2つの問題点を再現します。
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1.日本銀行は本当に政府の子会社であるかどうか
→ 2.日本銀行が半分相当の国債を持つとなぜ安心か
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続いて「2」について考えます。
「統合政府」という考え方があります。政府と中央銀行(日本
では日本銀行)を一体化したものを「統合政府」といい、国の財
政状況は統合政府として考えるべきであるという考え方です。
この「統合政府」の考え方について、鈴木財務相は、2022
年3月16日の参院財政金融委員会において、次のように反対意
見を述べています。
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日銀は、政府から独立して金融政策を行っているにもかかわら
ず、日銀が永久に国債を保有し、結果的に財政ファイナンスを行
うと誤解される恐れがあるため、財政を統合政府で考えるのは適
切でない。 ──鈴木財務相
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現在、日銀は安倍元首相によるアベノミクス政策の推進によっ
て政府の借金である国債の50%以上を保有しています。これは
統合政府の考え方に立つと、子会社が親会社の債務を負っている
に過ぎないことになります。
したがって、政府と日銀を統合した連結財務諸表を作れば、親
会社の債権・債務が相殺されてしまいます。これによって政府債
務は激減し、その結果、日本の財政は危機的ではなくなり、逆に
財政余力が生じることになります。このように、統合政府によっ
て、政府と中央銀行が連結財務諸表を作ることは、世界の常識に
なっています。
そのため、ノーベル経済学賞受賞経済学者、ジョセフ・スティ
グリッツ教授が来日したときに、「政府や日銀が保有する国債を
相殺すると、日銀の資産である国債が相殺される」という発言を
したのです。高橋洋一氏によると、スティグリッツ教授のいった
「相殺する」という言葉は、英文の原資料では「cancelling」と
いう英語をなっていたそうです。
しかし、会社法上の親子会社が連結財務諸表で一体に評価でき
るのは、その親子会社の目指す目的が一致していることが条件に
なります。しかし、政府と日銀はその目指すものが異なります。
政府と日銀の目指すものとは次の通りです。
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@政府の目的は、国民の生活水準向上のために、福祉、公共投
資、教育、防衛などの歳出を行うことである。
A中央銀行の最大の目的は、国民が生活するうえで絶対に欠か
せない通貨の価値を安定化させることである。
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第2次安倍政権が発足した2013年は、日本経済はデレフの
状況にあったといえます。デフレとは、通貨の価値が強すぎる状
況であり、日銀としては、デフレを克服するには、通貨を増加さ
せることによって、通貨を弱める必要があります。一方政府とし
ては「デフレから脱却する」ためには、継続的に、大規模な財政
出動をする必要があります。
したがって、「デフレから脱却する」という局面においては、
政府と日銀の目的は、ある程度一致しているといえます。すなわ
ち、政府がアベノミクスを掲げて、デフレ克服に取り組む局面に
おいては、統合政府は説得力を持つことができるといえます。
しかし、インフレが懸念される状況になると、事情が変わって
きます。インフレが激しくなると、通貨価値は棄損され、国民生
活を混乱に陥れます。日銀としては、通貨価値の安定を図るため
に、膨張する政府の財政を監視する役割を担うことになります。
この段階において、政府と日銀の目指す目的が異なってきます。
そうなってくると、統合政府の考え方は説得力を失いつつあると
いえます。現在はそういう状況に近づきつつあるといえます。ま
さしくこの時期において、日銀の黒田東彦総裁は退任し、3月に
は新総裁が着任することになります。
統合政府の危うさを指摘する声も多くあります。金融PLUS
の金融グループ次長の石川潤氏は、統合政府について、次の指摘
をしています。
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日銀が国債を買えば買うほど統合政府の負債から国債は消えて
無利子の日銀券や超低金利の当座預金に置き換わる。日銀が買っ
てくれる限り、国債発行を増やしても問題ないという発想はここ
から生まれてくる。
だが、こうした発想はかなり危ういといえる。日銀はコストな
しにお金を生み出せるとみられがちだが、これは利子の付かない
日銀券の発行などに限った話。現在、日銀の負債は日銀券120
兆円に対し、当座預金が550兆円程度ある。
当座預金は民間銀行が国債などを日銀に売った見返りとして受
け取ったお金の積み上がりなどで、日銀の国債保有が増えるにし
たがって膨らんできた。民間銀行に支払う当座預金の金利はいま
でこそ極めて低いが、日銀が利上げに動く局面では、政策金利と
同じように上がっていく。
日銀が国債を買い続けても、言い換えれば、統合政府の負債が
国債から当座預金に置き換わっても、負担はなくならない。むし
ろ、負債が長期の国債から短期の当座預金に置き換わることで、
将来の金利上昇局面で負担が膨らみやすくなる。
https://s.nikkei.com/3X90rsB
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実際の統合政府のバランスシートについては、来週のEJで詳
細をご紹介することにします。
──[メタバースと日本経済/015]
≪画像および関連情報≫
●過大債務の実態は不変/銀行課税リスクは避けられない
スティグリッツ教授の「日銀保有国債の無効化」提案
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ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授が、20
17年3月14日の経済財政諮問会議に出席して行ったプレ
ゼンテーションが反響を呼んでいる。スティグリッツ教授の
提案の狙いを考察し、その実現方法と効果(副作用)を検討
してみる。これは『金利と経済』でも触れた「統合政府とい
う観点から財政コストを考える」点の応用問題ともいえる。
スティグリッツ教授のプレゼンテーションに関して公表さ
れた資料をみると、最終的な結論部分には、下記のように記
されている。
・金融政策は限界に到達しており、日本は成長に悪影響を及
ぼすことなく必要な税収を得るため、炭素税を導入する必
要がある。
・最も重要なのは構造政策―イノベーションにおけるリーダ
ーシップを日本が取り戻すために必要な政策を含む。
・世界第2位の民主主義国家として、世界は、来る数年間の
日本のリーダーシップを特に必要とするだろう。
プレゼンテーション資料全体の流れをみても、スティグリ
ッツ教授の従来の持論でもある炭素税の導入が関心の中心で
あることがわかる。しかし、メディアが大きく報道したのは
必ずしも炭素税導入ではなかった。たとえば、ブルームバー
グは「スティグリッツ教授:政府・日銀保有国債の無効化主
張−諮問会議」という見出しで今回のプレゼンテーションを
報道した。 https://bit.ly/3YaVu3d
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鈴木俊一財務相