とって、GAFAは絶対的な存在であるといえます。今回は、そ
れに関する知られざる事件を取り上げます。
「パーラー」というSNSをご存知ですか。パーラーは、20
18年8月に開設された非主流を自称するミニブログ兼SNSで
米ネバダ州ヘンダーソンに拠点を置いています。
パーラーは、2020年の段階で、ユーザーが約100万人し
かいないというとてもマイナーなSNSだったのです。ところが
2020年の大統領選後の10月〜11月、フェイスブックやツ
イッターで言論統制を受け、アカウントが取り消されたユーザー
が、大挙してパーラーに移行し、わずか数カ月で1500万人近
いユーザーを獲得したのです。
ところが、パーラーは、2021年1月6日に起きた米国会議
事堂デモ乱入事件で、トランプ支持者による暴動を煽ったという
ことで、グーグルとアップルからクレームをつけられたのです。
SNSのモバイルアプリ事業者であるパーラーは、暴力を扇動し
ないように規約を守るべきという主張です。しかし、パーラーは
これに反論します。もともと、ユーザーの言論の自由を守るとい
うのが、パーラーのポリシーなのでこれを無視します。
これに対して、グーグルとアップルは、「もし規約を守らない
のであれば、アプリストアから追い出すぞ」と、さらに圧力をか
けてきたのです。
パーラーはこの警告も無視したので、グーグルは、パーラーの
対応を不満として、公共の安全上の脅威であるとして、グーグル
プレイストアからパーラーのアプリを削除し、アップルもそれに
したがったのです。アプリを削除されるとユーザーが増えなくな
るので、アプリ業者であるパーラーにとって命取りになります。
これについて、ITコンサルタントの深田萌絵氏は次のように
述べています。
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勝者となったGAFAにとって言論統制はたやすい。インター
ネット空間というのは、入り口が独占されており、私たちはネッ
トに接続するのにグーグルかアップル、マイクロソフトのブラウ
ザを立ち上げる。既にGAFAに牛耳られてしまっているので、
グーグルやアップルを経由せずにインターネットに入るとなると
かなり選択肢が少なくなるのだ。
また、ユーザーにアプリを提供するためのアプリケーションス
トアは、グーグルプレイ、アップルストアがほとんどをので、こ
の二つから締め出されるとアプリ業者は窮地に陥る。だからグー
グルやアップルがどんなに高いパーセンテージの手数料を求めて
きても、ノーとは言えない状況にある。それがこのアプリ業界支
配の捉なのだ。 ──深田萌絵著/宝島社
『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する』
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しかし、パーラーはアプリは締め出されましたが、データはア
マゾンのクラウドサービスAWSに収録されています。そこに追
い討ちがきます。2021年1月9日にアマゾンは「24時間後
にサービスを停止するので、移行準備をしてください」と通告し
1月10日以降パーラーは完全にオフラインになってしまったの
です。これに対し、パーラーのジョン・マッツェCEOは、アマ
ゾンを次のように批判し、提訴します。
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これはインターネットにおける言論の自由の完全な排除の試み
である。とくにサーバーの利用停止は、生命維持装置を付けた入
院患者の電源コードを抜くことと同じである。
──ジョン・マッツェ
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もっともわかりやすい例を上げると、トランプ前大統領がほと
んどのSNSから排除されています。トランプ前大統領の発言に
問題があるとしても、膨大な権力を有する米国の大統領でさえ、
インターネットの世界では、場合によっては言論を抹殺されてし
まうのです。
アレックス・ジョーンズという極右のラジオ番組司会者、ユー
チューバー、保守派の評論家がいます。彼は、ツイッター、ユー
チューブ、スポティファイ、ボードキャストなどのさまざまなプ
ラットフォームから、同じ日に一斉にデータが削除されてしまっ
ています。
インターネット空間は、広大なる空間のように見えますが、そ
の実態は意外に狭い世界なのです。それは、いわゆるGAFA+
Mが、世界シェアの多くを握っているからです。インターネット
の世界は、次のように一部の企業によって独占されています。彼
らが連携を組むと、このインターネットの世界は非常に狭苦しい
世界になってしまうのです。
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◎PC用OSの世界シェア
ウインドウズ ・・・・・ 75.86%
OSX(テン) ・・・・・ 15.76%
◎ブラウザの世界シェア
クローム ・・・・・ 62.78%
サファリ ・・・・・ 19.30%
フィアフォックス ・・・・・ 4.20%
エッジ ・・・・・ 4.06%
◎モバイルOSの世界シェア
アンドロイド ・・・・・ 70.97%
iOS ・・・・・ 28.27%
◎検索エンジンの世界シェア
グーグル ・・・・・ 92.01%
ビング ・・・・・ 2.96%
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──[ウェブ3/メタバース/020]
≪画像および関連情報≫
●民間企業が主導した、トランプ大統領「ネット追放劇」に
見る“権限”とリスク
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この4年間、いい意味でも悪い意味でも、米国をぶっつぶ
してきたトランプ大統領。最後の最後で、連邦議会の議事堂
を襲撃する事件を煽ったことで、ここ4年の負の側面の全て
の責任を一身に背負って退場することとなった。今後しばら
くは、米国の「ミス」「問題」は全てトランプのせいにされ
ることだろう。
米国では今、議会襲撃事件によって新たな展開が起きて騒
動になっている。トランプ大統領のツイッターやフェイスブ
ックなどのSNSやオンラインサービスのアカウントが次々
と使用禁止になったことだ。さらにアップルやグーグルもト
ランプ支持の保守派たちが集まっていたSNS「パーラー」
というアプリをダウンロードできないようにする措置に出て
いる。さらにパーラーのサーバをアマゾンが停止してしまう
事態にもなった。
要するにトランプ大統領がオンラインから存在を消されつ
つある状況になっているのだ。この動きによって、米国では
SNSなどの運営企業が暴走していると大きな騒動になって
いる。そもそも一民間企業であるSNSなどのサービス事業
者が、世界一の大国の大統領に対して口封じをする権利があ
るのか、と。ご存じの通り、SNSとトランプの戦いは今に
始まったことではない。もともとは、2016年の米大統領
選で、ロシアなど国外からSNSを使ったフェイクニュース
が拡散され、トランプ陣営に有利に働いたと取り沙汰された
ことが発端だった。SNSが国際的にも情報工作に悪用され
ている実態が顕在化したのだ。 https://bit.ly/3FnVcjn
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ジョン・マッツェ/パーラーCEO