2023年03月10日

●「7割のデバイスにARMは入っている」(第5923号)

 結局、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発
に取り組んだ新型ロケット「H3」の打ち上げは失敗に終わって
います。2023年3月7日のことです。
 その発射から機体爆破指令を出すまでの様子について、「日経
ビジネス」誌は、次のように書いています。
─────────────────────────────
 7日午前10時37分。種子島宇宙センター(鹿児島県)から
の発射後、飛行は順調そのものだった。発射直後、すぐに訪れる
難所であり、開発陣が最も神経をとがらせていた第1段主エンジ
ン「LE−9」は予定通り燃焼。LE−9の両脇に位置し、固体
燃料を燃やす補助ロケットブースターも発射から116秒後とい
うドンピシャのタイミングで分離された。その後、LE−9もス
ケジュール通りに燃焼を終えお役御免に。1段目と2段目は正常
に分離された。
 ところが直後に管制室は凍り付く。2段目のエンジンが火を噴
かない。着火のデータが送信されてこない事態に「何が起きたか
よく思い出せないが、呆然(ぼうぜん)となった」(岡田氏)。
刻一刻と時が過ぎる中、「液体水素を載せた危険な機体をこのま
ま飛行させることはできない」(JAXA)と判断、機体を破壊
する指令信号を出した。     ──日経ビジネス電子版より
─────────────────────────────
 今回の打ち上げ失敗で深刻なのは、第2段エンジンが着火しな
かったことです。なぜなら、第2段エンジンは、これまでに打ち
上げられているH2Aとほとんど同じ制御システムが使われてい
るからです。H2Aは、2001年の試験機1号機以来、46回
中45回成功しています。
 今回、ロケットの開発陣にとって心配だったのは、1段目のエ
ンジンのLE−9だったのですが、これは今回成功しています。
しかし、絶対に失敗がないと思われていた第2段エンジンが着火
せず、失敗に終わったことは、爆破で機体が失われているだけに
その点検には相当の時間を要すると思われます。
 世界で宇宙開発競争が激化するなか、これ以上の遅れは、日本
の宇宙産業にとって命取りになります。それに三菱重工は、国産
ジェット機進出でも失敗しており、二重の失敗に相当のダメージ
を受けていると思われます。
 ここで話を「ARM」に戻します。ARMは、現在ソフトバン
ク傘下の英国の半導体設計大手企業です。ARMについては、最
新情報があります。2023年3月4日付、日本経済新聞は次の
ように伝えています。
─────────────────────────────
◎アーム、米で単独上場へ/英市場、地盤沈下浮き彫り
【ロンドン=佐竹実】ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英
半導体設計大手アームは3月3日、米国市場への単独上場を目指
すと発表した。英政府はロンドン証券取引所への誘致を続けてき
たが、新規株式公開(IPO)先としてつなぎ留めることができ
なかった。ハイテク分野の雄の米国上場は、欧州連合(EU離脱
後に低迷する英市場の地盤沈下をさらに印象づける。
 アームのレネ・ハース最高経営責任者(CEO)が3日の声明
で、「2023年に米国単独上場を目指すことが最善の道と判断
した」と表明した。米アップルなど世界のハイテク企業が集まる
米ナスダック市場に絞るとみられる。
        ──2023年3月4日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 なぜ、英国の企業であるARMが英国に上場せず、米国に上場
するのでしょうか。昨年の12月にはスナク首相がハースCEO
と会い、ロンドン市場への上場誘致を行っています。この会談に
は、オンラインで孫正義会長も参加しています。
 しかし、英国市場の上場企業の時価総額の合計は、米国市場の
10分の1以下であり、ARMが英国市場への上場のメリットは
ほとんどないといえます。現在のロンドン市場は英国のEU離脱
によって投資家の多くが離れており、株式取引額でオランダのア
ムステルダム市場に抜かれています。やはり、英国のEU離脱は
間違いだったのです。
 ところで、ARMというのはどのような企業なのでしょうか。
 これについては、アーム株式会社の代表取締役社長である内海
弦氏が、2019年12月11日〜13日に、東京ビックサイト
で行われた「SEMICONジャパン/2019」で講演をされ
たときのスピーチの一部を引用します。SEMICONは、世界
を代表するエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会
のことです。
─────────────────────────────
 世界人口の70パーセントの方たちが使っているデバイスの中
に、私どものマイクロプロセッサが入っています。デバイスとは
何かと言うと、実際には“PC以外の、電子的なものが入ってい
るものすべて”と考えていいと思います。
 実際、年間出荷数としては、200億のデバイスに「ARMプ
ロセッサ」というものが入っておりまして、人口比で言うと1人
3個くらいのプロセッサが、行き渡っているのが実際でございま
す。これは主にスマホで使われています。(中略)
 私どもの場合、総累計の出荷数で言うと1500億個なんです
ね。年間で言うと200億以上の出荷が行われていると。PCな
どは多い多いと言われてますけれども、年間10億未満だと思い
ます。デバイス単体に1つ以上のARMが入っているのを1と数
えていますから、1デバイスに2個以上入っていても1と数えた
うえで、あくまでも半導体のデバイス、パッケージの数で、年間
200億個以上が私どもARMのプロセッサを使って出荷されて
いるのが現状でございます。  ──内海弦ARM株式会社社長
                  https://bit.ly/3YzunPb
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/039]

≪画像および関連情報≫
 ●NVIDIAによるArm買収の破談、その間にRISC-Vの足音が
  ───────────────────────────
   2020年9月にNVIDIAによるARMの買収が発表
  されてから、各国の規制当局が審査を行っていたが、どこも
  厳しい結果になりそうと報道されていた。この暗雲たなびい
  ていたNVIDIAによるソフトバンクグループ傘下のAR
  Mの買収が、ついに取りやめとなった。
   2022年2月8日にNVIDIAとソフトバンクグルー
  プによる契約解消のプレスリリースが出ている。今後はAR
  Mの株式上場を目指すそうである。
   プレスリリース文を読めば、両者の間に対立が生じたわけ
  でなく、依然両者の関係は良好と読める。今後はARMの株
  式上場を目指すそうである。NVIDIAがソフトバンクグ
  ループに支払った先払い金は返金されることなく、ソフトバ
  ンクグループおよびファンドの利益として計上されるとのこ
  とだ。その代わりNVIDIAは20年の間、ARMを使え
  る権利を得たらしい。
   解消に至った理由は、「規制上の大きな課題」と書かれて
  いる。詳しいことは書かれていない。ことここに至って原因
  をあれこれ探っても後の祭りである。しかし、あえて妄想た
  くましく、やじ馬根性で考えるに、主要国の規制当局、そし
  て買収の影響をモロにかぶることになる半導体各社を見渡し
  て、賛成しそうな組織が見当たらなかったのが原因だろう。
                  https://bit.ly/41Vgf5z
  ───────────────────────────
内海弦/アーム株式会社社長.jpg
内海弦/アーム株式会社社長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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