い日本が、持ち前の技術力を発揮し、現在世界で急速に進行しつ
つあるデジタル化の変化に便乗し、メタバースなどを積極的に活
用しながら、経済の復活が図れないか検討するのが目的です。
しかし、三菱重工の国産ジェット旅客機からの撤退など、日本
の持ち前の技術力が揺らいでいることや、足元の急激な円安・ド
ル高によって日本の国力が弱体化しつつあるなど、日本経済の真
の回復にはほど遠いのが現状であるといえます。
2023年2月19日付の日本経済新聞は、次のようなショッ
キングなニュースを伝えています。
─────────────────────────────
◎名目GDP、ドイツが肉薄/日本世界3位危うく
日本が維持してきた国内総生産(GDP)で世界3位という地
位が危うくなってきている。長引くデフレに足元の急激な円安・
ドル高が加わり、ドル換算した名目GDPで世界4位のドイツと
の差が急速に縮まっている。世界最大の人口大国になったもよう
のインドも猛追しており、世界経済で日本の存在感はしぼみつつ
ある。 ──2023年2月19日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
日本が西ドイツ(当時)のGNP(国民総生産)を抜いたのは
1968年のことです。そして、2002年には、日本の名目G
DPはドイツの2倍あったのです。以下、2002年と2022
年とを比較してみます。
─────────────────────────────
◎ドル建てGDPによる比較/2002年
日 本 ・・・ 4兆1800億ドル
ドイツ ・・・ 2兆0800億ドル
◎ドル建てGDPによる比較/2022年
日 本 ・・・ 4兆2300億ドル
ドイツ ・・・ 4兆0600億ドル
──2023年2月19日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
なお、この数値は、日本とドイツの名目GDPに年平均の為替
レートをかけあわせて比較しています。20年前の2002年の
場合、日本の名目GDPは、ドイツの2倍以上の規模があったの
ですが、20年後、ドイツは2倍に膨らんだのに、日本はたった
の1%しか増えていないのです。
この20年間、米国の名目GDPも2倍以上に増えて、25兆
ドルで世界第1位の地位を固め、12倍になった中国が18兆ド
ルで第2位を占めています。このように見ると、日本の不甲斐な
さが明らかになっています。日本とドイツの内訳を見ると、次の
ようになります。
─────────────────────────────
◎日本とドイツ/内訳の比較
日 本/実質GDP ・・・ 1・1倍
物価 ・・・ −6%
為替レート ・・・ −5%
ドイツ/実質GDP ・・・ 1・3倍
物価 ・・・ 1・4倍
為替レート ・・・ 10%
──2023年2月19日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
日本のGDPがドイツに抜かれ、日本はGDP世界第3位に転
落する──これは、日本にとってきわめて屈辱的なことです。な
ぜ、屈辱的かというと、日本の人口は1億2462万人、ドイツ
のそれは8336万人であり、日本の方がドイツよりも1・5倍
多いからです。
現在、GDPで日本の上位にいる中国の人口は14億1196
万人、GDPトップの米国のそれは3億3390万人であり、い
ずれも日本とは比較にならない人口差です。しかし、ドイツより
も、1・5倍の人口を有する日本がドイツに抜かれるということ
は、それは日本にとって相当ショッキングな出来事になります。
経済成長を生み出す要因は何かというと、次の3つであるとい
われています。
─────────────────────────────
@ 労働力
A 資本
B全要素生産性
─────────────────────────────
Bの「全要素生産性」とは、@の「労働力」やAの「資本」と
いった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因のことで、技
術進歩や生産の効率化などがそれに該当します。TFPと呼ばれ
ますが、Total Factor Productivity の省略形です。
一般的に、Bは容易に変化しないので、量的な生産要素である
@で決まるものですが、日本とドイツの場合、人口の多い日本が
優位であるにも関わらず、ドイツに抜かれるということは、日本
が@とAの劣化が激しいということになります。
みずほ銀行チーフ・マーケットエコノミストである唐鎌大輔氏
は、2023年の為替次第では、ドイツの日本逆転は、2023
年中にもあり得るとして、次のように述べています。新日銀総裁
のうでの見せどころであるといえます。
─────────────────────────────
日本のドイツに対するリードに関し、22年は、+6・7%、
23年は+6・0%、24年は+5・3%と縮小していく見通し
であることに振れた。ということは、他の条件が全て一定とした
場合、23年中に円が対ドルで▲6・0%下落するか、ユーロが
対ドルで+6・0%上昇すれば、ドル建てGDPに関し日本はド
イツと同等の規模になる。 https://bit.ly/3xDSNM8
─────────────────────────────
──[メタバースと日本経済/027]
≪画像および関連情報≫
●日本のGDP、今年にもドイツに抜かれ4位転落の恐れ
産経新聞
───────────────────────────
米中に次ぎ世界第3位の日本の名目国内総生産(GDP)
が、経済の長期停滞などを受けて早ければ2023年にもド
イツに抜かれ、4位に転落する可能性が出てきた。近年の円
安に伴うドルベースの経済規模の縮小に加え、「日本病」と
も揶揄(やゆ)される低成長が経済をむしばんだ結果だ。専
門家は企業の労働生産性や国際競争力を高める政策をテコ入
れしなければ、遅くとも5年以内には抜かれる可能性が高い
と警鐘を鳴らす。
経済規模の国際比較に用いられる名目GDPは、国内で生
産された財・サービスの付加価値の総額だ。物価変動の影響
を取り除いた実質GDPに比べて、より景気実感に近いとさ
れる。国際通貨基金(IMF)の経済見通しでは、22年の
名目GDP(予測値)は、3位の日本が4兆3006億ドル
(約555兆円)なのに対し、4位のドイツは4兆311億
ドルで、ドイツが約6・7%増えれば逆転することになる。
IMF予測では23〜27年も辛うじて逆転を免れるもの
の23年時点(予測値)でその差は約6・0%に縮小する。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストの試算では
仮に今年のドル円相場が年間平均で1ドル=137円06銭
より円安に振れれば順位が入れ替わる計算という。
https://bit.ly/3IC11en
───────────────────────────
経済規模トップ5カ国は20年で変化