2023年06月21日

●「『東証の大改革』について考える」(第5978号)

 2022年4月4日のことです。東京証券取引所(東証)が、
それまでの市場区分を見直し、市場を再編成しています。これが
「東証の大改革」といわれるものです。現在起きている日本株の
株高は、この改革と無関係ではないといわれています。2022
年4月以前の市場区分は次の4つに分かれていたのです。
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   @ 市場第一部 ・・ 流通性の高い企業向けの市場
   A 市場第二部 ・・   実績ある企業向けの市場
   BJASDAQ ・・ 成長性のある企業向けの市場
   C  マザーズ ・・     新興企業向けの市場
─────────────────────────────
 第一部と第二部の差は何となくわかるし、マザーズは新興企業
ということで理解できると思いますが、JASDAQは少し複雑
なので簡単に説明しておくことにします。JASDAQは、次の
2つに分かれています。
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    @JASDAQスタンダード ・・ 659社
    A  JASDAQグロース ・・  35社
─────────────────────────────
 JASDAQスタンダード(JAS)は、一定の規模・実績を
持つ成長企業を対象としている市場です。上場銘柄としては、日
本マクドナルドホールディングス株式会社、株式会社ワークマン
東映アニメーション株式会社など659社です。
 JASDAQグロース(JAG)とは、成長性の高い新興企業
(ベンチャー企業)中心の市場です。35社と数が少ないですが
ユニークな技術やビジネスモデルを持つ企業が上場しています。
シンバイオ製薬株式会社、株式会社リプロセルなど35社です。
 JASDAQとマザーズは、上場審査基準が異なります。例え
ば、JASDAQスタンダードは、見込み株主数が400人以上
時価総額が10億円以上であるのに対し、マザーズは上場したさ
いの見込み株主数が150人以上、時価総額が5億円以上となっ
ています。念のため、「時価総額」とは、次の計算によって得ら
れる数値です。
─────────────────────────────
     時価総額=現在の株価 × 発行済株式数
─────────────────────────────
 以上のような東証の市場区分は、2022年4月4日から新し
い次の3つの市場に再編されいいます。
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 @  プライム
  ・多くの機関投資家の投資対象になる規模の時価総額(流
   動性)+より高いガバナンス水準を持つ企業向け市場
 Aスタンダード
  ・一定の時価総額(流動性)+基本的なガバナンス水準を
   持つ企業向けの市場
 B  グロース
  ・高い成長可能性を実現するための事業計画を適時・適切
   に開示+相対的にリスクの高い企業向けの市場
─────────────────────────────
 この「東証の大改革」は、すこぶる評判が悪いのです。これに
ついて『週刊東洋経済』は、2022年4月4日号で、鋭く批判
しています。なぜなら、東証一部上場の84%が「プライム」に
そのままスライドしたからです。(添付ファイル参照)『週刊東
洋経済』は、これについて次のように書いています。
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 そもそも東証1部を巡っては、かねて玉石混交という批判が渦
巻いている。時価総額が30兆円を超える企業から、同10億円
台の企業までが入り乱れ、規模やガバナンス(統治)の程度があ
まりにもかけ離れている状態だからだ。その状況で改革議論の出
発点にあったのは、上場をゴールとせず、持続的な企業価値向上
にむけてどう動機付けを図り、その一環として最上位市場の構成
企業をどう厳選していくか、ということだった。
         ──『週刊東洋経済』2022年4月4日号
─────────────────────────────
 旧東証1部上場企業のなかには、そのポジションに相応しくな
い企業も多く含まれています。今回の改革は、そういう企業を適
正な市場に位置付ける絶好の機会でもあります。しかし、東証一
部上場の84%が「プライム」に横滑りしてしまったのです。
 実力が伴わないのに旧東証第一部に位置付けられている企業に
とっては、新しいプライムに移籍できないと、企業の一大イメー
ジダウンになります。
 そもそも旧東証一部上場企業は、政権党である自民党に親和性
のある企業が多いのです。当然そういう企業は、プライムにスラ
イドできるよう自民党議員に対して働きかけを強めるはずです。
献金などをエサに「配分を決める役人に働きかけてください」と
いう要請を行うはずです。上記の『週刊東洋経済』には、次のエ
ピソードが出ています。
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 「優秀な若者が地元で就職するとしたら、県庁、銀行、1部上
場と相場が決まっているわけ。その1部上場企業がもし“降格”
になったときの影響は、君たちが考えているよりもはるかに大き
いからね。よろしく頼むよ」
 東京・永田町にある自由民主党本部。6階の会議室での会合後
国会議員の1人に呼び止められた金融庁幹部は、そう言われて腰
をぽんと叩かれた。同幹部にとっては、担当外の話だったため、
「なぜ自分に」と思ったが、議員が言わんとしていることはすぐ
にわかった。当時まさに金融庁の審議会で議論していた案件だっ
たからだ。    ──『週刊東洋経済』2022年4月4日号
─────────────────────────────
          ──[世界インフレと日本経済/030]

≪画像および関連情報≫
 ●東証改革「終わりではなく始まり」 迫る市場再編
  ───────────────────────────
   「想定より多いな」。東京証券取引所の再編に伴う企業か
  らの申請が大詰めを迎えていた2021年12月。東証幹部
  の目は日々更新されるエクセルシートにくぎ付けだった。従
  来の最上位の東証1部から、あえて中間的な位置づけの「ス
  タンダード」に移行する企業の数が関心の的だ。
   「当初は100社くらいかな、と思っていた」。日本取引
  所グループ(JPX)の最高経営責任者(CEO)、清田瞭
  は明かす。蓋を開けてみると、東証1部の2180社のうち
  スタンダードへの移行を選んだ企業は339社にのぼる。ス
  タンダードへの「くら替え」を選ぶ企業の数を気にするのは
  現在の東証1部が膨張していることの裏返しだ。13年の旧
  大阪証券取引所との統合を経て、上場社数は10年前より約
  3割えた。東証1部の上場約2200社全体を運用対象にす
  る投資家は少なくない。日銀も、金融緩和策で買い入れてい
  る。一方、米国の主要企業の株価指数は500社。東証1部
  の上場企業は「玉石混交」との指摘があった。
          ──2022年3月7日付、日本経済新聞
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1部上場の84%がプライムにスライド.jpg
1部上場の84%がプライムにスライド
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界インフレと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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