ついて次の報道をしています。
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◎株式市場「金利復活」先取り
銀行株5年半ぶり高値/脱デフレに期待/不動産株も好調
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東京株式市場で金利の先高観が金融株を押し上げている。日銀
が早期にマイナス金利政策の解除に動くとの観測を背景に、融資
の利ざやや運用環境の改善期待から投資資金が流入。銀行株指数
は5年半ぶり高水準をつけた。金利復活の前提となる日本経済の
「脱デフレ」がみえてくれば日本株全体の底上げにもつながる。
──2023年9月17日付、日本経済新聞より
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この記事が出た背景は、植田日銀総裁の9月9日の読売新聞の
インタビューでの次の発言です。
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マイナス金利の解除後も物価目標の2%が達成が可能と判断す
れば解除をやる。しかし、現在は来年の賃金上昇につながるか見
極める段階であり、十分だと思える情報やデータが年末までにそ
ろう可能性もゼロではない。 ──植田日銀総裁
9日付の読売新聞のインタビュー
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ここで、「マイナス金利とは何か」について、知る必要があり
ます。2022年9月以降、日本は世界唯一のマイナス金利政策
をとる国になっています。
金融機関は、日銀に対して当座預金口座を設けており、日銀と
金融機関との資金のやり取りはすべてこの口座を通して行われま
す。基本的には日本銀行当座預金には利息は付きませんが、特例
としてつく場合があります。国内の資金量を調節するさいのオペ
レーションのときに、日本銀行当座預金を使って国債の売買が行
われることがあります。
バブルが崩壊してからの日本は、この当座預金口座を通して頻
繁に国債の売買をしているので、実際には利息が付いていたので
す。したがって、日本の銀行は、この口座に資金を預けているだ
けで利息を取得していたことになります。
しかし、黒田前日銀総裁は、なかなか目標のインフレ目標2%
が達成できないので、金融機関が当座預金に預けている一部に対
して、マイナス0・1%の金利をかけるようにしたのです。そう
すると、預けている資金が減少してしまうことになり、金融機関
は資金を引き出して、市場に回すようになると考えたからです。
これがマイナス金利です。2016年1月のことです。
植田日銀総裁は、当初黒田前総裁の異次元の金融緩和路線をそ
のまま引き継ぎ、動かない人といわれたものです。動いたのは、
2022年12月と2023年7月に日銀は、長短金利操作(イ
ールド・カーブ・コントロール)を修正しています。これによっ
て、長期金利は1・0%まで上昇できるようになったのです。
このとき、植田総裁は、為替操作の変動を抑える必要性に言及
しています。円安をけん制する発言と考えられます。本来為替政
策は財務省が所管しており、日銀は言及しないものであるのに日
銀はここまで言及しています。
これに加えて今回の植田発言です。そうであるならば、日銀は
遠からずマイナス金利を解除する可能性があるとして、メディア
は、日銀が緩和修正の可能性があるとして報道したものと思われ
ます。これによって、長期金利は0・7%台に上昇しています。
これは9年8カ月ぶりのことです。
「金利が戻る」──これについて、日本経済新聞は次のように
書いています。
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金利の上昇は銀行にとって、預貸の利ざやと債券運用益の改善
という2つのルートから中長期的な収益拡大につながる。ゴール
ドマン・サックス証券の黒田真琴アナリストは長期金利が1%、
短期金利が0・2%それぞれ上がった場合、メガバンクの純利益
は将来的に約3割増えると試算している。自社株買いや、増配に
よる株主還元の強化に加え、海外展開やデジタル戦略の強化によ
る成長期待もある。三菱UFJは今年6月にインドネシアの自動
車ローン大手の買収を発表するなど、東南アジアの事業展開を強
化している。
金利復活を先読みする動きは債券の長期運用に追い風となる保
険株にも及ぶ。東京海上ホールディングスやMS&ADインシュ
アランスグループホールディングス株は15日にかけて連日で上
場来高値を更新した。(中略)
金利の目線が切り上がるなか、銀行株にとどまらず、日本株全
体への買いも徐々に戻りつつある。
──2023年9月17日付、日本経済新聞より
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以上に見るように、今回の世界インフレにおいては、日本は先
進各国と少し歩調が違うようです。もちろん日本もインフレです
が、デフレから脱却しつつある意味において、今度こそ脱デフレ
に期待が高まってきています。岸田政権の経済対策と、植田日銀
総裁のかじ取りに注目が集まっています。日経平均株価の4万円
突破は実現するでしょうか。いずれにせよ、今年度がデフレ脱却
のチャンスであることは確かです。
さて、今週も19日〜20日の2日間、オンラインでの仕事が
あります。医師からは「しばらく1日1業を守るよう」指示され
ています。そのため当分大事を取って、このルールを守り、EJ
を書いていきます。よろしくお願いいたします。
したがって、今週は、21日(木)を休刊とさせていただきま
すが、22日は配信いたします。週3回の配信です。誠に勝手な
がら、よろしくお願い申し上げます。
──[物価と中央銀行の役割/024]
≪画像および関連情報≫
●コラム:植田総裁、年末にもマイナス金利解除発言の真意
を探る=熊野英生氏
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[東京 14日]──長期金利が0.7%台まで、上昇し
た。2014年以来のことである。きっかけは、植田和男総
裁の発言である。9月9日付読売新聞朝刊のインタビューで
は、今年末利上げの可能性への言及があった。「来年(20
24年)の賃金上昇につながるか見極める段階だ。十分だと
思える情報やデータが年末までにそろう可能性もゼロではな
い」と述べた。
これは、マイナス金利を解除するタイミングについて述べ
たと考えられる。安定的に2%を上回る物価上昇が見通せる
という条件がクリアできれば、それはマイナス金利解除を意
味する。いよいよ本格的な出口政策だ。
インタビューの中では「賃金上昇を伴う持続的な物価上昇
に確信が持てた段階になればいろいろなオプションがある」
とも語っている。これは、マイナス金利を解除したときは、
長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)の枠
組みを単に撤廃する以外に連続指し値オペの発動ライン(現
状1.00%)を引き上げるなど多様な選択肢があり得るこ
とを説明したといえる。マーケットの思惑先行に対して、長
期金利のはね上がりを抑止できる仕掛けを設ける可能性を示
唆していると筆者はみている。
──熊野英生・第一生命経済研究所首席エコノミスト
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植田日銀総裁の発言