総裁にとって2回目になる会合ですが、長短金利操作(イールド
・カーブ・コントロール/YCC)のもとでの金融市場調節の方
針について現状維持を全員一致で決めています。
この日銀政策の現状維持のニュースを知るや、トレーダーは、
安心して円を売り、また、低利の円を借りて高金利の通貨を買う
ことで金利差収益を狙う「円キャリー取引」で、リターンを稼ご
うとしています。その結果、外国為替市場では、一方的な円安が
続いています。
─────────────────────────────
1ドル ・・・・・・ 141円
1ユーロ ・・・・・・ 155円
1英ポンド ・・・・・・ 182円
1スイスフラン ・・・・・・ 158円
──2023年6月16日現在
─────────────────────────────
ドルに関しては、2022年11月以来の円安・ドル高水準で
あり、ユーロに関しては2008年9月以来の15年ぶりの円安
水準にあります。英ポンドでは、2015年12月以来のポンド
高・円安水準です。
対ドルの141円は落ち着いているといえますが、注目すべき
はユーロです。対ユーロの円相場の週間下落率は3・5%であり
2017年4月以来6年ぶりの大きさになっています。これがさ
らに進行すると、日銀による為替介入の可能性が考えられます。
そのなかにあって、日本株は上昇が続いています。2012年
末に安倍自民党が、民主党から政権を奪回し、2013年から安
倍政権がはじめたアベノミクスのときも日本株は急上昇しました
が、そのときと今回の主要経済数値の比較が日本経済新聞に出て
いるので、掲載します。
─────────────────────────────
今回 2013年
日経平均株価 3万3706円 1万1191円
東証時価総額 823兆円 330兆円
PER(株価収益率) 15・3倍 19・1倍
配当利回り 1・92% 1・73%
円相場(対ドル) 141円14銭 92円08銭
長期金利 0・400% 0・765%
──2023年6月17日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
「PER(株価収益率)」とは何でしょうか
PERとは、会社の利益と比べて、今の株価が割安かどうかを
見る指標です。そのためには、「1株当たりの純利益」であるE
PSを知る必要があります。EPSとは、会社の最終利益である
純利益を発行済み株式数で割ったものです。
仮に、純利益が1000万円とします。発行済株式数が10万
株とした場合、EPSは次のように求められます。
─────────────────────────────
1000万円÷10万株=100円=EPS
1株当たりの純利益は100円
─────────────────────────────
このときの株価が2000円だったとします。そうすると、E
PSの20倍ということになります。すなわち、現在の株価は、
1株当たりの純利益の20倍です。これがPERということにな
ります。すなわち、PER(株価収益率)とは、今の株価が「1
株当たりの純利益}の何倍なのか」を示したものです。
日本の株高に関連する情報のなかで、2023年6月17日付
日本経済新聞「ディープ・インサイト/Deep Insight」の梶原誠
氏の次の論文は興味深いです。梶原誠氏は、日本経済新聞社のコ
メンテーターです。
─────────────────────────────
梶原誠著
『「誤算の株高」を保つには』
──2023年6月17日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
「誤算の株高」とは何でしょうか。この論文についてはいずれ
取り上げるとして、ここでは著者がPERのことに言及している
ので、それについて述べることにします。
日本経済新聞では、毎年正月に、主要経営者による日経平均の
年間予想を掲載しています。それによると、昨年末の終値2万6
094円に対し、1月1日に掲載した20人の予想は、2万20
00円から3万3000円の範囲だったのです。
そのなかで、最も強気の予想をしたのは、大和証券グループ本
社の中田誠司社長だったそうです。中田社長は、日経平均が3万
1000円だった5月31日に、経営説明会で、正月の予想につ
いて「違和感のない水準」と振り返っています。その根拠は次に
よります。
日経平均採用銘柄の予想EPSは2238円となっているので
PERは次のように算出されます。中田社長の予測は的中してい
るといえます。
─────────────────────────────
◎日経平均採用銘柄のEPS予想値=2238円
/同PER予想値14・5倍
2238円×14・5=3万2451円
─────────────────────────────
6月17日付の日本経済新聞では、PERは15・3倍になっ
ており、EPSを2238円として計算すると、3万4241円
になります。6月16日の日経平均株価は3万3706円08銭
でほぼそれに近くなっています。PERとEPS──覚えておい
ても損はないと思います。
──[世界インフレと日本経済/029]
≪画像および関連情報≫
●日経平均なぜ3万円超え?4つの視点から株価急上昇の
要因を考える
───────────────────────────
日経平均株価が<1年8カ月ぶりに3万円台を回復しまし
た。投資家、外部環境、国内経済という視点から株価急上昇
の要因を考えます。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコ
ノミストの解説です。
5月19日、日経平均株価は3万0808円で取引を終え
ました。ゴールデンウイーク明けのわずか2週間で一気に、
2000円近く上昇し、バブル崩壊後の最高値を約1年半ぶ
りに更新しました。
この株価上昇の背景には、2022年度決算及び株主還元
策が投資家の期待を満たしたことがあります。東証が、PB
R(株価純資産倍率)が1倍を割れている(会社が保有して
いる純資産に対して株式の評価が低い)企業に対して、資本
効率の改善を求めたことに企業が呼応し自社株買いや増配な
ど株主還元策を強化したことで、投資家の日本株に対する評
価が上がった形です。またそれとは別にここへ来て世界的に
製造業の底打ち感が強まっていることも効いています。米国
経済は、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事
会)が行った金融引き締めの副反応によって、企業の資金繰
り環境が悪化するといった不気味な材料が多くなっている反
面、日本株との関係が深い製造業については、そのサイクル
に反転の兆しが認められています。
https://onl.sc/9Tf5wsx
───────────────────────────
「円は幅広い通貨に対して下落している」