2007年07月27日

●なぜ、モダレイト・アマウントなのか(EJ第2131号)

 ここでいささか古い話を思い出していただく必要があります。
1997年6月23日、橋本元首相はコロンビア大学で講演をし
たのです。講演後の質疑応答で、次のようなやり取りがあったの
ですが、朝日新聞の有田哲文記者の報道をそのまま記述します。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 質  問:日本や日本の投資家にとって、米国債を保有し続け
      ることは損失をこうむることにならないか。
 橋本首相:ここに連邦準備制度理事会やニューヨーク連銀の関
      係者はいないでしょうね。実は何回か財務省証券を
      大幅に売りたいという誘惑にかられたことがある。
      ミッキー・カンター(元米通商代表)とやりあった
      時や、米国の皆さんが国際基軸通貨としての価値に
      あまり関心がなかった時だ。
      (財務省証券を保有することは)たしかに資金の面
      では得な選択ではない。むしろ、証券を売却し、金
      による外貨準備をする選択肢もあった。しかし、仮
      に日本政府が一度に放出したら米国経済への影響は
      大きなものにならないか。財務省証券で外貨を準備
      している国がいくつかある。それらの国々が、相対
      的にドルが下落しても保有し続けているので、米国
      経済は支えられている部分があった。これが意外に
      認識されていない。我々が財務省証券を売って金に
      切り替える誘惑に負けないよう、アメリカからも為
      替の安定を保つための協力をしていただきたい。
            −−1997.6.24付、朝日新聞
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 この話がきっかけになって米国株式は暴落したのです。しかし
そんなに深い話ではないということで、翌日には株式も戻し、一
件落着という話にはなっています。
 一体橋本首相はなぜこのような発言をしたのでしょうか。これ
については、次の3つの説があります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      1.単なるジョークとしての発言
      2.米国の円高誘導に対する牽制
      3.米国の驕りに対する反発姿勢
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 発言の真意はおそらく2であろうと思われます。元首相は日米
首脳会談で「内需拡大が無理なら為替での調整しかない」と迫ら
れていたからです。
 もうひとつこんな話があります。1987年3月25日のこと
です。1ドルが史上初めて150円を割ったときのことです。3
月25日といえば、日本企業の決算日である31日の6日前であ
り、企業の財務担当者が1年で一番ドルの動きに神経をとがらし
ている時期なのです。
 1985年9月23日に「プラザ合意」があってから17ヶ月
間、ドルは当初の240円から下がり続けており、どこまで下が
るのかG7諸国は見極めたいと考えていたのです。そこで、19
87年2月には「ルーブル合意」があり、それによってG7諸国
はドルは150円以下には下がらないという合意が打たれた−−
そのように考えていたのです。
 最初に起きたことは、今まで米国債を買っていた日本の投資家
がドルを買うのをやめたことです。しかし、買うのをやめただけ
で売りには回っていないのに、それだけで米国の長期金利はわず
か6週間の間に7.5%から9%に上がったのです。これと同時
に、日本の長期金利は4%から2.5%に下落しています。
 為替レートはこれによって1ドル137円となり、13円も下
がってしまったのです。クー氏によると、当初米国当局は正確な
原因を把握しておらず、金利が上がったのは米国国内のインフレ
懸念のせいであると考えていたのです。
 やがて米国の金融当局は金利上昇の真の原因に気づき、あわて
てドル安を止めに入ったのです。それに合わせて介入を行い、短
期金利を上げて、6月後半にはドルを150円に戻しています。
添付ファイルはこれらの動きがすべて出ております。
 これに衝撃を受けたのは日本の金融当局なのです。おそらく米
国からの要請もあったと思われますが、それ以来、為替業者に対
して報告義務を負わせ、民間の為替取引に関わる事務コストを膨
大なものにしてしまったのです。「もし黙ってドルを売ったら、
バラスぞ」という脅しが課せられたものと思われます。
 以上の2つの事件をなぜご紹介したかというと、これほど日本
や中国の国債売りに対して神経質であった米国であるのに、20
05年2月17日の議会でのグリーンスパンFRB前議長の発言
は、日本や中国が米国債を買わなかったり、売ったとしても金利
はわずか上がるだけである−−こういい切ったのです。一体どう
なっているのでしょうか。
 リチャード・クー氏によると、グリーンスパン議長がいう「金
利はわずかだけ上ることになる」の「わずかだけ」は英語で次の
ように表現しているというのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   モダレイト・アマウント = moderate amount
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 クー氏によると、「モダレイト・アマウント」はイメージ的に
は「0.3%から0.5%」程度の上昇という意味であるという
のです。これなら、「国債を売りたければどうぞ!」という意味
にもとれることになります。
 このときグリーンスパンは、今こそドルのトークダウンの絶好
のチャンスと見ていたのではないかと思われます。だから、ブッ
シュ政権の2期目に入るとすぐドルのトークダウンをはじめたの
です。今なら外国が国債を売っても国内の投資家がそれを買うは
ずであると読み切っていたのです。この理由については来週分析
することにします。     −−[日本経済回復の謎/41]


≪画像および関連情報≫
 ・ルーブル合意について
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  1987年2月22日、パリのルーブル宮殿に集まったG7
  は、プラザ合意を契機に加速していたドル安に歯止めをかけ
  るため,「為替相場を現行の水準の周辺に安定させる」こと
  で合意した。これをルーブル合意という。1985年9月の
  プラザ合意とその後の各国による協調介入の結果,1ドル=
  240円台であったドル相場はほぼ一本調子で下落し,87
  年2月には150円台に到達していた。そこで今度は各国が
  過度のドル安に対する懸念を共有したことからルーブル合意
  となったが,大幅な国際収支不均衡を是正するためにはドル
  相場の一層の下落が必要との見方があったこと,ブラックマ
  ンデー(暗黒の月曜日)と呼ばれる米株式市場の暴落が生じ
  たことなどから,合意後もドル相場の下落は続いた。
                    −−独学ノートより
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

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posted by 平野 浩 at 04:23| Comment(0) | TrackBack(1) | 日本経済回復の謎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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