2022年10月26日

●「GAFAによる事実上の言論統制」(第5841号)

 10月22日のことです。中国共産党大会の閉幕式で、胡錦濤
前総書記の不自然な議場からの退席がありました。共産党大会は
非公開ですが、閉幕式の一部はメディアに公開されます。胡前総
書記の退席は、メディアが会場に入った直後の出来事です。
 映像を丁寧に見ると、本人は、退出を嫌がっているのに、屈強
なスタッフに無理やり右腕を掴まれて意思に反して退席させられ
たようにしか見えません。本来であればこういうモメ事はメディ
アに見せないようにするものですが、それを党大会に出席する幹
部に対して見せたということは、習近平新体制から幹部へのメッ
セージ──中国共産党青年団派はもういらないというメッセージ
のように思えるのです。実際に、同派の李克強氏、汪洋氏、そし
て首相確実とされた胡春華氏は、いずれもチャイナセブンから外
されています。
 24日になって、新華社はこの退出事件を「胡氏の体調不良」
と伝えていますが、それはツイッターで英語で伝えられ、国内メ
ディアは、この退席事件を封印し、ネットも含めて一切伝えてい
ません。中国国内では、ツイッターは使えないようになっており
新華社があえてツイッターを使ったということは外国向けである
ことは明らかです。ツイッターに代表されるSNSは、中国のよ
うに、国家が介入して、都合の悪い情報は流さないようにもでき
るメディアなのです。
 現代人の9割近い人がインターネットを利用し、自由な経路で
自由に情報を得ていると思っていますが、実際にどのようにして
情報を入手しているかについて考えると、ほとんどGAFAに閉
じ込められてしまっているといえます。
 インターネット上で情報を調べようとする人のほとんどは、グ
ーグルのサーバーに接続し、検索のエンジンを使い、サイトにた
どり着いています。ちなみに、グーグルの世界シェアは92%で
す。フェイスブック(現メタ)で友達とメッセージを交わそうと
すると、フェイスブックのサーバーに接続し、そこに多くのプラ
イベートの情報を残すことになります。さらに、ネットで何か買
い物をしようとすると、日本人の40%以上は、アマゾンのサー
バーと対話することになります。
 スマホから情報を得るには、そのためのアプリをダウンロード
する必要があります。そのアプリは、次のマーケットから入手す
ることになります。しかし、そのほとんどは、アップストアか、
グーグルプレイから入手しています。
─────────────────────────────
            アップストア
           グーグルプレイ
        アマゾンアプリストア
        マイクロソフトストア
               その他
─────────────────────────────
 これらの情報の提供者であるGAFAは、一定の規約に従って
流す情報を制限しています。社会に悪影響を与えると考えられる
情報などは制限し、流さないようにすることができます。この基
準が甘いと、GAFAにとって都合の悪い情報を流さないように
することも可能です。ユーザーにとっては、無料なので、自分が
検索した情報が出てこないからといって、文句をいう人はいない
はずです。そうなると、GAFAが見てよいと判断する情報しか
ユーザーは読めないことになります。現在のインターネットであ
るWeb2.0 はそういう世界です。これは、それだけGAFA
の力が強いことを意味しています。
 もし、GAFAの規約に従わないで、問題のある情報を発信し
続けたとすると、最悪の場合、トランプ前米大統領がツイッター
フェイスブック、ユーチューブから公式アカウントを停止された
ように、事実上インターネットが使えなくなります。このように
インターネットが使えなくなることを「グーグル八分」といって
います。実際問題として、もし、グーグルが一切使えなくなると
インターネットの利用は困難になります。
 実は、グーグル傘下のユーチューブは、各国の国家機関と連携
して、不適切な投稿動画を削除するため、日本の法務省を「公認
報告者」として2021年に認定しています。日本の国家機関が
公認報告者になることははじめてのことです。これが過度に過ぎ
ると、言論の自由の阻害になります。朝日新聞デジタルの記事を
以下に示します。
─────────────────────────────
 動画投稿サイト「ユーチューブ」に不適切な投稿の情報を提供
する「公認報告者」として、法務省が運営会社のグーグルから認
定を受けた。日本の政府機関では初めて。後を絶たないネット上
の誹謗(ひぼう)中傷に対し、同省は巨大IT企業と連携を進め
ることで対策の強化を図りたい考えだ。
 ユーチューブは、自動検出システムやユーザーからの情報提供
により、差別表現や嫌がらせなどの不適切な投稿を見つけ、ガイ
ドラインに違反していないか審査のうえ削除している。情報提供
の実績から信頼できると判断した個人や団体を公認報告者に認定
しており、その情報は優先的に審査される。
 法務省は、ネット上の投稿について全国の法務局で相談を受け
て対応を助言しているが、中でも個人で解決が難しいものについ
ては違法性を調査のうえ、サイトやSNSの事業者、プロバイダ
に削除を要請している。グーグルから認定を受けたことで、より
効果が上がることが期待される。
 同省が人権侵害の疑いがあると判断した相談は、昨年1年間に
1693件。2011年の636件から増え続けて17年には、
2217件と過去最多を記録し、その後も高止まりの状況が続い
ている。(伊藤和也) ──2121年4月30日付、朝日新聞
                  https://bit.ly/3z3UyDt
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/017]

≪画像および関連情報≫
 ●GAFA規制「12の論点」
  ついに姿を表した新しい枠組みとは
  ───────────────────────────
   グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのGAF
  A各社は、近年のテック大手規制分割論の高まりに対して、
  「政府規制に賛成しながら、そのルールを自ら作る」、「従
  来の自主規制の枠組みを根本から変えるのではなく、運用を
  アップデートする」ことを主張してきた。
   7月23日には米司法省が反トラスト法(独占禁止法)に
  違反していないか、「検索やソーシャルメディア、ネット小
  売」に対する調査を開始したと発表した。それぞれグーグル
  フェイスブック、アマゾンを指すものと解釈されている。ユ
  ーザーの不利益を、従来より幅広く解釈する姿勢を打ち出し
  た。その一方で、翌7月24日には米連邦取引委員会(FT
  C)のフェイスブックに対するプライバシー侵害を巡る調査
  が終了し、制裁金50億ドル(約5400億円)の和解案で
  合意がなされ、事実上の自主規制を同社に認める形で調査が
  決着した。
   これは、フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執
  行責任者(COO)が、「弊社は世界各国の政府と協力して
  正しいルールの制定に努力している」と述べるなど、規制さ
  れる側がそのルールの決定や運用に関与すべきとの立場を追
  認したものだ。さらに各社は市場独占を防ぐ規制分割論に対
  する強固な反論を用意している。複数の米メディアに挙げら
  れた主張をまとめてみた。   https://bit.ly/3F7NN7C
  ───────────────────────────
胡錦濤前総書記/不可解な退出.jpg
胡錦濤前総書記/不可解な退出
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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