6月2日のEJ第5965号でのことです。逆イールドとは、短
期金利と長期金利の逆転現象のことです。米国の2年債と10年
債が逆転したことを伝えています。債券は通常、満期までの期間
が長いほど利回りが高くなります。期間が長ければ、その分返済
が不透明になるため、投資家がより高いリターンを求めるからで
す。これが逆転すると不況になるといわれています。
2023年6月24日の日本経済新聞は、11面で逆イールド
の拡大について、次のように伝えています。
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◎「逆イールド」先進国で拡大
景気後退のサインとされる「逆イールド」が先進国で広がって
いる。「G10」と呼ばれる主要10通貨のうち、日本を除く9
カ国で債券の長短金利の逆転が発生する異例の事態となった。イ
ンフレが長期化するなか、22日に英国など複数の国が利上げに
踏み切るなど、金融引き締めの流れは継続している。景気の先行
きに対する警戒感が一段と増している。
──2023年6月24日付、日本経済新聞
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記事を少し補正します。日本を除く9カ国とは、ベルギー、カ
ナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン、
英国、米国の9カ国です。なぜ、逆イールドになると不況になる
のかというと、短期金利は、預金や短期市場を通じた調達金利で
あり、中期や長期の金利は貸出金利に当たるからです。逆イール
ドが起きれば、調達金利が貸出金利を上回ることになり、銀行は
貸し渋ったり、貸出金の回収を急いだりするので、その結果、景
気後退に陥りやすくなるというわけです。
日本とそれ以外の9カ国とは、金融政策の違いによって、政策
金利は次のようになっています。日本は実にマイナス金利です。
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政策金利/2023
日 本 −0・10%
米 国 5・00%〜5・25%
ユーロ 3・50%、4・00%、4・25%
英 国 4・50%
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しかし、日本でもインフレは進行しています。総務省が23日
に発表した5月の消費者物価指数によると、生鮮食品を除くと、
前年同月比3・2%の上昇です。より物価の基調に近い生鮮食品
とエネルギーを除く総合で見ると、前年同月比4・3%の上昇で
あり、上昇率は0・2ポイント拡大しています。この伸び率は、
第2次石油危機末期の1981年6月以来、41年11カ月ぶり
の伸び率です。
しかし、日本の物価は政府の政策支援の影響を受けて、抑え込
まれていることを知っておく必要があります。これについても日
本経済新聞は次のように書いています。
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足元の物価は政府の政策支援で抑えられている。電気・都市ガ
ス代の抑制と全国旅行支援による押し下げは生鮮食品を含む総合
に対して計1・05ポイントある。総務省によると、政策効果が
ないと仮定すると、5月は前年同月比4・3%のプラスとなり、
4・0%だった米国を上回ることになる。当面は価格転嫁の動き
と円安が物価に一定の上昇圧力をもたらす可能性が高い。
──2023年6月24日付、日本経済新聞
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その一方で、22日の米ニューヨーク外国為替市場では、円安
ドル高が進んでいます。一時、昨年11月以来約7カ月ぶりとな
る「1ドル=143円」台まで円は下落しています。これをどう
見るかです。
昨年秋の円安局面では、円が144円まで下がった9月14日
に日銀が「レートチェック」というものをやっています。レート
チェックとは、中央銀行が民間銀行に対して、「いまのレートは
いくら?」と聞くことをいいます。この情報は市場関係者にすぐ
伝わりますから、円売りドル買いを続ける市場関係者に対する牽
制になります。
しかし、それでも円安は止まらず「1ドル=146円」に迫っ
た9月22日、24年ぶりとなる円買いドル売り介入に踏み切っ
ています。さて、現在の143円に対して、日本政府はどう動こ
うとしているのでしょうか。
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政府・日銀はこれまで、介入にあたり重視するのは為替の水準
ではなく、値動きの大きさだとしてきた。鈴木俊一財務相は20
日、「ドル円水準は安定的に推移するのが望ましい。引き続き為
替動向に注目している」と市場を牽制(けんせい)した。
ただ、市場は、昨年9月の「最近の為替相場の変動は、やや大
きい」という鈴木氏の発言より、牽制の度合いが弱いと受け止め
る。財務省関係者は「1日で1円も2円も動いていた前回とは違
う」と言う。 ──2023年6月24日付、朝日新聞デジタル
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確かに昨年9月と現在は事情が異なるのです。昨年は、円安が
物価高に拍車をかけていましたが、今年は4月以降、輸入物価は
前年同月比でマイナスに転じています。円安は、訪日外国人の増
加につながり、株価をバブル後最高値圏にまで押し上げているの
です。米FRBも今年中にあと2回利上げをするといっています
が、終わりは見えていると思います。
しかし、経済が好循環に入る起点となる賃金の上昇は、依然と
して物価上昇に追いついていません。物価を考慮した実質賃金は
4月まで13カ月連続で前年割れとなっています。賃上げ問題は
日本にとって、大きな課題です。
──[世界インフレと日本経済/033]
≪画像および関連情報≫
●2023年の世界経済成長率は2・1%、世界銀行が予測
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世界銀行は6月6日、「世界経済見通し」〔プレスリリー
ス(英語、日本語)〕を発表した。2023年の世界の経済
成長率(実質GDP伸び率)は、2・1%と、2022年の
3・1%から低下すると予測した(添付資料表参照)。前回
2023年1月発表の1・7%からは0・4%ポイントの上
方修正となったが、世界的な金利上昇が続く中、世界の経済
成長は減速し、新興・途上国・地域の金融リスクが高まって
いるとの見方を示した。
中国を除く新興途上国・地域(EMDEs)では成長率が
2022年の4・1%から2・9%に後退する見通し。これ
らの国々の大半ではこれまで、先進国・地域における最近の
金融不安がもたらす影響は限定的だったが、現在では信用状
況が世界的にますます厳しくなり、EMDEsの4カ国に1
カ国が事実上、国際債券市場へのアクセスを失っているとし
た。また、EMDEsの経済活動は、2024年末までパン
デミック直前に予想された水準を約5%下回ると見込まれて
いる。新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻、
世界的な金融引き締めによる成長減速という三重のショック
が足かせとなり、EMDEsの成長が減速する状況が当面続
くと予想されている。ただし、東アジア大洋州エリアのEM
DEsの成長率は、中国の成長率の力強い回復に支えられて
持ち直すと予測。 ──JETROビジネス通信より
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足下で逆イールドが深まる


