2022年11月18日

●「組織が内向きになる人事評価制度」(第5857号)

 今やメディアではGAFAがいろいろなことで話題になってい
ます。直接的にはアマゾンやメタの大量解雇ですが、これからも
ビジネス環境が変わるなかで、GAFAは話題の中心になり続け
ると思います。
 GAFAに加えてM、すなわち、マイクロソフトは特殊なポジ
ションに置かれています。もともとは「GAFMA」と呼ばれ、
しっかりなかに入っていたのです。それから「GAFA」になっ
て完全にMが外され、さらに「GAFA+M」になり、最近では
「GAFAM」とまた一体化したりしています。いわゆるネット
時代において、マイクロソフトの評価が変化しているのです。
 マイクロソフトの現CEOであるサティア・ナデラ氏について
書く前に、前CEOのスティーブ・バルマー氏がどういう人物で
あったかについて知る必要があります。なぜなら、ナデラ氏とバ
ルマー氏とは、ほぼあらゆる面において、正反対の性格の人物で
あるからです。
 スティーブ・バルマー氏は、高校時代にSATの数学で800
点満点を取るという数学の天才です。SATというのは、カレッ
ジボードという団体が主催する標準テストで、大学入学時に参考
にされるテストです。バルマー氏はハーバード大学に入学します
が、そのとき学生寮の同じ部屋の仲間が、後にマイクロソフトを
設立するビル・ゲイツ氏だったのです。
 ビル・ゲイツ氏は、ハーバード大学を中退していますが、バル
マー氏は、ハーバード大学を第2位優等で卒業し、数学と経済学
の学位を取得しています。卒業後、オハイオ州に本拠を持つ世界
最大の一般消費財メーカーP&Gに、アシスタントプロダクトマ
ネージャーとして2年間勤務しますが、ビル・ゲイツ氏に説得さ
れ、1980年にマイクロソフトに事務担当管理職として入社。
マイクロソフトの30人目の従業員になっています。
 バルマー氏は、OSの開発、経営、販売、サポート事業部門長
などで大活躍します。バルマー氏は、技術者肌のビル・ゲイツ氏
に対して、経営のアドバイザー的な役割を果たし、売上高を3倍
にし、利益を2倍へと押し上げ、マイクロソフトを大企業に仕立
て上げた立役者であることは確かです。しかし、携帯端末事業に
おいては、アップルやグーグルの後塵を拝し、明らかにネット時
代に乗り遅れてしまっているのです。それは、マイクロソフトと
いう組織全体が「内向き」になってしまったことが原因であると
考えられます。
 重要なことは、マイクロソフトが、なぜ「内向き」になってし
まったかにあります。そのひとつとして考えられるのはバルマー
CEOが導入した「スタック・ランキング」という人事評価制度
です。これは、マネージャーが社員をいくつかのレベルにランク
付けする評価制度です。
 あるプロジェクトにエンジニアとマーケターの合計10人が参
加したとすると、それは、次の割合で評価されます。
─────────────────────────────
    ◎「スタック・ランキング」
     「最 高」レベル ・・・ 20%/2人
     「中 間」レベル ・・・ 70%/7人
     「不適格」レベル ・・・ 10%/1人
─────────────────────────────
 プロジェクトの結果に関わらず、この評価の割合は変化しない
のです。この場合、誰でも「不適格」にはなりたくないので、何
とか「中間」レベルに入ろうとし、そのためには評価者に対して
おべっかも含めて、あらゆることをしようとします。このような
状況では、とても外部の諸変化に目を向ける余裕はなくなるし、
「内向き」にならざるを得ないことになります。組織の活力も奪
われてしまうでしょう。
 この「スタック・ランキング」について、関連サイトが次のよ
うに書いているので、ご紹介します。
─────────────────────────────
 たとえば同僚の1人が上司にお世辞を言い続けて、それで「最
高」レベルにランクされたとしたらどうだろうか。他の人たちは
その代わりにそれより下のレベルにランクされてしまうし、必ず
誰かが「不適格」にランクされることになるのだ。
 また、プロジェクトが完了し、その成果が現れるまでには数ヶ
月、場合によっては数年かかるにもかかわらず、評価は短期の間
に下される。本来、プロジェクトの目的は、良い製品を世の中に
送り出すことのはずなのだが、この評価制度だと、誰もが、自分
の社内での短期的な評価を高めることを目的に動くようになる。
他人の功績を横取りすることや、優れたアイデアをすべて自分の
発案のように見せかけることが横行する。
 バルマー時代の有名な風刺画が、その状態を見事に表現してい
る。ひたすら効率を重視するアマゾンの組織が単純な階層構造に
なっていたのに対し、マイクロソフトは、互いが互いに銃口を向
け組織内で皆が常に戦っている状態になっていた。スタック・ラ
ンキングは、社内に無数の「ミニチュアのバルマー」を作り出す
仕組みだった。バルマーのように誰もが皆に対して攻撃的な態度
を取り、誰もがマイクロソフトの中の世界だけに目を向けるよう
になる。              https://bit.ly/3EBxb7K
─────────────────────────────
 バルマーCEOにとって、市場での競争は「ジハード/聖戦」
ととらえ、競合企業をただ打ち負かすのではなく、相手の息の根
を止め、地上から消滅させようとする。確かにPCのOSの世界
においては、アップルにわずかのシェアを許したものの、ほぼ独
占といっても過言ではないと思います。
 どうやら、バルマー前CEOは、マイクロソフトの社員にとっ
ては理想のトップではなかったようです。その証拠に、バルマー
氏が退任することが明らかになったとき、マイクロソフトの株価
は一気に7・5%上昇したことでそれは明らかです。
           ──[ウェブ3/メタバース/033]

≪画像および関連情報≫
 ●【電子版】ゲイツ氏との関係、ハードウエア参入で悪化
  ──MSのバルマー前CEO
  ───────────────────────────
   【ブルームバーグ】米マイクロソフトの前最高経営責任者
  (CEO)スティーブ・バルマー氏は、ハードウエア事業参
  入にかじを切った自身の決断がビル・ゲイツ氏との関係が悪
  化した一因になったと振り返った。ゲイツ氏は同社創業者で
  長年の友人でもあったが、バルマー氏が唯一後悔しているの
  は、もっと早くやらなかったことだという。
   14年間にわたりマイクロソフトCEOを務めたバルマー
  氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、もう
  一度全てをやり直せるとしたら、数年早くモバイル機器事業
  に参入しただろうと発言。最終的に参入を決めた当時、ゲイ
  ツ氏や取締役会の他のメンバーは異議を唱えたと明らかにし
  た。ゲイツ氏と「疎遠になった」のは、マイクロソフトが自
  らのハンドセットやタブレットを生産すべきかをめぐる不一
  致が一因だったと指摘。「われわれ2人のどちらにとっても
  容易なことではまったくなかった。会社の戦略的な方向性に
  ついて、意見にわずかな相違」があったと述べた。
   さらに「ハードウエア事業の重要性について根本的な意見
  の相違があった」とし、「私はサーフェスを推した。取締役
  会はその支援にやや消極的だった。そのような時期に電話事
  業で何をすべきかが議論になり、状況が、最高潮に達した」
  と語った。          https://bit.ly/3WYCQM6
  ───────────────────────────
スティーブ・バルマー前MS/CEO.jpg
スティーブ・バルマー前MS/CEO
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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