の局長を兼任していたのです。
 この人事は、習近平国家主席が金融政策を含めたかじ取りの権
限を党中央に集中化させようとしていることが背景にあります。
3月には党に「中央金融委員会」を設置し、金融業務を統一的に
指導して、重要政策を進めていこうとしているからです。何もか
も自分の力の下に押さ込もうとしているのです。
 中国の話を続けますが、別テーマです。2023年4月18日
に中国国家統計局は次の発表を行っています。
─────────────────────────────
       ◎23年第1四半期(1〜3月)
        ●GDP(国内総生産)
         ・前年同期比/4・5%増
        ●固定資産投資総額
         ・前年同期比/5・1%増
        ●社会消費品小売総額
         ・前年同期比/5・8%増
─────────────────────────────
 まず、前年同期比4・5%増のGDPの数値ですが、固定資産
投資総額と社会消費品小売総額がそれぞれ5・1%、5・8%伸
びているなら、GDPが4・5%伸びても何も不思議はないとい
えます。このところ中国経済が悪いといわれますが、この数字か
らはそんなに心配することはないといえます。
 しかし、固定資産投資総額において、22年度と23年度を実
額で比較すると、次のようになります。
─────────────────────────────
    ◎2022年第1四半期/固定資産投資総額
               10兆4872億元
    ◎2023年第1四半期/固定資産投資総額
               10兆7282億元
─────────────────────────────
 中国国家統計局は、今年の第1四半期の「固定資産投資総額は
前年同期比5・1%増」と発表していますので、11兆0220
億元になるはずですが、そうなっていません。2938億元サバ
を読んでいることになります。この数字が正しい場合、正しい伸
び率は5・1%ではなく、2・3%になります。
 この国家統計局の公表数字のウソは、石平氏と高橋洋一氏が共
著の最新刊書に出ていたものですが、これについて、石平氏は次
のように述べています。
─────────────────────────────
 以前の中国政府なら、せめて自分たちの発表した税収関連の数
字くらいは辻褄が合うように偽造したものですが、最近はそれす
らしない。もう、なりふりなどかまっていられないということな
のでしょう。             ──高橋洋一/石平著
 『断末魔の数字が証明する/中国経済崩壊宣言』/ビジネス社
─────────────────────────────
 中国といえば、若年失業率(16〜24歳)は、2023年6
月まで3カ月連続で20%の大台を超えているので、国家統計局
は、7月以降の数値の公表を取りやめています。これでは、中国
の大学生は、「卒業後即失業」になってしまうからです。実際に
就職状況がどの程度のものなのかについて調べてみたのです。
─────────────────────────────
      ◎2022年度就職状況
       文系学生 ・・・・ 12・4%
       理系学生 ・・・・ 29・5%
      エンジニア ・・・・ 17・3%
─────────────────────────────
 なぜ、中国経済がなぜこのような惨状に陥ったかについては、
EJで詳しく説明していきますが、少なくとも現在の状況を招い
たのは、習近平主席による「共同富裕」を目指す「国進民退」と
呼ばれる国有企業を優遇し民間企業をないがしろにする経済政策
であり、いま中国経済に大きな苦しみを与えています。経済評論
家の朝香豊氏は「国進民退」について次のように述べています。
─────────────────────────────
 「教育を営利事業で行うのはどうかと思う」などという話が出
て、学習塾など教育ビジネスが壊滅状態に陥った。「子どもたち
をダメにする」として、ゲーム業界にも大きな圧力がかかった。
アリババ、テンセントなどのIT系の企業も、大量の情報収集が
国家に損害を与えるとして、大打撃を受けた。
 中国経済の第一の柱であった不動産業ばかりか、今後の成長産
業と目されたIT、教育、娯楽産業で
     https://gendai.media/articles/-/110031?page=4
─────────────────────────────
           ──[物価と中央銀行の役割/027]

≪画像および関連情報≫
 ●貧困ゼロを宣言した中国 データで見る中国の不都合な現実
  ───────────────────────────
   中国の習近平国家主席は、2021年7月、中国共産党創
  立100年となるのに合わせた式典で、国の最重要課題の1
  つに掲げてきた農村部の貧困層をなくすという目標を達成し
  たとアピールしました。
   中国では経済発展に伴う貧富の格差が大きな問題となって
  いて、指導部は、農村部で所得などが一定の水準に満たない
  層を「貧困人口」と位置づけました。その上で、2012年
  末の時点で1億人近くに上っていたとする“貧困層”をゼロ
  にする目標を掲げていて、この目標を達成したと宣言したの
  です。
   では習近平指導部が「貧困がなくなった」とする今、中国
  の人たちは豊かになったのか?実際どんな暮らしをしている
  んだろう?そんなことを考えて取材したのは、都市別の経済
  規模で中国4位の大都市、南部広州市です。
   こう嘆いていたのは、出稼ぎ労働者の40代の男性。服飾
  工場で働く男性は、朝7時半に起きて夜10時半まで働き、
  あとは、洗濯をして寝るだけの日々だといいます。毎日12
  時間働いて、休みは月に1度。それでも、月収は日本円にし
  て10万円ほど。ふるさとにいる親や妻と子どもへの仕送り
  家賃と食費などを支払うと、手元にはほとんど残らないのだ
  そうです。彼が暮らすアパートは6畳ほどの部屋。ここで息
  子と2人で暮らしています。台所がないので食事を作るのも
  不便です。            ──国際ニュースナビ
  ───────────────────────────
潘功勝中国人民銀行総裁.jpg
潘功勝中国人民銀行総裁
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物価と中央銀行の役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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