2022年12月19日

●「会議システム/ホライゾンワールド」(第5877号)

 オキュラスVR社の創業者で、「オキュラスリフト」の開発者
のパルマー・ラッキー氏、後から同社に加わったCGの歴史に劇
的なインパクトを与えたプログラマーのジョン・カーマック氏、
それからゲーム分野で伝説的な存在として知られるマイケル・ア
ブラッシュ氏──この3人を中心に、ヘッドマウントディスプレ
イ(HMD)の歴史についてここまで述べてきています。
 オキュラスVR社は、2014年に当時のフェイスブックに買
収され、2018年9月からオキュラスVR社は「フェイスブッ
ク・テクノロジーズ」として、当時のフェイスブックの一つの部
門になっています。その間、オキュラスのHMDは次のように飛
躍的な進歩を遂げてきています。
─────────────────────────────
  2016年 3月 ・・       オキュラスリフト
  2016年12月 ・・       オキュラスタッチ
  2018年 5月 ・・        オキュラスゴー
  2019年 5月 ・・ オキュラスクエスト/リフトS
─────────────────────────────
 しかし、パルマー・ラッキー、ジョン・カ−マック、マイケル
・アブラッシュというオキュラスを支える3氏のうち、オキュラ
スVR社の創業者であるパルマー・ラッキー氏は、2017年に
オキュラスVR社を退社しています。なぜ退社したのかについて
は、はっきりしていませんし、メタ社も口を閉ざしています。
 一説によると、2016年9月にパルマー・ラッキー氏は、大
統領選挙にさいして、トランプ候補に1万ドルを寄付し、それが
原因で退社させられたといわれています。現在、パルマー氏は、
防衛関係の仕事に従事しているといわれます。
 さて、オキュラスVR社を買収したフェイスブックのマーク・
ザッカーバークCEOは、ことあるごとに次のようにいうように
なったといわれます。
─────────────────────────────
    VR機器を、全世界で10億台普及させたい。
         ──マーク・ザッカーバークCEO
─────────────────────────────
 ここでいう「10億台」という数字は、単なる普及させたい数
字目標ではなく、意味があります。というのは、2022年現在
スマートフォンは年間10億台生産されており、その精度は年々
向上しています。VR機器もきっとそうなるし、そうさせたいと
ザッカーバー氏は考えています。ムーアの法則がそうであったよ
うに、性能が上がれば、価格も下がるのです。つまり、VR機器
オキュラスを現在のスマートフォンのようにしたいし、きっとそ
うなると信じているのでしょう。
 ザッカーバークCEOは「メタバースには1兆ドル(110兆
円)の市場価値がある」といっています。そのため、オキュラス
VR社を買収し、傘下の研究開発部門として「リアリティラボ/
Reality Labs」を設立し、毎年100億ドル(1・1兆円)の投
資を行っています。
 その結果、2022年4月に公表されたこのリアリティラボ部
門の22年第1四半期決算は、次のようになっています。
─────────────────────────────
   売上高  6億9500万ドル/前年同期比35%増
   損 失 29億6000万ドル/前年同期比55%増
─────────────────────────────
 リアリティラボでは、「メタクエスト2」が売り上げを伸ばし
ている一方、メタバースへの投資強化により、巨額の損失が発生
しています。ザッカーバークCEOは、投資家向けには次のメッ
セージを発しています。
─────────────────────────────
 メタバースを構築する戦略の中心にあるのは、ソーシャルプ
 ラットフォームである。──マーク・ザッカーバークCEO
─────────────────────────────
 ソーシャルプラットフォーム──ザッカーバークCEOのいう
この言葉の意味は重要です。つまり、メタはメタバースの世界に
おける覇権を狙っているのです。これを具体化させるものとして
「ホライゾンワールド/Horizon Worlds」というソーシャルVR
サービスを立ち上げています。
 これは、メタバースを利用する会議サービスのことです。まだ
日本には入ってきていませんが、このシステムでは、会議に参加
する人はアバターの姿で現れ、きちんと相手の目を見ながら、身
振り手振りをしつつ、会議ができます。現在のZOOMでの対話
よりもリアリティがあり、しかも音声の遅延はほとんどないとい
う優れものです。
 なお、メタでは、このホライゾンワールドのウェブ版を製作中
であるといわれます。ウェブ版では、VRヘッドセットを持って
いなくてもPCやスマホなどのデバイスで利用できます。自分の
バストショットを相互に表示させてコミュニケーションをとるZ
OOMなどのオンライン対話よりも、自分の全身ショットのアバ
ターがメタバースの会議室に現れ、身振り手振りを交えながら対
話する方がリアリティがあるのではないかと思います。
 ちなみにアバターもAIの活用などにより、本人の特徴を掴ん
だものができるようになっています。つまり、アバターを見れば
それが誰であるか識別できるレベルまで進化しているのです。
 しかも、自分が手や身体を動かしたり、話したりする動作や音
声は、自分がそのように振る舞えば、アバターも同じように動作
するので、慣れるとずっとリアリティが増すと思われます。現在
流行しているオンライン会議システムの進化系として、十分実現
性があると思います。
 しかし、2022年に入ると、米国IT業界では、異変が起こ
りはじめています。しかも、GAFAMのなかでは、メタはとく
に状況が厳しいようです。
           ──[ウェブ3/メタバース/053]

≪画像および関連情報≫
 ●メタが展開するメタバース「Horizon Worlds」バーチャルア
  イテムの販売手数料は47.5%に
  ───────────────────────────
   メタ(旧フェイスブック)は2022年4月11日、同社
  が展開するメタバース「ホライゾンワールド」における、ク
  リエイター向けの新たなツールのテストを開始すると発表し
  た。まずは少数の選ばれたクリエイターが対象となり、制作
  したバーチャルアイテムをホライゾンワールド内で販売する
  ことが可能になる。その際の販売手数料が、計47・5%に
  なることが明らかになり、注目を集めているようだ。海外メ
  ディアビジネス・インサイダーなどが報じている。
   ホライゾンワールドでは、メタが展開するメタバースだ。
  昨年12月から、アメリカとカナダで先行してサービスが開
  始。ユーザーは、VRヘッドセット「メタクエスト2」など
  を用い、自らのアバターを通じて体験する。バーチャル空間
  にて、ほかのユーザーとさまざまなかたちで交流できるほか
  独自のワールドを作成することも可能だという。今年2月時
  点で、すでに1万以上のワールドが作成・公開されていると
  のこと。
   今回開始されたテストにおいて、ホライゾンワールドに参
  加しているクリエイターは、自らのワールド内にて独自に制
  作したバーチャルアイテムを販売できるようになるという。
  アイテムの例として、アバター向けアクセサリなどのファッ
  ションアイテムや、ワールド内の特定のエリアへのアクセス
  が可能になる鍵が挙げられている。https://bit.ly/3BGMutT
  ───────────────────────────
「ホライゾンワールド」での会議風景.jpg
「ホライゾンワールド」での会議風景
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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