2022年10月28日

●「GAFAと政治との関係性を探る」(第5843号)

 Web2.0 によってGAFAが誕生し、GAFAの数多くの
無料サービスを享受している一般人からすれば、便利になったと
感じている人は多いと思います。しかし、GAFAを政治という
観点でとらえると、いろいろ問題が出てきます。
 米国には、「通信品位法」という法律があります。この法律の
230条にプロバイダ(SNSなどのプラットフォームサービス
およびISP)の免責(媒介者免責)を定めた条文があります。
そこには、次のように定められています。
─────────────────────────────
◎通信品位法第230条
 @第三者が発信する情報について原則として責任を負わない。
 A有害なコンテンツに対する削除などの対応(アクセスを制限
  するため、誠実かつ任意にとった措置)に関し、責任を問わ
  れない。
─────────────────────────────
 この通信品位法230条は、トランプ前大統領がGAFAに対
し、「撤廃するぞ!」と、さんざん脅しをかけていたことで知ら
れています。米議会上院は2020年11月29日に「230条
の広範な免責は巨大IT企業に悪行を許しているのか?」と題し
た公聴会を開き、フェイスブック、グーグル、ツイッターのトッ
プをオンラインで呼び出し、巨大ITプラットフォームが、そこ
で発信されている情報の内容について、あまりに無責任ではない
かとクレームをつけたのです。
 何が無責任なのかというと、要するに「勝手に検閲のような関
与をするな」という共和党側からの文句です。たとえば、トラン
プ大統領の脱税疑惑報道は制限しないのに、バイデン元副大統領
の不正疑惑報道はプライバシーなどを理由に制限しているのはア
ンフェアで恣意的な検閲ではないかと批判しているのです。
 これに対して、民主党からは「悪い投稿にもっと責任を持って
関与すべきである」という意見が出されており、フェイクニュー
スの拡散などの悪質かつ選挙などにも影響を与えうる投稿はもっ
と制限すべきだとしています。
 シリコンバレーの企業の多くは民主党支持で固まっています。
2020年の米大統領選挙では、バイデン陣営が選挙中に公表し
たリストによると、バイデン陣営の資金集めにはシリコンバレー
の企業が多数協力しています。とくに副大統領候補のカマラ・ハ
リス氏は、北カリフォルニアの出身で、シリコンバレーとは深い
つながりがあるからです。
 これに対して、トランプ前大統領は、鉄鋼や自動車などの製造
業をラストベルト地帯に戻し、伝統的産業の雇用を増やす一方で
「アップル製品は敵だ」などと、ハイテク企業やシリコンバレー
企業などに対して敵対的な発言をしています。
 トランプ政権は「H−1Bビザ」の発給制限を行っています。
「H−1Bビザ」とは、専門技術者として米国で一時的に就労す
る場合を対象としたビザで、米国の学士またはそれと同等の経歴
を持っていることが条件になります。最初の認可で3年間有効な
ビザが発行され、2年の延長が1回のみ可能で、継続しての滞在
は5年が限度となります。このビザの発給制限が行われると、技
術者の確保が苦しくなります。
 しかし、GAFAの時価総額が一国のGDPを超えるほどのレ
ベルに達しているだけに、現在、「GAFA分割論」が提案され
ています。このGAFA問題について、野口悠紀雄一橋大学名誉
教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカはこれまで、IBMやAT&Tという巨大情報企業を
独禁法によって企業分割することで、その力を弱めてきた。GA
FA分割論は、これと同じ手法を適用しようとするものだ。しか
し、プラットフォーム企業に対してその手法が有効でないことを
バイデン政権は重々承知しているのではないだろうか?
 そして、ハイテク企業がアメリカの強さの源泉であり、中国に
対する最強の武器であると認識しているから、友好的な立場をと
るだろう。こうしたことを考えると、アメリカでは、ハイテク産
業に関する条件が好転する可能性がある。もしそのようなことに
なれば、中国における変化と合わせて、技術開発力のバランスは
これまでとは大きく変わる可能性がある。
 ただし、アメリカでもIT企業の巨大化に対する国民の反発が
強まっているので、放置するわけにもいかない。どのような手段
で対処するかの手探りが続くだろう。トランプ政権下のアメリカ
司法省は、2020年10月20日に反トラスト法違反でグーグ
ルを提訴している。この問題は複雑だ。シリコンバレーと、民主
党共和党の関係が、いくつかの面で「ねじれて」いるからだ。
                  https://bit.ly/3SBesN7
─────────────────────────────
 VR(ヴァーチャル・リアリティ)産業のパイオニアであるオ
キュラスという企業があります。その創業者であるパーマー・ラ
ッキー氏は、2015年8月の「TIME誌」の表紙を飾るほど
の有名人です。2014年にラッキーCEOは、フェイスブック
にオキュラスを売却し、フェイスブックに入社したものの、20
17年に突然解雇されています。
 なぜ、解雇されたのかについては、ザッカーバークCEOが口
を閉ざしているので不明ですが、ラッキー氏がテッド・クルーズ
上院議員をはじめとする共和党議員や、トランプ前大統領の支持
団体に寄付していたことが、ザッカーバークCEOの怒りに触れ
て、解雇されたといわれています。問題は、世界で30億人近い
ユーザーを持つフェイスブックが、このように政治的敏感である
とそれに合わないコンテンツが制限されたり、削除されたりしな
いか懸念されます。なぜなら、GAFAは、通信品位法第230
条によって、意に沿わないコンテンツを削除しようと思えばでき
るからです。フェイスブックはとくにその傾向が強いのです。
           ──[ウェブ3/メタバース/019]

≪画像および関連情報≫
 ●パルマー・ラッキー氏、退社は一方的解雇だったのか?
  ───────────────────────────
   Oculus Riftの発案者であり、Oculus社 の共同創業者パル
  マー・ラッキー氏が親会社のフェイスブックを退職すると明
  らかになったのは2017年3月でした。当時の経緯につい
  て、複数の英語メディアがフェイスブックからの圧力があっ
  たと報道。フェイスブックが反論する騒動となっています。
   ラッキー氏は2016年9月、米大統領選で反ヒラリー・
  クリントン氏のキャンペーンに1万ドルを寄付し、ドナルド
  ・トランプ現大統領を支持したとされています。その後ラッ
  キー氏は自身の行動のインパクトについて謝罪。トランプ氏
  ではなく、共和党候補のゲーリー・ジョンソン氏に投票した
  と弁明していました。しかし、2017年3月にはフェイス
  ブックからの退社が決まっています。
   それから約1年半。2018年10月、ラッキー氏は、C
  NBCのインタビューに対し、退社は彼の意思ではなかった
  と答えました。さらに、翌11月、ウォール・ストリート・
  ジャーナルは、ラッキー氏が「ジョンソン氏に投票した」と
  いう回答もフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO
  の指示によるものだ、と報じています。これを期にラッキー
  氏は表舞台から追いやられ、最終的には解雇されたというこ
  とです。ただしこの報道に対してフェイスブックは、公式に
  反論。同社のAR/VR部門のアンドリュー・ボスワース氏
  は、11月11日、ツイッターで、「常に明言している通り
  政治的な発言の権利はパルマーに委ねられています。我々が
  彼に事実と異なることを述べるよう、圧力をかけたことはあ
  りません」と述べています。   https://bit.ly/3Dfs5vZ
  ───────────────────────────
TIME誌の表紙を飾るパーマー・ラッキー氏.jpg
TIME誌の表紙を飾るパーマー・ラッキー氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。