2023年02月21日

●「日本のGDPがドイツに抜かれる!」(第5911号)

 今回のテーマは、依然としてデフレから完全に脱却できていな
い日本が、持ち前の技術力を発揮し、現在世界で急速に進行しつ
つあるデジタル化の変化に便乗し、メタバースなどを積極的に活
用しながら、経済の復活が図れないか検討するのが目的です。
 しかし、三菱重工の国産ジェット旅客機からの撤退など、日本
の持ち前の技術力が揺らいでいることや、足元の急激な円安・ド
ル高によって日本の国力が弱体化しつつあるなど、日本経済の真
の回復にはほど遠いのが現状であるといえます。
 2023年2月19日付の日本経済新聞は、次のようなショッ
キングなニュースを伝えています。
─────────────────────────────
◎名目GDP、ドイツが肉薄/日本世界3位危うく
 日本が維持してきた国内総生産(GDP)で世界3位という地
位が危うくなってきている。長引くデフレに足元の急激な円安・
ドル高が加わり、ドル換算した名目GDPで世界4位のドイツと
の差が急速に縮まっている。世界最大の人口大国になったもよう
のインドも猛追しており、世界経済で日本の存在感はしぼみつつ
ある。    ──2023年2月19日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 日本が西ドイツ(当時)のGNP(国民総生産)を抜いたのは
1968年のことです。そして、2002年には、日本の名目G
DPはドイツの2倍あったのです。以下、2002年と2022
年とを比較してみます。
─────────────────────────────
     ◎ドル建てGDPによる比較/2002年
      日 本 ・・・ 4兆1800億ドル
      ドイツ ・・・ 2兆0800億ドル
     ◎ドル建てGDPによる比較/2022年
      日 本 ・・・ 4兆2300億ドル
      ドイツ ・・・ 4兆0600億ドル
       ──2023年2月19日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 なお、この数値は、日本とドイツの名目GDPに年平均の為替
レートをかけあわせて比較しています。20年前の2002年の
場合、日本の名目GDPは、ドイツの2倍以上の規模があったの
ですが、20年後、ドイツは2倍に膨らんだのに、日本はたった
の1%しか増えていないのです。
 この20年間、米国の名目GDPも2倍以上に増えて、25兆
ドルで世界第1位の地位を固め、12倍になった中国が18兆ド
ルで第2位を占めています。このように見ると、日本の不甲斐な
さが明らかになっています。日本とドイツの内訳を見ると、次の
ようになります。
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     ◎日本とドイツ/内訳の比較
      日 本/実質GDP ・・・ 1・1倍
             物価 ・・・  −6%
          為替レート ・・・  −5%
      ドイツ/実質GDP ・・・ 1・3倍
             物価 ・・・ 1・4倍
          為替レート ・・・  10%
       ──2023年2月19日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 日本のGDPがドイツに抜かれ、日本はGDP世界第3位に転
落する──これは、日本にとってきわめて屈辱的なことです。な
ぜ、屈辱的かというと、日本の人口は1億2462万人、ドイツ
のそれは8336万人であり、日本の方がドイツよりも1・5倍
多いからです。
 現在、GDPで日本の上位にいる中国の人口は14億1196
万人、GDPトップの米国のそれは3億3390万人であり、い
ずれも日本とは比較にならない人口差です。しかし、ドイツより
も、1・5倍の人口を有する日本がドイツに抜かれるということ
は、それは日本にとって相当ショッキングな出来事になります。
 経済成長を生み出す要因は何かというと、次の3つであるとい
われています。
─────────────────────────────
           @   労働力
           A    資本
           B全要素生産性
─────────────────────────────
 Bの「全要素生産性」とは、@の「労働力」やAの「資本」と
いった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因のことで、技
術進歩や生産の効率化などがそれに該当します。TFPと呼ばれ
ますが、Total Factor Productivity の省略形です。
 一般的に、Bは容易に変化しないので、量的な生産要素である
@で決まるものですが、日本とドイツの場合、人口の多い日本が
優位であるにも関わらず、ドイツに抜かれるということは、日本
が@とAの劣化が激しいということになります。
 みずほ銀行チーフ・マーケットエコノミストである唐鎌大輔氏
は、2023年の為替次第では、ドイツの日本逆転は、2023
年中にもあり得るとして、次のように述べています。新日銀総裁
のうでの見せどころであるといえます。
─────────────────────────────
 日本のドイツに対するリードに関し、22年は、+6・7%、
23年は+6・0%、24年は+5・3%と縮小していく見通し
であることに振れた。ということは、他の条件が全て一定とした
場合、23年中に円が対ドルで▲6・0%下落するか、ユーロが
対ドルで+6・0%上昇すれば、ドル建てGDPに関し日本はド
イツと同等の規模になる。     https://bit.ly/3xDSNM8
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/027]

≪画像および関連情報≫
 ●日本のGDP、今年にもドイツに抜かれ4位転落の恐れ
  産経新聞
  ───────────────────────────
   米中に次ぎ世界第3位の日本の名目国内総生産(GDP)
  が、経済の長期停滞などを受けて早ければ2023年にもド
  イツに抜かれ、4位に転落する可能性が出てきた。近年の円
  安に伴うドルベースの経済規模の縮小に加え、「日本病」と
  も揶揄(やゆ)される低成長が経済をむしばんだ結果だ。専
  門家は企業の労働生産性や国際競争力を高める政策をテコ入
  れしなければ、遅くとも5年以内には抜かれる可能性が高い
  と警鐘を鳴らす。
   経済規模の国際比較に用いられる名目GDPは、国内で生
  産された財・サービスの付加価値の総額だ。物価変動の影響
  を取り除いた実質GDPに比べて、より景気実感に近いとさ
  れる。国際通貨基金(IMF)の経済見通しでは、22年の
  名目GDP(予測値)は、3位の日本が4兆3006億ドル
  (約555兆円)なのに対し、4位のドイツは4兆311億
  ドルで、ドイツが約6・7%増えれば逆転することになる。
   IMF予測では23〜27年も辛うじて逆転を免れるもの
  の23年時点(予測値)でその差は約6・0%に縮小する。
  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストの試算では
  仮に今年のドル円相場が年間平均で1ドル=137円06銭
  より円安に振れれば順位が入れ替わる計算という。
                  https://bit.ly/3IC11en
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経済規模トップ5カ国は20年で変化.jpg
経済規模トップ5カ国は20年で変化
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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