2023年07月07日

●「日経平均株価は4万円に達するか」(第5990号)

 本日は「七夕/たなばた祭り」です。株式格言に次の言葉があ
ります。
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      ◎株式相場のアノマリー(経験則)
            「七夕天井・天神底」
─────────────────────────────
 「七夕」は7月7日であり、「天神」とは天神祭のことで、日
本各地の天満宮で催される祭りです。なかでも7月24日〜25
日に開催される大阪天満宮の天神祭は有名です。したがって、こ
の格言は、7日をめがけて相場が上昇し、大阪市内で天神祭が開
かれる25日前後に向けて下落するという経験則なのです。
 6月4日の日経平均株価の終値は、3万3422円52銭であ
り、3万3000円前後で足踏みをしています。この状態が7日
まで続き、それを頂点として25日までは下落傾向が続き、大阪
天神祭の頃は底になることを暗示しているものと思われます。ち
なみに、過去5年の7月7日から7月末までの日経平均株価の騰
落は2勝3敗であるといわれています。
 私自身が株をやっているわけではありませんが、このところの
日本経済は「何かが違う」と感じているので、日経平均株価が、
本当に4万円に行くかに注目しているのです。これに関連して、
7月4日付の日本経済新聞の「ディープ・インサイト」に、次の
論文が掲載されています。これはなかなか興味深い論文であると
思うので、本テーマの最後に要約します。
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    日本経済新聞コメンテーター/梶原誠氏
        『膨らみ続けた「超バブル」』
          ──2023年7月4日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 既に引退している伝説の投資家のジョージ・ソロス氏の話です
が、安倍晋三政権による金融緩和への期待で、株価と円安が一気
に進んでいた2012年11月からのアベノミクス相場で、ソロ
ス氏は、日本株を買い、円売りで荒稼ぎしていたのに、2013
年春になると、あっさりと撤収してしまい、そのドライさが話題
になったものです。バブルを警戒したからであるといわれます。
 そのジョージ・ソロス氏が、リーマン危機のさいに打ち出した
「スーパーバブル崩壊」といわれる仮説があります。しかし、こ
の仮設は、幸運にしてこれまで実現していません。この仮説につ
いて、梶原誠氏は次のように紹介しています。
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 経済危機やバブル崩壊が起きるたびに、政府や中央銀行が財政
金融政策を打って封じ込める。繰り返すうちに、信用バブルは維
持できない程に膨らみ、ついに崩壊して歴史の転換点を迎える。
その引き金が、100年に1度の衝撃を持つリーマン危機だと警
告した。
 仮説は実現しなかった。リーマン危機も封じられたからだ。震
源地である金融機関は債務圧縮を余儀なくされたが、政府が代わ
りに債務を背負って景気を刺激した。中央銀行は国債を買って政
府の債務拡大を支えた。だがそれらの代償として、世界の国内総
生産(GDP)に対する債務の割合が当時の290%から330
%に拡大し、超バブルは深刻化した。「ディープ・インサイト」
          ──2023年7月4日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 梶原誠氏は、2023年の前半(1月〜6月)が終了した時点
で世界の市場を振り返ってみると、不安なことが2つあるという
指摘をしています。
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          @ビットコイン高
          Aハイテク株高騰
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 不安なことの第1は「ビットコイン高」です。
 現在、時価総額が最大の暗号資産(仮想通貨)であるビットコ
インの価格は、6月21日に4月14日以来の高値となる3万8
00ドルまで急騰しています。
 ビットコインの価格が上がるということは、多くの投資家が、
各国政府の政策に不満なときに起きています。英国の「エコノミ
スト」誌は、6月、「各国政府など多額の債務を抱えた借り手は
借金の価値が減るインフレを喜ぶ」と書いています。
 米テスラを率いるイーロン・マスク氏は、インフレで目減りす
るドルを避けるべきであると主張し、ビットコインに執着してい
るといわれます。
 不安なことの第2は「ハイテク株高騰」です。
 ハイテク株は、リスクがあると売られる景気敏感指数株です。
しかし、米S&P500種株価指数の500社を、GAFAMに
テスラ、エヌビディアを加えた「テック7社」と、「主要493
社」に分けて株価指数化したところ、上昇率はテック7社が60
%に迫る一方で、主要493社は10%に届かず、テック株の突
出ぶりが目立っています。
 テック7社が盤石なのは、GAFAMはインターネットを、テ
スラは電気自動車を、エヌビディアはAIをインフラとして普及
させているからです。梶原誠氏は、この論文を次のような印象深
い言葉で締めくくっています。
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 ソロス氏の警告が、いつまでも外れるとは限らない。超バブル
がしぼんでも跳ね返す力を日本企業が養えば、マネーのトラウマ
は癒えて日本株は選ばれ続ける。株価の回復に安堵してそれがで
きなければ10年前、ソロス氏が容赦なく、日本株の買いを手じ
まったようにマネーは去る。    「ディープ・インサイト」
          ──2023年7月4日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
      ──[世界インフレと日本経済/042/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●ひとこと解説/
  上野奏也氏/みずほ証券チーフマーケット・エコノミスト
  ───────────────────────────
   ソロス氏の「スーパーバブル崩壊」仮説のように、大きな
  危機が発生してカネあまりに頼った資産価格上昇は清算を強
  いられるという考え方は他の識者も唱えてきた。かつてイン
  グランド銀行総裁を務めたマーヴィン・キング氏は著書「錬
  金術の終わり」で、銀行システムに内在する欠陥を指摘。大
  きな金融危機がいずれ到来すると警鐘を鳴らした。だが、記
  事にもある通り、危機に直面した有能な実務家が緊急対応を
  しっかりとると、往々にして危機は封じ込められる。
   また、中国の不動産バブルのように、他国(日本)の経緯
  を十分研究した上で、経済に激震が及ばないようにした事例
  もある。「消防士」としての当局者の立ち回りが、事態を大
  きく左右する。 ──2023年7月4日付、日本経済新聞
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梶原 誠氏.jpg
梶原 誠氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界インフレと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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