2022年12月15日

●「VR仮想空間でDOOMを楽しむ」(第5875号)

 メタバースについて書こうとすると、どうしてもコンピュータ
ゲームの話が出てきます。なぜなら、メタバースの成功の条件と
して、世界中のゲーマーを取り込めるかどうかが、カギを握って
いるからです。そういうわけで、ジョン・カーマック氏のことを
もう一度ご紹介することにします。
 ジョン・カーマック氏──ゲーム業界の伝説的な優れたプログ
ラマーであり、ゲームクリエイターであり、エンジニアです。カ
ーマック氏は、パルマー・ラッキー氏の製作した「オキュラスリ
フト」の試作品を使って、自身の開発した人気ゲーム「ドゥーム
3」をプログラミングのテクニックを駆使して動作させることに
成功させた人物です。
 ところで、「ドゥーム3/DOOM3」とはどういうゲームな
のでしょうか。
 DOOM3は、一人称視点からプレイするストーリードリブン
のアクションゲームです。このシリーズの主要な目的は、プレイ
ヤーキャラクターを真剣に殺そうとしてくる、様々な敵キャラク
ターを倒し、無事ステージを通過することです。いわゆる一人称
シューティングゲームです。
 カーマック氏は、このゲームを「オキュラスリフト」を使うこ
とによって、自分がプレーヤーとして、3D空間の中に入って行
おうとする企画です。それに近い2分の映像を見てください。イ
メージが掴めると思います。
─────────────────────────────
       ◎Oculus Rift | Step into Rift
           https://bit.ly/3iQZ0QN
                  2分1秒
─────────────────────────────
 ジョン・カーマック氏が、あるインタビューので、オキュラス
リフトについて次のように語っています。
─────────────────────────────
 20年前から、さまざまなVR機器の企業が私の開発してきた
ゲームをVRで動作するように対応してきたが、どの企業も今は
残っていない。ごく一部の先端のテクノロジーに関心がある人だ
けに向けた、とても高価な製品だったからだ。しかし、今回紹介
するオキュラスリフトは、500ドルのハードウエアの組み立て
キットだ。3Dテレビにも過去に関わってきたが、3Dを実現す
るためには何かを諦めなければならなかった。ヘッドマウントデ
ィスプレイは根本的にクールなもので、本当にゲームのなかに没
入することができる。今回のデモは過去に作られたVRデモのな
かで最高のものだと思う。一般向けに販売できるのは、そんなに
遠い未来のことではない。     ──ジョン・カーマック氏
               ──新清士著/NHK出版新書
  『VRビジネスの衝撃/「仮想世界」が巨大マネーを生む』
─────────────────────────────
 パルマー・ラッキー氏は、カーマック氏の努力で「オキュラス
リフト」上でゲームソフトが動くことを確認できたとして、正式
にオキュラスVR社を立ち上げたうえで、クラウドファンディン
グサイト「キックスターター」でのキャンペーンを開始したので
す。2012年8月のことです。
 キャンペーンの内容は、300ドル以上支払えば、オキュラス
リフトの開発者キット(DK1)と、VRに対応した「ドゥーム
3」を獲得できるという魅力的なものです。そしてクラウドファ
ンディングの目標額は25万ドルに設定されましたが、この目標
は、プロジェクト公開後わずか24時間で達成してしまい、1カ
月後の募集終了時には、243万ドルという巨額の開発資金を集
めることに成功しています。
 そして、2013年3月には、開発者キット(DK1)の出荷
がはじまり、オキュラスリフトは、世界的に注目を浴びるハード
ウェアになったのです。そして2013年8月、ジョン・カーマ
ック氏は、古巣のイドソフトウェアを離れ、パルマー・ラッキー
氏が率いるオキュラスVR社のCTO(最高技術責任者)に就任
しています。カーマック氏は、オキュラスVR社に加わるさいに
次のように述べています。
─────────────────────────────
 VRは、今後数年のうちに極めて大きな影響力を持つようにな
るでしょう。将来には誰もが当然のように思うであろうVRのパ
ラダイムは、おそらくこのメッセージを読んでいる人々の手で、
今まさに作られようとしています。そこに至るまでの仕事はまだ
まだ多く、存在すらわかっていない課題も見つかるでしょうが、
私は早く取り組みたくてしかたがありません。きっとすばらしい
体験になるでしょう。
         ──新清士著/NHK出版新書の前掲書より
─────────────────────────────
 ところで、「開発者キット(DK1)」について説明する必要
があります。普通であれば、特許を取得して自身の開発した技術
を守るものですが、パルマー・ラッキー氏は、技術仕様書を公開
し、誰でも自由にヘッドマウントディスプレイ(HMD)を作れ
るようにしたのです。少しでも良いものを作りたかったので、あ
えてオープンソースにしたというわけです。
 その結果、様々なHMDが世界中に登場し、オキュラスリフト
の精度の向上に寄与しています。なかでもパルマー氏は、日本の
貢献度を称賛し、次のように期待を寄せています。
─────────────────────────────
 日本では、たった数千個しか開発キットを売っていないのに、
何百人もの開発者が何百ものデモを作ってくれたのです。日本の
開発キットの所有者のほとんどが何らかの開発をしている。だか
ら、DK2の最初の数千個は日本に出荷しようと思っています。
         ──新清士著/NHK出版新書の前掲書より
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/051]

≪画像および関連情報≫
 ●VR技術に、ついに“本物”が来た
  ───────────────────────────
   「今度こそ、これは本物だ――オキュラスリフトの実物を
  体験した時、それを実感しました」と、株式会社エクシヴィ
  代表取締役社長、近藤義仁氏は語る。オキュラスリフトは、
  ゴーグルのように頭に装着する、いわゆるヘッドマウントデ
  ィスプレイ(HMD)の一種。ただし、最初からVRゲーム
  用を第一目的にうたい、民生用の既存のデバイスを組み合わ
  せ、安価でありながら高性能を目指して作られている。
   南カリフォルニア大出身のパーマー・ラッキー氏が開発。
  2012年に最初のプロトタイプが公開された。その後のク
  ラウドファンディングによる資金調達では、なんと目標額、
  25万ドルの10倍に迫る240万ドルが集まったという。
  2013年春からは「開発者向けキット」の提供も始まり、
  体験者を中心に、さらに熱狂的な関心も広まりつつある。こ
  のオキュラスリフトのどこが、そこまで開発者たちの心を捉
  えるのか。
   「今までもVR用HMDはあったが、オキュラスリフトは
  “没入感”が全く違う。まず、今までのテレビやテレビゲー
  ム、携帯のゲーム、それらはすべて平面だった。そこから一
  歩進んだものとして、3Dテレビや3D映画などというもの
  もあったけれど、実のところ、それらは全然3Dではなかっ
  た。単に、正面の画面が若干浮き出て見えるだけ。どうして
  も限界がある。         https://bit.ly/3FmXn52
  ───────────────────────────
オキュラスVR社立ち上げメンバー.jpg
オキュラスVR社立ち上げメンバー
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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