ています。ラビダスに関する情報が増えてきています。
─────────────────────────────
◎ラピダス追加補助2600億円
政府方針/次世代半導体新工場に
大手企業8社が、次世代半導体の国産化をめざす共同出資会社
「Rapidus(ラピダス)」 が北海道に建設する新工場に対し、政
府は新たに2600億円を補助する方針を固めた。次世代半導体
をめぐる国際競争が激しさを増すなか、政府肝いりの事業として
すでに700億円の補助を表明しており、計3300億円に上る
巨額の国費を投じることになる。
──2023年4月25日付、朝日新聞
─────────────────────────────
何度も繰り返し述べているように、ラビダスは、2022年8
月に設立された日本版の最先端半導体のファウンドリ(製造受託
企業)です。その目標は「ビヨンド2ナノ」です。ナノは10億
分の1を意味します。現在この世界の最先端は2nm(2ナノメ
ートル)ですが、ラピダスは1nm台を狙おうとしています。先
を行くTSMCやサムスン電子を追撃しようというのですから、
その「やる気やすこぶる良し」といえるでしょう。
ラピダスは、工場建設地に北海道千歳市を選んでいますが、本
気で最先端を目指すのであれば、将来的に3〜4棟の工場は必要
であり、そのためには相当大きな敷地が必要になるからです。つ
まり、今後の拡張性を重視して千歳市を選んでいます。現在、2
つの工場の建設が予定されており、それは「IIM1」と「II
M2」と呼ばれています。
─────────────────────────────
「IIM(イーム)1」 ・・・ 2nm世代対応工場
「IIM(イーム)2」 ・・・ 1nm世代対応工場
─────────────────────────────
ところで、「IIM」とは何でしょうか。
「IIM」とは、「ファブ(Fab)」 (工場)に代わる半導体
工場の独自の呼び方です。ラピダスの小池淳義社長が口にした言
葉であり、これまでの半導体の常識を打ち破るまったく新しい半
導体の製造を目指しているといいます。なお、IIMは次の英語
の省略形です。
─────────────────────────────
◎IIM(イーム)
Innovative Integration for Manufacturing
─────────────────────────────
小池社長によると、IIMと呼ぶには、具体的には、次の3つ
のことに力を入れるからであるといいます。
─────────────────────────────
@サイクルタイムの極限までの短縮
AAIを活用した製造工程の自由化
B前工程と後工程の統合の受託生産
註:前工程=ウェハー工程、後工程:パッケージング
─────────────────────────────
ラピダスでは、新技術開発のため、どのくらいの人数を集めよ
うとしているのでしょうか。
既に100人程度の技術者が集まっているといいます。これを
2023年中に200人まで増やす計画で、最終的には300〜
500人の規模になるといいます。どういう人を集めているのか
というと、国内で他企業に移籍した半導体技術者や、海外に移っ
た半導体技術者などで、世界中から毎日のように応募がきている
といわれ、エンジニア集めには苦労していないようです。平均年
齢は50歳程度といわれます。
ラピダスは、第1陣の技術者を米IBMの開発拠点であるアル
バニー・ナクテク・コンプレックスに派遣しており、開発業務に
当たっているといっています。このことによってわかることは、
ラピダスと米IBMの関係が非常に緊密であるということであり
GFの訴訟は、ラピダスにも大きな影響を与えます。
アルバニー・ナクテク・コンプレックスとは、ニューヨーク州
アルバニーにあるIBMの先端半導体の研究所のことです。IB
Mは、2015年に半導体の工場と外販の設計チームを別会社に
事業譲渡していますが、先端技術の基礎研究はこの施設で研究開
発を続けているのです。そこでは、IBMの研究員たちが、公共
機関や民間企業のパートナーたちと緊密に、コラボレーションし
ロジック・スケーリングや半導体の能力の限界を超えるために働
いているのです。
現時点においてのラピダスのIBM依存度は、相当高いと考え
るられます。したがって、もし、GFの訴訟においてIBMの動
きに制限が加えられた場合、人材の確保や半導体の生産自体にも
大きな影響が及びます。これらについて、4月21日の日本経済
新聞は次のように報道しています。
─────────────────────────────
ラピダスとIBMが量産を目指す2ナノ品はTSMCやサムス
ンも開発を進めている。2ナノ品では素子構造が従来から大きく
変わる。材料や製造手法も変化し、ラピダスのように最先端品参
入を狙う動きがある。GFについても「提訴を通じて、IBMと
(特許を相互利用する)クロスライセンスを結び、最先端品への
参入の足がかりにするのではないか」との見方もくすぶる。
IBMは「(GFの)申し立ては全く根拠のないものであり、
我々は裁判所が同意すると確信している」とコメントした。ラピ
ダスは「コメントする立場にない」としている。仮にIBMとい
う後ろ盾がなくなった場合、量産化は実現できるのか。先端品の
国産計画はシナリオの複線化も求められている。
──2023年4月21日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
──[メタバースと日本経済/057]
≪画像および関連情報≫
●ラピダスに入り混じる期待と不安
───────────────────────────
近年、様々な面で注目を浴びている半導体業界だが、20
22年も多くのニュースがあった。そのなかの1つが、次世
代半導体の量産を目指す新会社Rapidus(株) (ラピダス/
東京都千代田区)の始動だ。キオクシア(株)、ソニーグル
ープ(株)、ソフトバンク(株)、(株)デンソー、トヨタ
自動車(株)、NEC(日本電気(株))、NTT(日本電
信電話(株))、(株)三菱UFJ銀行といった日本の大手
企業が出資し、2020年代後半に、2nm世代の最先端ロ
ジックファンドリーとして量産することを目指すと発表し、
半導体業界に大きなインパクトを与えた。
国もバックアップする体制を示しており、NEDO(新エ
ネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクト「ポスト5
G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造
技術の開発」を介して、700億円が、ラピダスに助成され
る。この助成金を活用してラピダスは、2nm世代のロジッ
ク半導体技術の開発を行い、国内でTAT(生産の開始から
終了までにかかる時間)が短いパイロットラインを構築し、
テストチップによる実証を行う。22年度については、2n
m世代の要素技術の獲得、EUV露光機の導入着手、短TA
T生産システムに必要な装置、搬送システム、生産管理シス
テムの仕様策定、パイロットラインの初期設計を実施する。
https://bit.ly/41O0ooQ
───────────────────────────
ラピダスが工場建設を決めた工業団地