2023年05月10日

●「『ラピダス』小池敦義社長の経歴」(第5948号)

 日本の半導体新会社「ラピダス」の社長を務めるのは、小池敦
義氏という人物です。半導体業界に身を投じ、40年以上の経験
を持っています。日立製作所で技術者としてキャリアをスタート
させ、生産技術本部長を務めた後は経営者の道を歩んでいます。
台湾との合弁企業で社長に就き、後にTSMCが主導権を握る製
造受託ビジネス(ファウンドリ)を日本に根付かせようとしたの
ですが、失敗に終わっています。
 2006年にメモリーを手掛ける米サンディスク(現ウェスタ
ンデジタル)に転じて以来、直近まで日本法人トップを務めてい
ます。サンディスクと協業する東芝、キオクシアとの窓口役を担
い、韓国勢としのぎを削ってきた経験を持ち、日米が手を握れば
世界の最先端で十分戦えるとの思いは現在、確信に変わっている
といわれます。日本の半導体新会社のトップとして、十分な経験
を持つ人物であることは確かです。
 小池敦義社長は、今年1月4日のNHKのインタビューで、な
ぜ、いまラピダスなのかについて、次のように語っています。
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 これはもう「将来はない」っていうぐらいの危機感を持ってい
た。いまこの半導体が、あらゆるものに使われている。昨今、何
でこれだけ半導体が注目されているかというと、自分の買いたい
車が手に入らない、家電製品も手に入らない、全然手に入ってこ
ない。それが1つの半導体が手に入らないってことで、これはよ
く見えなかったけど、すごく重要なんだっていうことを皆さんが
理解していただけたんですね。これは今までなかったことだと思
う。だからこそこの機会を逃してしまったら、日本のあらゆる産
業はだめになる。あるいは日本だけでなくて、世界がおかしくな
ると感じ取っていた。        https://bit.ly/3NM3dTy
─────────────────────────────
 ラピダスのロードマップは、もの凄くタイトなスケジュールで
す。工場建設から2027年の量産開始まで、たった4年しかな
いのです。既に経済産業省は、工場建設のために2600億円の
補助を決めており、既に3000億円超の支援をしています。し
かし、実際に量産を開始するためには、5兆円規模の資金が必要
になるともいわれており、さらなる投融資を呼び込むことが求め
られます。
 インタビューアーは、成功のためには、何が一番必要かと小池
社長に尋ねたところ、小池社長は次のように述べています。
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 やっぱり「人」、「もの」、「金」で言うと、いちばん大事な
のは「人」。これがないと他のもの、金やものがあってもどうに
もならない。だから優秀な人材がいちばんだと思っている。われ
われずっと考えているのは、当然優秀な人に来てもらう、これも
大事なことですけど、優秀な人を育てることだと思う。
 「ラピダスにとって、まさにふもとで、これからちょっとずつ
登り始めるわけですけども、ある程度の人員計画に基づいて、優
秀な人々を日本あるいは世界から集まっていただくことを着実に
やっていくことが大事。われわれの精鋭部隊を送り込んで学習す
ることを具体的に進めていく。2023年は具体的に動き出す非
常に大事な年。「できないことなどないんだ」という信念を持っ
て頑張っていきたい。       https://bit.ly/3NM3dTy
─────────────────────────────
 その肝心な「人」の採用は順調にいっているようです。「毎日
のように、世界中からすごい数の応募がある」と小池社長は打ち
明けています。最先端半導体の製造に携わる人材は、世界中で獲
得競争が激しくなっていて、人材獲得は懸念事項のひとつと見ら
れていましたが、蓋を開けてみれば50代のエンジニアを中心に
採用はすこぶる順調であるといいます。
 EU(欧州連合)も半導体誘致政策がスタートしています。欧
州半導体法に基づいて、ドイツのインフィニオンテクノロジーズ
の工場新設に対して1500億円の補助をすることになっていま
す。5月2日に開かれた工場の着工式に、EUの執行機関である
欧州委員会のフォンデアライエン委員長やショルツドイツ首相が
出席しています。5月3日付の日本経済新聞は、次のように報道
しています。
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◎EU、半導体誘致策が始動/独インフィニオンに1500億円
 補助へ/電力価格に懸念、米の3倍
【ドレスデン(ドイツ東部)=林英樹】欧州連合(EU)による
半導体産業の誘致策が始動する。ドイツの半導体大手が2日、同
国ドレスデンで新工場の建設に着手した。EUは4月に暫定合意
した欧州半導体法を初適用し、投資額の2割を補助する予定だ。
経済安全保障の観点から、EUは米中に劣る半導体の域内生産拡
大を目指すが、コスト高などが影を落とす。
          ──2003年5月3日付、日本経済新聞
              https://s.nikkei.com/3AZHpfr
─────────────────────────────
 インフィニオンでは、電気自動車(EV)のモーター制御装置
などに使われるパワー半導体を生産する計画であり、2026年
秋の稼働を目指しています。しかし、米国が企業の投資額の40
%の補助をするのに対し、EUは20%程度にとどまることに対
して、EUとしては焦りを感じているといわれます。
 今回のテーマは、1月4日から64回にわたって書いてきまし
たが、途中に2回も病気で入院せざる得なくなり、書店に行けな
いなど、テーマに対して十分な情報取集ができないなどの事情に
より、テーマとして、うまくまとめることができない状況になっ
てしまっています。
 既に64回書いていますし、このまま続けて書くよりも、新し
い話題を取り上げたいので、今回のテーマは、本号をもって終了
し、明日から、新しいテーマを取り上げることにします。
       ──[メタバースと日本経済/064/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●「ラピダス」に2600億円を追加支援/経産相表明
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   西村康稔経済産業相は25日の閣議後記者会見で、次世代
  半導体の国産化を目指す新会社「ラピダス」に2600億円
  を追加支援すると表明した。ラピダスが北海道千歳市に建設
  を予定している工場の試作ラインの基礎工事などに充てる。
  経産省は、昨年11月にも研究開発のために700億円の支
  援を決めており、ラピダスへの支援額は計3300億円とな
  る。半導体開発をめぐる国際競争が激しさを増す中、国が前
  面に立ち新技術の確立を後押しする。
   追加支援の2600億円は、令和4年度補正予算で確保し
  た4850億円の一部を充当する。千歳市での試作ラインの
  基礎工事に加え、ベルギーの研究機関「imec(アイメッ
  ク)」や米IBMと技術開発を進める費用などに使う。
   半導体は、回路線幅が狭いほど性能が高まる。ラピダスは
  回路線幅が2ナノメートル(ナノは10億分の1)相当の微
  細な半導体の生産技術を開発する計画で、2月には千歳市に
  工場を建設すると発表。令和7年に試作ラインを立ち上げ、
  9年の量産開始を目指している。 https://bit.ly/3NK3LJy
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小池敦義ラピダス社長.jpg
小池敦義ラピダス社長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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