2023年07月04日

●「東証改革/ユニコーンを育てる」(第5987号)

 6月30日の日経平均株価の終値は3万3189円04銭──
依然として3万円台を維持しています。今回の株高の要因の1つ
が、東京証券取引所の積極的な改革への取り組みが功を奏してい
ることは確かです。
 岸田内閣は、2022年11月24日に「スタートアップ育成
強化のための5か年計画」を発表しています。ここで、スタート
アップとは何かについて知る必要があります。とくにベンチャー
との違いについて理解する必要があります。
 ベンチャーもスタートアップも、「創業してさほど時間が経過
していない」小さい企業のイメージがありますが、それは違いま
す。ベンチャーとスタートアップの違いは、ビジネスモデルにあ
ります。ベンチャーは、既存のビジネスモデルをベースに収益性
を高める工夫をするか、スケールを拡大することで売り上げ増大
を狙う企業であり、創業間もない企業が多いです。
 これに対してスタートアップは、今までにないイノベーション
を起こし、新しいビジネスモデルを手探りで構築することによっ
て、短期間で高い成長性が期待できる企業であり、起業時期や事
業規模を問わない企業です。つまり、既存の企業でも技術革新に
よって、スタートアップになれる可能性があるのです。
 東京証券取引所(東証)は、上場企業のPBR(株価純資産倍
率)1倍割れ解消を打ち出し、それなりの効果を上げていますが
次に狙っているのが新興市場開拓です。岸田内閣のスタートアッ
プ育成政策を実現する取り組みですが、これは、そんなに簡単な
ことではないといえます。
 実際問題として東証で新規株式公開(IPO)をするには、小
粒な企業ばかりであり、市場が将来の日本の経済をけん引しうる
新興企業を生み出せていないといえます。これについて6月27
日付の日本経済新聞は次のように報道しています。
─────────────────────────────
 日経平均株価が33年ぶり高値を更新し、証券市場のさらなる
底上げに不可欠なのが新規株式公開(IPO)の復調だ。東証が
市場再編した2022年のIPO件数は3年ぶりに減り、ITバ
ブル時の半分程度にとどまる。スタートアップの資金需要をつか
みきれていないことが一因で、日本を通り越して米国で上場する
国内の起業家も出てきた。
 「新しい技術やサービスに対するアメリカの投資家の理解と寛
容さは段違いだ」。3月、米ナスダック市場に上場したシーラテ
クノロジーズ(東京・渋谷)の杉本宏之会長はこう語る。「シー
ラは投資家から小口の資金を集め、賃貸物件などに投資するクラ
ウドファンディングを手がける。日本では「(比較的)新しいサ
ービスという理由で投資家の反応がよくなかった。資金を集めら
れないリスクがあった」(杉本氏)。
         ──2023年6月27日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 最大の問題は、「ユニコーン」が育ちにくいことです。ところ
で、ユニコーンとは何でしょうか。
 ユニコーン企業とは、「評価額が10億ドルを超える設立10
年以内の未上場の企業」のことです。なお、評価額によって、次
の3種類があります。
─────────────────────────────
                  評価額   企業数
  @ ユニコーン企業   10億ドル以上 1144社
  A デカコーン企業  100億ドル以上   51社
  Bヘクトコーン企業 1000億ドル以上    3社
     https://www.bridge-salon.jp/toushi/unicorn/#back
─────────────────────────────
 上には上があるものです。こういうように書かれると、ヘクト
コーン3社とはどういう企業か知りたくなりますね。それは、次
の3社です。
─────────────────────────────
           社名     評価額  国籍
    第1位:Bytedance 1400億ドル  中国
    第2位: SpaceX 1003億ドル  米国
    第3位: SHEIN 1000億ドル  中国
─────────────────────────────
 第1位の「バイトダンス」は、動画共有サービス「ティックト
ック」を運営する中国のテクノロジー企業、第2位の「スペース
X」は、世界で初めて民間人だけでの宇宙旅行に成功したアメリ
カの航空宇宙メーカー、第3位の「シーイン」はファストファッ
ションを扱う中国のアパレル企業です。中国が強いです。
 なぜ、日本ではユニコーンが育たないのでしょうか。
 国別のユニコーンは、1位の米国の650社超に対し、日本は
たったの6社、100倍以上の差がついています。これに関して
日本経済新聞は次のように報道しています。
─────────────────────────────
 上場予備軍のスタートアップに投資するベンチャーキャピタル
(VC)は、ファンドの償還期限までに未公開株の転売先を見つ
けられず、企業に早期のIPOを促すケースが少なくない。(中
略)十分に資金調達できず小粒なまま上場すれば機関投資家には
見向きもされない。「流動性が小さく買うことができない」(大
手生保)からだ。機関投資家の後ろ盾がなければ企業の資金調達
もままならない。東証によると上場後に公募増資する企業は14
%どまり。小粒で上場した挙げ句、市場からも資金を調達できな
い悪循環に陥る。状況を変えるには上場予備軍に機関投資家や富
裕層の資金を呼び込む必要がある。東証はこのほど、市場再編の
有識者会議でグロース市場の「機能強化に向けた方策」を本格的
に議論することを決めた。    ──2023年6月27日付
                       日本経済新聞
─────────────────────────────
          ──[世界インフレと日本経済/039]

≪画像および関連情報≫
 ●岸田首相「来年はスタートアップの育成に一段と力を」
  東京証券取引所の大納会に出席/2022年12月30日
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   岸田首相は2022年12月30日、東京証券取引所の大
  納会に出席し、「上場審査のあり方を見直すなど、政府とと
  もに市場改革を進めて頂きたいと期待している」と述べた。
   岸田首相は30日、今年最後の取引を終えた東京証券取引
  所の大納会に出席し、「日本が直面する様々な社会課題の解
  決を担う主役は『スタートアップ』であると考えている。来
  年はその育成に一段と力を入れていきたい」と強調した。そ
  の上で「上場審査のあり方を見直すなど、政府とともに市場
  改革を進めて頂きたいと期待している」と述べた。
   また岸田首相は「来年は新しい資本主義を本格起動させて
  いく年だ。多くの政策課題もあるが一つ一つ乗り越えて、成
  長と分配の好循環を実現し、新しい日本を切り開いていく」
  と決意を語った。首相が大納会に出席するのは2013年の
  安倍元首相以来。
    https://www.fnn.jp/articles/gallery/465468?image=2
  ───────────────────────────
2022年12月30日/東証大納会に岸田首相出席.jpg
2022年12月30日/東証大納会に岸田首相出席
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界インフレと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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