2023年01月10日

●「日銀『だまし討ち』の真相を推理する」(第5888号)

 日本銀行の黒田総裁は、なぜ、長期金利の変動幅の引き上げを
行ったのでしょうか。この話には、ウラがあると思います。1月
6日の話の続きです。
 黒田日銀総裁が就任以来やってきたことを振り返ってみること
にします。黒田東彦氏が日銀の総裁に就任したのは、2013年
4月のことです。「脱デフレ」を政策に掲げる故安倍晋三首相に
請われての就任です。黒田総裁は、安倍首相の要請に応えて、国
債を買って金融市場に資金を大量に供給する「異次元金融緩和」
を開始します。その目的は、消費者物価の対前年上昇率を2%に
することです。しかし、ことは簡単ではなかったのです。
 2016年には、短期金利をマイナスに設定するマイナス金利
を導入し、長期金利を0%前後に抑える金利コントロール政策を
はじめます。しかし、日銀の保有する国債が2022年9月末時
点には、発行残高の50・26%に積み上がってしまっても、日
銀は目標の消費者物価の対前年上昇率2%には到達できず、岸田
政権になっても、政府は脱デフレ宣言ができないでいます。
 それでは、なぜ日銀は、市場から「だまし討ち」といわれるこ
とがわかっているのに、長期金利の変動幅の引き上げを行ったの
でしょうか。その理由は2つあります。
─────────────────────────────
   @市場が機能不全状態に陥る兆候があらわれたこと
   A円安対応で苦慮する官邸からの要望があったこと
─────────────────────────────
 @の市場の機能不全とは何のことでしょうか。
 これについては、1月7日付の日本経済新聞に関連記事が掲載
されています。
─────────────────────────────
◎国債、強まる買い手不在/長期金利日銀上限の0.5%到達
 長期金利が6日、日銀が上限とする0・5%に達した。7年半
ぶりの高水準で、日銀が2022年12月20日に長期金利の上
限を0・5%に引き上げてから初の上限到達となった。日銀が、
再び政策修正に動けば、長期金利が上昇(債券価格は下落)する
との警戒から、国債は、日銀以外の買い手が付きにくくなってい
る。市場機能が一段と低下し、企業の資金調達にも支障が出かね
ない。       ──2023年1月7日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 10年物国債(10年債)といえば、長期金利の指標になる国
債ですが、実は、その国債が、昨年の秋以降、業者間取引で売買
が成立しない日が多くなっていたのです。日銀はこれを市場の機
能不全状態であると判断し、長期金利の変動幅の引き上げに動い
たのです。
 上記の日本経済新聞の記事でも10年債に買い手がつかないこ
とを伝えていますが、これは1月17日と18日に控える日銀の
金融政策決定会合で、日銀がさらなる長期金利の変動幅の引き上
げを行うのではないかという市場関係者の疑心があるからです。
なぜなら、1月6日には、日銀が長期金利の上限とする0・5%
に既に達しているからです。
 つまり、市場関係者は、日銀が、6日時点で既に達している長
期金利の上限が0・5%のままで今後推移するとは考えていない
はずです。なぜなら、もし、日銀が10年債をこの利回りのまま
推移させると、他の年限の利回りとの逆転や乖離といった歪みが
さらに拡大すると考えられるからです。
 10年債の利回りは重要な指標です。社債の利回りを決めると
き、10年債の利回りを基準にして、その会社の信用度などを加
味して決定しているからです。
 市場の機能不全状態の典型といえば、英国での「トラスショッ
ク」があります。英国では、国債の暴落をきっかけに、大規模減
税策を掲げて就任したばかりのトラス首相が、辞任に追い込まれ
るという予想を超える事態が起きましたが、この暴落は、政治が
経済に大きな問題を引き起こし得る政策を行おうとしたときに、
「債券自警団」が警鐘を発したといわれています。債券自警団と
は、インフレを誘発するような金融・財政・政策に対して債券を
売ることで抗議する投資家の一団のことをいいます。
 Aの官邸からの要望とは何でしょうか。
 2022年11月10日のことです。黒田日銀総裁は、岸田首
相と会談しています。会談後、黒田総裁は、岸田首相から、持続
的な経済成長を実現するため、エネルギー価格高騰への対応や構
造的な賃上げ、成長のための投資や改革に取り組むとの話があっ
たことを明らかにしています。これについて、第一生命経済研究
所首席エコノミストの熊野英生氏は、情報として、次の趣旨のこ
とを述べています。つまり、10年債の事実上の利上げについて
話したのではないかというのです。
─────────────────────────────
 為替が実体経済に影響するまで3カ月以上のタイムラグがある
とされる。今回の金利上限引き上げを受けた円高が、効果を発揮
するのは、23年4月以降になる。23年4月の電気料金改定で
は、3割近い引き上げが予想されるが、為替が円高方向に修正さ
れれば、電力会社のコスト上昇圧力が軽減され、電気料金を押し
下げる効果が期待できる。      https://bit.ly/3vLspze
─────────────────────────────
 さらに熊野英生氏は、黒田日銀総裁は、次期日銀総裁が金融政
策をやりやすくするため、自らの手で、異次元金融緩和の後始末
に着手したのではないかと予測しています。そうであるとすれば
長期金利の変動幅が0・5%のままであるはずがなく、さらに引
き上げる可能性が十分あります。
 ちなみに次期日銀総裁は、雨宮正佳副総裁と前副総裁の中曽宏
大和総研理事長が有力視されていますが、サプライズとして「新
しい資本主義実現会議」のメンバーである、翁百合氏の名前も挙
がっていることを指摘しておきます。
           ──[メタバースと日本経済/004]

≪画像および関連情報≫
 ●初の女性総裁誕生か?岸田首相が画策する日銀トップ“サプ
  ライズ人事”と政権浮揚シナリオ
  ───────────────────────────
   新年早々、為替相場が大きく動いている。3日の外国為替
  市場では、円が急上昇し、一時1ドル=129円台半ばと7
  カ月ぶりの円高・ドル安水準を付けた。昨年10月の151
  円台後半から約22円も上昇したことになる。マーケットは
  この先、日銀が金融緩和策を縮小すると判断し、ドル売り・
  円買いの動きを強めている。
   今後、為替はどう動くのか。マーケットが注目しているの
  が、日銀の次期総裁人事だ。現職の黒田総裁の任期は4月に
  切れる。低支持率にあえぐ岸田首相は、“サプライズ”人事
  を画策しているという。「サプライズとして浮上しているの
  が、日銀初の『女性総裁』の誕生です。日銀総裁は基本的に
  財務省OBと日銀出身者が交互に就任する『たすき掛け』人
  事が行われてきた。財務省出身の黒田総裁の後任は、日銀現
  副総裁の雨宮正佳氏、中曽宏前副総裁、山口広秀元副総裁の
  名前が挙がっています。ところが、3人とも地味で、総裁に
  なっても刷新感が薄い。そこで岸田首相は『女性総裁』誕生
  で、世間にアピールするつもりではないか、とみられていま
  す。掲げる『女性活躍』政策ともマッチします」(霞が関関
  係者)有力候補として名前が挙がっているのが日本総研の理
  事長で、岸田政権の「新しい資本主義実現会議」のメンバー
  でもある翁百合氏だ。他に、日銀政策委員会の審議委員を務
  めた白井さゆり慶大教授と、日銀初の女性理事を務めている
  清水季子氏の名が浮上。     https://bit.ly/3k16IbB
  ───────────────────────────
翁百合氏.jpg
翁百合氏


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック