2022年10月31日

●「GAFAにより抹殺されたSNS」(第5844号)

 何らかのかたちで、インターネットを事業として使う人たちに
とって、GAFAは絶対的な存在であるといえます。今回は、そ
れに関する知られざる事件を取り上げます。
 「パーラー」というSNSをご存知ですか。パーラーは、20
18年8月に開設された非主流を自称するミニブログ兼SNSで
米ネバダ州ヘンダーソンに拠点を置いています。
 パーラーは、2020年の段階で、ユーザーが約100万人し
かいないというとてもマイナーなSNSだったのです。ところが
2020年の大統領選後の10月〜11月、フェイスブックやツ
イッターで言論統制を受け、アカウントが取り消されたユーザー
が、大挙してパーラーに移行し、わずか数カ月で1500万人近
いユーザーを獲得したのです。
 ところが、パーラーは、2021年1月6日に起きた米国会議
事堂デモ乱入事件で、トランプ支持者による暴動を煽ったという
ことで、グーグルとアップルからクレームをつけられたのです。
SNSのモバイルアプリ事業者であるパーラーは、暴力を扇動し
ないように規約を守るべきという主張です。しかし、パーラーは
これに反論します。もともと、ユーザーの言論の自由を守るとい
うのが、パーラーのポリシーなのでこれを無視します。
 これに対して、グーグルとアップルは、「もし規約を守らない
のであれば、アプリストアから追い出すぞ」と、さらに圧力をか
けてきたのです。
 パーラーはこの警告も無視したので、グーグルは、パーラーの
対応を不満として、公共の安全上の脅威であるとして、グーグル
プレイストアからパーラーのアプリを削除し、アップルもそれに
したがったのです。アプリを削除されるとユーザーが増えなくな
るので、アプリ業者であるパーラーにとって命取りになります。
 これについて、ITコンサルタントの深田萌絵氏は次のように
述べています。
─────────────────────────────
 勝者となったGAFAにとって言論統制はたやすい。インター
ネット空間というのは、入り口が独占されており、私たちはネッ
トに接続するのにグーグルかアップル、マイクロソフトのブラウ
ザを立ち上げる。既にGAFAに牛耳られてしまっているので、
グーグルやアップルを経由せずにインターネットに入るとなると
かなり選択肢が少なくなるのだ。
 また、ユーザーにアプリを提供するためのアプリケーションス
トアは、グーグルプレイ、アップルストアがほとんどをので、こ
の二つから締め出されるとアプリ業者は窮地に陥る。だからグー
グルやアップルがどんなに高いパーセンテージの手数料を求めて
きても、ノーとは言えない状況にある。それがこのアプリ業界支
配の捉なのだ。           ──深田萌絵著/宝島社
     『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する』
─────────────────────────────
 しかし、パーラーはアプリは締め出されましたが、データはア
マゾンのクラウドサービスAWSに収録されています。そこに追
い討ちがきます。2021年1月9日にアマゾンは「24時間後
にサービスを停止するので、移行準備をしてください」と通告し
1月10日以降パーラーは完全にオフラインになってしまったの
です。これに対し、パーラーのジョン・マッツェCEOは、アマ
ゾンを次のように批判し、提訴します。
─────────────────────────────
 これはインターネットにおける言論の自由の完全な排除の試み
である。とくにサーバーの利用停止は、生命維持装置を付けた入
院患者の電源コードを抜くことと同じである。
                   ──ジョン・マッツェ
─────────────────────────────
 もっともわかりやすい例を上げると、トランプ前大統領がほと
んどのSNSから排除されています。トランプ前大統領の発言に
問題があるとしても、膨大な権力を有する米国の大統領でさえ、
インターネットの世界では、場合によっては言論を抹殺されてし
まうのです。
 アレックス・ジョーンズという極右のラジオ番組司会者、ユー
チューバー、保守派の評論家がいます。彼は、ツイッター、ユー
チューブ、スポティファイ、ボードキャストなどのさまざまなプ
ラットフォームから、同じ日に一斉にデータが削除されてしまっ
ています。
 インターネット空間は、広大なる空間のように見えますが、そ
の実態は意外に狭い世界なのです。それは、いわゆるGAFA+
Mが、世界シェアの多くを握っているからです。インターネット
の世界は、次のように一部の企業によって独占されています。彼
らが連携を組むと、このインターネットの世界は非常に狭苦しい
世界になってしまうのです。
─────────────────────────────
   ◎PC用OSの世界シェア
    ウインドウズ   ・・・・・ 75.86%
    OSX(テン)  ・・・・・ 15.76%
   ◎ブラウザの世界シェア
    クローム     ・・・・・ 62.78%
    サファリ     ・・・・・ 19.30%
    フィアフォックス ・・・・・  4.20%
    エッジ      ・・・・・  4.06%
   ◎モバイルOSの世界シェア
    アンドロイド   ・・・・・ 70.97%
    iOS      ・・・・・ 28.27%
   ◎検索エンジンの世界シェア
    グーグル     ・・・・・ 92.01%
    ビング      ・・・・・  2.96%
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/020]

≪画像および関連情報≫
 ●民間企業が主導した、トランプ大統領「ネット追放劇」に
  見る“権限”とリスク
  ───────────────────────────
   この4年間、いい意味でも悪い意味でも、米国をぶっつぶ
  してきたトランプ大統領。最後の最後で、連邦議会の議事堂
  を襲撃する事件を煽ったことで、ここ4年の負の側面の全て
  の責任を一身に背負って退場することとなった。今後しばら
  くは、米国の「ミス」「問題」は全てトランプのせいにされ
  ることだろう。
   米国では今、議会襲撃事件によって新たな展開が起きて騒
  動になっている。トランプ大統領のツイッターやフェイスブ
  ックなどのSNSやオンラインサービスのアカウントが次々
  と使用禁止になったことだ。さらにアップルやグーグルもト
  ランプ支持の保守派たちが集まっていたSNS「パーラー」
  というアプリをダウンロードできないようにする措置に出て
  いる。さらにパーラーのサーバをアマゾンが停止してしまう
  事態にもなった。
   要するにトランプ大統領がオンラインから存在を消されつ
  つある状況になっているのだ。この動きによって、米国では
  SNSなどの運営企業が暴走していると大きな騒動になって
  いる。そもそも一民間企業であるSNSなどのサービス事業
  者が、世界一の大国の大統領に対して口封じをする権利があ
  るのか、と。ご存じの通り、SNSとトランプの戦いは今に
  始まったことではない。もともとは、2016年の米大統領
  選で、ロシアなど国外からSNSを使ったフェイクニュース
  が拡散され、トランプ陣営に有利に働いたと取り沙汰された
  ことが発端だった。SNSが国際的にも情報工作に悪用され
  ている実態が顕在化したのだ。  https://bit.ly/3FnVcjn
  ───────────────────────────
ジョン・マッツェ/パーラーCEO.jpg
ジョン・マッツェ/パーラーCEO
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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