2023年06月12日

●「名目GDPはどこまで伸長するか」(第5971号)

 先週の金曜日、6月9日の日経平均株価の終値は3万2265
円です。7日と8日は少し下落したものの、9日には持ち直して
います。これは、きわめて注目すべき出来事なので、少し書くこ
とにします。
 日経平均株価が3万円を超えたのは6月1日(木)のことであ
り、終値は3万0976円でした。直近で3万円を超えたのは、
2021年9月14日の3万0670円以来のことです。日経平
均株価の過去最高額と最低額は次の通りです。
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 ◎日経平均過去最高額と最低額
  最高額:3万8915円87銭/1989年12月29日
  最低額:  7054円98銭/2009年 3月10日
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 2023年6月9日の日本経済新聞に次の記事が出ていたので
以下に示します。
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◎名目成長率、32年ぶり伸び/今年度4・0%、物価上昇で
 日本経済新聞社が民間エコノミスト10人に聞いたところ20
23年度の名目国内総生産(GDP)成長率予測は平均で4・0
%となった。1991年度以来、32年ぶりの高さになる。税収
増で財政収支の改善が進む中、歳出圧力が強まるリスクがある。
海外経済の減速で外需が冷え込む可能性もある。(中略)
 デフレが続いてきた日本は、名目成長率が低迷していた。23
年度の名目成長率がエコノミストの予測通りならば、91年度の
5・3%以来の高さだ。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「企
業がちゅうちょしてきた価格転嫁や賃上げが実現した結果だ」と
指摘する。     ──2023年6月9日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 名目成長率(名目国内総生産『GDP』成長率)というと、物
価の変動による影響を含んだ国内総生産(GDP)のことですか
ら、物価が上がっているときは当然上昇します。そのため、名目
成長率から物価の変動分を調整して算出した成長率のことを「実
質成長率」といいます。
 近頃の大学生に「GDPとは何か」という質問をすると、的確
な答えが返ってこないことが多いので、一応基本的なことを書い
ておきます。
 GDPというのは、一定期間に国内で産み出された付加価値の
合計で、国の経済活動状況を表す数値です。付加価値というのは
「儲け」のことなので、GDPによって国内にどれほど儲けが産
み出されたのか、すなわち、国の経済の良し悪しを知ることがで
きるのです。GDPを式であらわすと、次のようになります。
─────────────────────────────
    GDP=「民需」+「政府支出」+「貿易収支」
          │
        「民需」=「個人消費」+「設備投資」
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 コロナ禍と諸物価値上がりによって、個人消費は節約志向で縮
小していますが、企業の設備投資は上昇傾向を続けています。帝
国データバンク情報統括部の調査によると、2023年の調査で
は、60・5%と伸びています。それに加えて、コロナ対策で政
府支出が大きく増えており、名目GDPは増大しています。これ
については、添付ファイルも参照してください。
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◎設備投資計画の推移
             実施ないし実施検討中企業
   2020年調査          57・8%
   2021年調査          58・0%
   2022年調査          58・9%
   2023年調査          60・5%
   %は、設備投資を既に実施+実施予定+実施検討の合計
                  https://onl.sc/qdZeJRN
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 一般論ではありますが、名目GDPが増えるということは、税
収が増えることを意味します。政府は2025年度までに、基礎
的財政収支(プライマリーバランス/PB)を黒字化する目標を
立てていますが、2023年度の名目成長率見通しが2・1%で
その後3%で推移すれば、プライマリーバランスは26年度に黒
字化する計算になります。
 しかし、海外経済の悪影響が懸念されます。6月7日にはカナ
ダ銀行(中央銀行)は、市場の大方の予想に反し、3月と4月の
2回連続で停止していた政策金利の引き上げを再開し、0・25
%引き上げ、政策金利を4・75%としたのです。
 オーストラリア準備銀行(中央銀行)は、6月6日に理事会を
開き、政策金利のキャッシュレートの誘導目標を25ベーシスポ
イント(1ベーシスポイント=0・01%)引き上げ、4・10
%にすることを決定しています。キャッシュレートの4%台超え
は、2012年4月以来、11年2ヵ月ぶりのこととなります。
市場では、今回、据え置きの見方が優勢だったため、2会合連続
の利上げはサプライズになっています。
 これらの海外経済の悪影響について、日本経済新聞は次のよう
に記述しています。
─────────────────────────────
 海外経済の悪影響は懸念材料だ。エコノミストの間では「急速
な利上げの影響などで、欧米経済は今後、一段の景気悪化が見込
まれる」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介氏)との
見立てが多い。輸出の下押しを通じ成長率が下振れする可能性も
あり、成長率が想定ほど高まるかは不確実性もある。
          ──2023年6月9日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
          ──[世界インフレと日本経済/023]

≪画像および関連情報≫
 ●日本経済一人勝ちへの期待が崩れる:3月短観は景気後退
  前夜の日本経済の姿を映し出す
  ───────────────────────────
   昨年の年末頃には、主要国の中で日本の成長率が2023
  年には一番高くなる、との各予測機関の見通しが注目を集め
  ていた。欧米経済が金融引き締めの影響で減速する中、日本
  経済は比較的高めの成長を続けるという、いわば「日本経済
  一人勝ち」への期待が強まっていたのである。その背景にあ
  るのは、感染リスクの後退によって、個人消費の回復傾向が
  他国に遅れて強まっていく、との見通しであった。
   しかしその期待は、既に崩れている。昨年10〜12月期
  の実質GDP(2次速報)は前期比年率でわずか+0・1%
  と、ほぼ横ばいに留まった。期待されていた実質個人消費も
  前期比+0・3%と力強さを欠いている。感染リスクが低下
  する中、全国旅行支援という政策の後押しがあった中でも、
  前期の同+0・0%と均してみると、実質個人消費は予想外
  に低い成長ペースを続けたのである。
   日本銀行の消費活動指数(実質)をみると、2021年末
  頃に同指数はコロナ問題発生時の2020年1〜3月期の水
  準まで戻ったが、その後はほぼ横ばいを続けている。コロナ
  ショックからの回復は既に相当進んでおり、この先、リベン
  ジ消費と呼ばれるような強い回復局面が来ることを期待する
  のは、楽観的過ぎるのではないか。https://onl.sc/S1aKQW8
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企業の設備投資計画の推移.jpg
企業の設備投資計画の推移
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界インフレと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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