2023年03月07日

●「ビヨンド2ナノ/達成は可能か」(第5920号)

 2021年のことです。この頃からコロナ禍が拡大・深刻化し
自動車メーカーの生産ラインが、半導体不足のため、一時的にス
トップしたりする事態が起きるようになり、それが日本経済にも
深刻なダメージを与えつつあったのです。
 2021年5月、自民党は「半導体戦略推進議員連盟」を立ち
上げています。鉄鋼、電力、輸送などインフラ関連でも半導体の
需要はうなぎ上りに増えており、世界の先端技術に追いつくため
には「オールジャパン」で取り組まざるを得ないという認識が醸
成されてきたからです。
 この議連で事務局長を務める衆院議員の関芳弘氏は、その設立
狙いについて次のように述べています。
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 世界中で半導体が不足しており、自動車などの最終製品を作る
業界が困っている。まずはそれを解消する必要がある。加えて、
日本の劣勢を挽回するチャンスを今迎えている。半導体の世界で
は、微細化に代わる将来技術の研究が進んでおり、ゲームチェン
ジが起きようとしている。日本が各国と同じスタートラインに立
つことができ、半導体生産で復活を狙えるタイミングだ。
 もう一つは経済安全保障の観点。世界のトップの国々において
は、今後、AI(人工知能)や量子コンピューター、5Gなどの
通信システムが競争力の根源になる。それらに深く関わってくる
半導体については、西側諸国、特にアメリカとしっかりと組んで
作り上げておかないといけない。
 こうした流れを考えると、民間に任せるだけでなく政府の後押
しがいる。アメリカ、ヨーロッパともに半導体産業の支援に動い
ている。日本も同じ西側諸国の共同体として予算を確保すべき。
そこで議連は、官民合わせて10年で10兆円規模の投資が半導
体産業には必要だと提言した。    https://bit.ly/3JawZi2
─────────────────────────────
 とくに重要なのは「経済安全保障の観点」です。ロシアによる
ウクライナ侵攻により、米国は第3極の中心的存在である中国を
「警戒が必要ない第3極」から「警戒が必要な第3極」に位置づ
けを変えています。
 2022年8月9日、米バイデン大統領は、半導体の生産や研
究開発に527億ドル(約7兆5000億円)を超える補助金を
投ずる「CHIPS法」に署名し、法案を成立させています。中
国に対抗する狙いがあり、バイデン大統領は「この分野で再び世
界をリードする」と宣言しています。
 このCHIPS法の支援を受ける半導体企業の目標は、ロジッ
ク半導体の製作であり、「ビヨンド2ナノ」を目指します。この
法律成立と同時に、今後10年間、28ナノ以降の半導体製造に
かかわる中国向け投資の禁止を発表しています。
 日本もこれを受けて、CHIPS法の成立の翌日の2022年
8月10日に、「ラピダス/Rapidus」 株式会社を設立していま
す。トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC
ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が総額73億
円を出資しています。代表取締役社長は、ウエスタンデジタル日
本法人の社長を務めた小池淳義氏、取締役会長に東京エレクトロ
ン前社長の東哲郎氏が就任しています。まさに、オールジャパン
による半導体生産の復活の狼煙の立ち上げです。
 経済産業省は、5月に合意した日米の半導体協力基本原則に基
づいた両国間での共同研究を見据え、次世代半導体研究を行う組
織として「最先端半導体技術センター(LSTC)」を設立する
ことを決定しています。これにより研究開発拠点としてのLST
C、将来的な量産製造拠点としてのラピダスの両輪で、日本の次
世代半導体量産基盤の構築を目指すことになります。
 2022年10月3日、第210回国会において、岸田首相は
所信表明演説において、次のように述べています。
─────────────────────────────
 産業のコメと言われ、大きな経済効果、雇用創出が見込まれ、
経済安全保障の要でもある半導体は、今後特に力を入れていく分
野です。熊本に誘致したTSMCの半導体工場は、地域に10年
間で4兆円を超える経済効果と、7000人を超える雇用を生む
と試算されています。我が国だけでも、10年間で10兆円増が
必要とも言われるこの分野に、官民の投資を集めていきます。
 今回の総合経済対策では、中核となる日米共同での次世代半導
体の技術開発・量産化や、ビヨンド5Gの研究開発など、最先端
の技術開発強化を進めます。 ──岸田首相の所信表明演説から
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 EUも負けていません。EUは、2022年11月末に半導体
の開発支援のために、公的資金110億ユーロを投資します。そ
の他、公共と民間合わせて430億ユーロ(約6兆円)を投資す
ることが決まり、12月の閣僚理事会で承認されています。
 実現するのは2023年になりますが、インテル、STマイク
ロエレクトロニクス、インフィニオン、グローバルファンドリー
ズなどの半導体メーカーは、この補助金を当てにして、EUで新
工場の建設を計画しています。
 ところで、「先端半導体」とは、ロジック半導体といい、スマ
ホなどにも使われていて、電子機器の頭脳としての役割を果たし
ています。スマホやデータセンター向けでは、回路の幅が5ナノ
メートルから16ナノメートル程度の製品が主流であり、この分
野では、台湾のTSMCや韓国のサムソン、米国のインテルが先
行しており、日本は大きく遅れています。
 「ナノ」というのは、1ミリメートルの100万分の1が「ナ
ノメートル」であり、数字が低ければ低いほど、微細な回路とい
うことになります。「ビヨンド2ナノ」とは、2ナノ以下の微細
化を目指すという意味であり、このレベルの半導体は、TSMC
とサムソンが競って製作しています。半導体については、もっと
詳しく知る必要があります。
           ──[メタバースと日本経済/036]

≪画像および関連情報≫
 ●経産省主導の半導体会社「ラピダス」成功の鍵を孫正義社長
  が握るワケ
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   次世代半導体の新会社「ラピダス」が話題だ。メディアで
  は「失敗するに決まっている」「経産省主導でうまくいくわ
  けがない」と早くも非難轟々だ。確かに今からTSMCやサ
  ムスン電子と戦うにはあまりに遅すぎる感は否めない。
   日本政府がラピダスを立ち上げる背景には安全保障の問題
  も大きい。中国情勢によって、台湾に半導体を依存するのは
  あまりに不安だ。そこで日本でも半導体を製造できるような
  環境を整備するというのは理解できる。ただ、現状、半導体
  ビジネスは中国市場なくしては回らない。
   先週、ハワイ・マウイ島で「SnapdragonSummit」が開
  催されたが、基調講演は午後1時からと中国市場でオンライ
  ン視聴しやすい時間帯が設定されていた。今週、東京・五反
  田でメディアテックの記者説明会が開催されたが、フラグシ
  ップスマートフォン向けチップで、メディアテックのシェア
  が大幅に伸びている点がアピールされた。メディアテックと
  いえばエントリーやミドルクラス向けというイメージが強い
  が、着々とフラグシップ向けにもシェアを拡大しているのだ。
   中国メーカーには、OPPOやシャオミ、Vitoといっ
  た世界的に販売台数を稼ぐメーカーが多い。自社でチップを
  手がけるアップルやサムスン電子以外に、チップを買っても
  らうには、中国メーカーへの販売は避けて通れないのだ。
                  https://bit.ly/3SNSs3q
  ───────────────────────────
ビヨンド2ナノ.jpg
ビヨンド2ナノ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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