2023年01月11日

●「日本にも誇るべき『世界一』がある」(第5889号)

 年末から年始にかけて、メディアが取り上げたのは、「安い日
本」「堕ちる!ニッポン」「買い負けする日本」など、どちらか
というと、日本にとって暗い話題ばかりです。
 国の問題点を指摘するのは悪いことではありませんが、あまり
自虐的になるのは考えものです。日本にもまだ「世界一」といわ
れるものがあるからです。
 しかし、それを説明するのは必ずしも簡単ではありません。な
ぜなら、そのためには、現在、日本が、経済的にどのようなポジ
ションにあるのかについて知る必要がありますが、それを理解す
るには、いくつかの難解な経済の専門用語の意味を知る必要があ
るからです。
 「有事の円」という言葉を聞いたことがありませんか。「円は
安全資産」という言葉はどうでしょうか。
 これについて、みずほ銀行チーフマーケットエコノミストの唐
鎌大輔氏は、近著で次のように説明しています。
─────────────────────────────
 為替市場で円が安全資産と呼ばれてきた最大の理由は、多額の
経常黒字を安定的に稼ぎ、結果として、「世界最大の対外純資産
国」というステータスを保持していたことにあった。これは言い
換えれば、「世界で最も外貨建ての純資産を有する国」であり、
「有事の際にはそれだけ外貨売りを行って時間稼ぎをする余裕が
ある」という解釈にもなる。実際、対外純資産には売却が難しい
資産も多く含まれているはずだが、少なくとも世界に多くの通貨
が存在するなか、「相対的に防衛能力が高そうな通貨」であるこ
とは事実である。世界最悪の政府債務残高やハイペースで進む少
子化、結果としての低成長などにもかかわらず円や日本国債が安
定してきた背景に、そうした「鉄壁の需給環境」への信頼があっ
たことは論をまたない。──唐鎌大輔著/日経プレミアシリーズ
              『「強い円」はどこに行ったか』
─────────────────────────────
 「日本は世界最大の債権国である」──このようにいったら、
信じますか。
 そもそも「債権国」とは何でしようか。
 債権国とは、対外債権が債務を上回っている国をいい、逆に債
務超過の国を債務国といいます。日本は、1980年代に入り、
巨額の経常収支黒字を続けた結果,対外債権が累積し,1985
年以降、世界最大の債権大国となっています。
 それでは、米国はどうなのでしょうか。
 米国は、1975年には1400億ドル以上の債権を保有して
いましたが、その後、経常収支の赤字が続いたため、1985年
には債務国になり、1980年代末からは有史上最大の債務国に
転落しています。つまり、米国は、他国から最もたくさんお金を
借りている国ということになります。しかも、その債務は現在も
増え続けています。
 それなら、米国はなぜ破綻せず、繁栄しているのでしょうか。
これは実に興味あるテーマです。このテーマについては、改めて
取り上げることとして、ここでは昨年6月に公表された2022
年度の対外純資産の世界ベスト4を日本円で比較すると、次のよ
うになります。
─────────────────────────────
      ◎2022年対外純資産ベスト4
      1位/日 本 ・・・ 411兆円
      2位/ドイツ ・・・ 315兆円
      3位/香 港 ・・・ 242兆円
      4位/中 国 ・・・ 226兆円
                  https://bit.ly/3IzFCms
─────────────────────────────
 2022年度(2021年末)の日本の対外純資産の正確な数
値は、前年比15・8%増の411兆1841億円になります。
1年で56・1兆円増加し、その増加幅は過去最大です。世界2
位のドイツとの差は、100兆円近くまで開き、31年連続の世
界最大の対外純資産国のステータスを維持しています。
 「国際収支の発展段階説」という考え方があります。1950
年代に、英国の経済学者ジェフリー・クローサーと米国の経済学
者チャールズ・キンドルバーカーによって提唱された概念です。
簡単にいうと、一国が債務国から債権国へと発展する段階を国際
収支の観点から6段階に分けて定義づける考え方です。
─────────────────────────────
          @未成熟な債務国
          A成熟した債務国
          B  債務返済国
          C未成熟な債権国
          D成熟した債権国
          E債権取り崩し国
─────────────────────────────
 上記6つのうち、@〜Cまでを以下に簡単にメモしておくこと
にします。DとEは明日のEJで取り上げます。
 @「未成熟な債務国」──新興国は経済力が弱く、輸出は低水
準、多くのものを輸入しなければならないから貿易収支は赤字、
海外からの所得収支も赤字。したがって、全体収支である経常収
支も赤字。
 A「成熟した債務国」──国内産業が発達し、輸出が増加。輸
入を上回って貿易収支は黒字化。しかし、借金が残っているので
経常収支は赤字のままで、債務国を脱出できない。
 B「債務返済国」──経済力がさらに向上すると、貿易黒字が
一層拡大。経常収支も黒字化するので、本格的な借金返済ができ
るようになる。
 C「未成熟な債権国」──仕事が増えて、給与が上がり、借金
を返済して貯蓄や投資ができるようになる。
           ──[メタバースと日本経済/005]

≪画像および関連情報≫
 ●31年連続「世界最大の対外純資産国」はほぼ円安効果
  経常黒字減でドイツと逆転の日が近づいて・・・
  ───────────────────────────
   財務省が最新(2021年末現在)の「本邦対外資産負債
  残高の状況」を公表。NHKや日本経済新聞など代表的なメ
  ディアが、日本の「対外純資産」が400兆円を超えて過去
  最大になったと報じた。
   対外純資産とは、日本国内の企業や個人、政府が海外に持
  つ資産額から負債額を引いたもの。巨大な対外純資産の存在
  は、国内への投資機会が乏しかった(あるいは魅力がなかっ
  た)ことの裏返しでもあり、過去最大を記録したからと言っ
  て必ずしも喜ばしい話ではない。
   とは言え、日本政治・経済の弱体化が指摘される昨今、円
  の価値が底割れに至らないのはこの巨大な対外純資産のおか
  げというのも一面の真理だろう。
   具体的な数字を見ると、対外純資産残高は前年比15・8
  %増の411・1兆円と2年ぶりに増加した。1年で56・
  1兆円という増加幅も過去最大。世界2位のドイツとの差は
  100兆円近くまでに開き、31年連続「世界最大の対外純
  資産国」のステータスを維持した。しかし、56・1兆円と
  いう増加分の内訳をみると、若干の不安もよぎる。「取引フ
  ロー」要因で増えたのは10・7兆円。後は資産価格の変動
  によるもので、「為替相場変動」要因が62・2兆円の増加
  「その他調整」要因が、116・8兆円の減少だった。
                  https://bit.ly/3ZloXZt
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唐鎌大輔氏.jpg
唐鎌大輔氏


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
1月12日以降の記事が届かないのですが、
配信されていないのでしょうか。
コロナがはやっているので、心配しています。
先生からは、非常に多くの有益な情報を日々戴いて
感謝しております。
私も日本の財政問題に関心を持ち、論考も書いています。
また、配信される日を心待ちにしています。
Posted by 若月 昇 at 2023年01月18日 11:25
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