2023年05月29日

●「サービス消費からモノ消費へ転換」(第5961号)

 今回のテーマでよく出てくる言葉の意味を整理をしましょう。
「FRB」と「FOMC」の違いは分かりますか。『世界インフ
レの謎』の著者、渡辺努教授は、本の中で「Fed」という言葉
を頻繁に使っています。「Fed」とは何でしょうか。これらの
言葉の違いがわからないと、最近の経済記事は、正確に意味が読
み取れないことになります。
 米国の中央銀行制度のことを「連邦準備制度」をいいます。こ
れが「Fed」です。Federal Reserve System の略称であり、
「フェド」と呼称されています。FRSは、次の3つの機関から
構成されています。
─────────────────────────────
      @   FRB/Federal Reserve Board
  FRS A  FOMC/Federal Open Market Committee
      B連邦準備銀行/Federal Reserve Banks
─────────────────────────────
 「FRB/連邦準備理事会」は、Fedの最高機関として米国
の金融政策を策定・実施します。日本の中央銀行である日本銀行
に該当します。「FOMC/連邦公開市場委員会」は、日本の日
銀政策決定会合に該当します。FOMCは、年に8回開催され、
現在の景況判断と政策金利(FF金利)の上げ下げなどの方針が
発表されます。全米12地区の連邦準備銀行は、FRBの下に置
かれ、決定された金融政策の実施や、米ドル紙幣(連邦準備券)
の発行などを行います。
 米国のインフレはどうなるのでしょうか。FRBは、5月24
日に、5月2日〜3日に開催されたFOMCの記事要旨を発表し
ていますが、5月26日付の日本経済新聞は、それを次のように
伝えています。
─────────────────────────────
 インフレ持続で追加の利上げが必要になるとの意見が複数出た
一方、利上げを停止できるとみる参加者も多く、見方が割れてい
る。6月会合では利上げを見送りつつ、必要なら年後半に利上げ
を再開する「折衷案」も浮上してきた。
 公表された議事要旨によると、何人かの参加者は、物価上昇率
を目標の2%に戻すまでの歩みが「受け入れがたいほど遅い状態
が続きそうだ」と指摘した。そのうえで「今後の会合で追加の引
き締めが正当化される可能性が高い」と主張した。
 一方、より多くの参加者は「さらなる引き締めは必要ないかも
しれない」と表明した。追加利上げの慎重派は、過去1年ほどで
計5%に達した利上げの効果が時間差で実体経済に波及するのを
見極めたいとの考えに傾いている。
       ──2023年5月26日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 この記事を読むと、米国の中央銀行であるFRBは、利上げを
やめるか、継続するかの明確な判断を現時点では下せないでいる
ことが読み取れます。やはり今回のインフレは、供給サイドが原
因であるため、中央銀行としては制御できないでいるようです。
 どのようにして、供給サイドを原因とするインフレが起きたの
でしょうか。ていねいに探ってみたいと思います。
 添付ファイルのグラフをご覧ください。これは「米国消費に占
めるモノとサービスの割合」について示したものです。渡辺努教
授の本に出ていたものです。黒い実線は「モノ」の割合(縦軸)
薄い実線は「サービス」の割合(横軸)を示しています。
 グラフを一見すると、黒い実線と薄い実戦は、上下対照的なグ
ラフになっています。パンデミック前の2019年から2020
年3月にかけて、米国で行われた消費のうち、サービス消費につ
いては約69%(右目盛)、モノ消費は約31%(左目盛)だっ
たのです。
 これが、パンデミックを境にサービス消費とモノ消費が入れ替
わり、2021年3月になると、サービス消費は30%にダウン
したのに対し、モノ消費は70%に達しています。この傾向は、
2022年になっても戻っていないのです。
 モノ消費からサービス消費への変化は、経済の発展によって、
自然に起きる現象です。これについて、渡辺努教授は、次のよう
に説明しています。
─────────────────────────────
 経済発展の途上の国では、人々は生活を楽にしたり、家庭で娯
楽を味わったりするために、まずはモノを揃えていきます。たと
えば、日本の高度成長期には「テレビ・洗濯機・冷蔵庫」が三種
の神器と呼ばれ、庶民の憧れの対象でした。
 一方、経済発展の成果がある程度人々の生活に行きわたってい
る先進国ではたいていの世帯にモノはひととおり揃っています。
こうなると、人々はさらにモノを持ちたいとは考えず、その代わ
りに、体験を得ることや感覚を楽しむサービス消費を拡大させて
いきます。モノに頼って自分のことを自分でするのではなく、人
に自分の面倒を見てもらうことこそが、生活の豊かさだというわ
けです。これが「サービス経済化」と呼ぼれる現象です。
          ──渡辺努著/講談社現代新書/2679
                   『世界インフレの謎』
─────────────────────────────
 パンデミックになると、サービス消費をしたくてもできないの
で、必然的にモノ消費になることは理解できます。これは需要の
シフトであり、非常に素早く行われます。レストランなどの飲食
店を例として上げると、サービス消費からモノ消費へのシフトが
起きると、客が来なくなり、店舗を閉めざるを得なくなります。
 しかし、その店舗を他の目的にすぐには転用できず、閉めるし
かなくなります。その店舗で働いていた労働者も仕事がなくなり
ますが、すぐには転職できないでしょう。すなわち、需要のシフ
トは瞬時ですが、資本と労働の移動はゆっくりとしか行われない
のです。すなわち、ここに需要と供給のアンバランスが生ずるこ
とになります。   ──[世界インフレと日本経済/013]

≪画像および関連情報≫
 ●「モノ消費からコト消費」の意味とは?定義から注目され
  る背景
  ───────────────────────────
   「時代はモノ消費からコト消費へ」──そんな言葉をニュ
  ースや新聞でも多く見かけるようになりました。商品の所有
  に価値を見出す消費傾向を「モノ消費」、商品やサービスを
  購入したことで得られる体験に価値を見出す消費傾向を「コ
  ト消費」といいます。
   では、なぜ「モノ消費からコト消費へ」という変動が今起
  きているのでしょうか。今回は、モノ消費・コト消費という
  言葉が注目されている背景と、コト消費に対応した事例、さ
  らにもうひとつ注目を集めている消費活動「トキ消費」につ
  いても解説します。
   コト消費は国内市場だけでなく、訪日外国人によるインバ
  ウンド市場でも注目されています。この機会に注目されてる
  背景を学び、自社のビジネスにどのような影響があるのかを
  考えてきましょう。
   グーグル検索に連動したグーグルトレンドで「コト消費」
  と検索すると、2006年頃から言葉が使われ始めたのがわ
  かります。では、そもそも、モノ消費・コト消費とは、どう
  いった意味で利用されているのでしょうか。経済産業省の公
  表している『平成27年度地域経済産業活性化対策調査報告
  書』では、モノ消費とコト消費について以下のように説明さ
  れています。       https://ferret-plus.com/6452
  ───────────────────────────
米国消費に占めるモノとサービスの割合.jpg
米国消費に占めるモノとサービスの割合
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界インフレと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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