2023年03月17日

●「アップルがインテルから別れる理由」(第5928号)

 2020年6月22日のことです。当日に開催された開発者向
けのオンラインイベントWWDC(ワールド・ワイド・デベロッ
プメント・カンファレンス)の基調講演で、アップルのティム・
クックCEOは次の宣言をしています。
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 Macの心臓部を、2年かけて、インテル製プロセッサから、
自社設計のSoC「アップル・シリコン」に切り替える。
            ──2020年6月22日/WWDC
─────────────────────────────
 「アップル・シリコン」とは何でしょうか。
 「アップル・シリコン」は「SoC(ソック)」なので、まず
SoCについて知る必要があります。SoCは、シリコンの半導
体チップの上に多くの半導体素子(トランジスタ)を集積して、
CPU、グラフィックス処理ユニットのGPU、メモリーなどを
載せ、システムとして製品化した半導体部品のことです。SoC
は次の言葉の頭文字をとった言葉です。
─────────────────────────────
         ◎SoC/System on Chip
─────────────────────────────
 添付ファイルを見てください。これが「アップル・シリコン」
(M1)です。CPUがファブリックという切り替え装置を介し
て、GPU、DRAM、キャッシュなどと繋がった回路になって
います。
 CPUはARM設計のプロセッサ・コアであり、グラフィクス
・プロセッサ、機械学習に基づくAIの実行エンジンで高度な画
像処理などに使われる「ニューラル・エンジン」などを統合した
アップル自社設計の高度なSoCになっています。コンパクトな
マザーボードのようなものです。
 2005年のことです。その年のWWDCにおいて、アップル
への復帰を果たしたスティープ・ジョブズCEOは、次のように
宣言し、2006年1月に、最初のインテル製Macを出荷して
います。まさに歴史的な出荷といえます。
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 Macのプロセッサを「パワーPC」から、インテルに切り替
える。           ──スティーブ・ジョブスCEO
─────────────────────────────
 「パワーPC」とは、アップル・コンピュータ、IBM、モト
ローラによって開発されたRISCアーキテクチャのマイクロプ
ロセッサのシリーズの名称です。
 これは、当時としては極めて画期的な出来事だっといえます。
なぜなら、アップルとインテル・ウインドウズ連合は対極の関係
であり、アップルがインテルのプロセッサを採用するなど、考え
られなかったからです。なぜ、当時のアップルがインテルのプロ
セッサを採用したのかについて、ITジャーナリストの星暁雄氏
は、そのときの事情について、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 当時のインテルは、世界最高の半導体製造技術を持ち、プロセ
ッサ設計技術でも優れていた。パワーPCやその他のプロセッサ
ではなく、インテルのプロセッサを選んだ方が、Macの競争力
を、少なくとも数年にわたり維持できる。それがインテルに切り
替えた理由だ。
 20年現在のインテルは、半導体市場で世界トップの優良企業
である。だが、05年のインテルとはとは大きな違いがある。現
在のインテルは、半導体製造技術で世界一とは言えなくなってい
るのだ。一方で、TSMCの製造能力は向上し、アイフォーンや
アイパッドのヒットにより、アップル・シリコンの生産規模は大
きくなり、半導体の設計ノウハウも蓄積されている。脱インテル
を実行できる実力を今のアップルは持っているのだ。
 半導体を進化させるということは、微細加工技術を追求してよ
り多くの半導体素子(トランジスタ)をシリコンチップ上に集積
するということだ。つまり「密度」が大事なのだ。かつてのイン
テルはシリコンチップ上に集積する半導体の数を「18カ月で2
倍にする」という苛酷な目標をクリアしていた。この目標は「ム
ーアの法則」と呼ばれている。だが、今やこのペースは達成不可
能となってきた。微細加工を追求した結果、物理的な限界が近づ
き、進化のペースが鈍ってきたのだ。これは、「ムーアの法則の
終焉(しゅうえん)」と呼ばれている。https://bit.ly/3LmJKaK
─────────────────────────────
 星暁雄氏によると、現在のインテルは、ライバル企業に12〜
18カ月遅れている」そうです。インテルのライバル企業とは、
台湾のTSMCと韓国のサムスン電子です。TSMCは、カスタ
ムチップの受託製造に優れ、サムスン電子は、メモリー製造を得
意としています。
 なぜ、インテルがライバル企業に1年以上のつけられてしまっ
たかについては、10ナノメートルプロセスの量産化に遅れたこ
とにあるといわれています。インテルの10ナノメートルプロセ
スである「キャノン・レイク」は、その集積できる半導体素子の
密度は1平方ミリ当たり約1億個程度であるといいます。
 インテルは、「キャノン・レイク」の量産化の時期を公式には
2018年としていますが、実際に市場に出回ったのは2019
年になってからです。ここに1年の差があります。
 しかし、ライバルのTSMCは、インテルのさらに先を行って
います。TSMCは「5ナノメートルプロセス」を量産を、20
20年4月に開始したとされているからです。ちなみに、これは
1平方ミリ当たり約1・7億個のトランジスタの密度をクリアす
ることです。アップル・シリコンは、この5ナノメートルプロセ
スで製造するといわれています。これが、次世代Macやアイフ
ォーンに搭載される予定であるといいます。予定通りに行われれ
ば、2023年には使えるようになるはです。
           ──[メタバースと日本経済/044]

≪画像および関連情報≫
 ●CPUのプロセスルールが小さくなるとどういう原理で何が
  良くなるんでしょう?
  ───────────────────────────
   プロセッサ(CPUやGPUなど)のトランジスタは、C
  MOSといって、2個(以上)のトランジスタが組み合わさ
  ったものになっていて,ON状態にせよOFF状態にせよ、
  どちらかのトランジスタには電気が溜まっている状態になっ
  ています(トランジスタはコンデンサとしての成分を持つた
  め)。そして、ONとOFFが切り替わる瞬間に、片方に溜
  まった電気が流れ、空だったトランジスタに電気が溜まる仕
  組みになっています。この「溜まった電気が流れきって」、
  「もう片方のトランジスタへの蓄電が終了する」までの時間
  が、限界としての最小クロック時間ということになります。
   さて,プロセスルールが小さくなると,トランジスタのサ
  イズが小さくなります。トランジスタが小さくなると、トラ
  ンジスタに生じるコンデンサも小さくなります。コンデンサ
  が小さくなると、「溜まった電気が流れきって」「空だった
  トランジスタへの蓄電が終了する」までの時間も短くなるの
  で、最小のクロック時間を小さくできる(=毎秒あたりのク
  ロック周波数は大きくなる)し、流れる電気の量が減るとい
  うことは発熱も減るので、クロック周波数の増加による発熱
  増大を打ち消すことができます。 https://bit.ly/3YQtL7U
  ───────────────────────────
アップル・シリコン.jpg
アップル・シリコン
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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