は、約100年以上前に「ニューヨーク・タイムズ」上で、「無
線の未来」というタイトルで、次のコラムを書いています。読ん
でみてください。
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無線技術が発達すれば、ニューヨークのビジネスマンがロンド
ンのオフィスへ瞬時に指示を出すことが出来る。時計より小さい
その機械で音楽や歌、政治指導者のスピーチ、牧師の説教を遠く
どこからでも聞くことが出来る。また、同じようにして任意の画
像・図面・プリントを1つの場所から送信することも可能であり
それを一つの機械から万人へ送信することも可能になるだろう。
今後数年間の技術が良い発展を遂げるなら、私たちはそのような
未来を確信することが出来ると思う。 https://bit.ly/3F8Fgl2
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このなかで「時計より小さいその機械」というものは、どうみ
ても現代のスマホです。その機械で音楽も聴けるし、写真や画像
などもどこへでも送れる──100年前といえば、1922年、
当時は電話が発明された程度で、まだラジオすらなかった時代で
す。これによっても、ニコラ・テスラが、いかに稀有な天才だっ
たかがわかります。ちなみに、日本における初めてのラジオは、
1925年(大正14年)3月のことです。ニコラ・テスラがそ
の時代に既にスマホの出現を予言していたとは驚きです。
ニコラ・テスラは、生涯独身を通し、家を持たず、ホテル住ま
いだったといいます。当初は、支援者も多かったものの、あまり
にも突飛な発明も多く、次第に支援者が離れ、最後は料金の安い
ホテルで孤独死しています。
このようなニコラ・テスラの生涯を本を読んで知って、涙した
12歳の少年がいたのです。エジソンを超える能力を持ち、卓越
した技術のアイデアを持っていても、ビジネスのノウハウがない
と成功できないとその少年は悟ったのです。その少年こそ、後の
グーグルの創業者、ローレンス・エドワード・ペイジ氏です。通
常、彼はラリー・ページといわれています。
ラリー・ページ氏は、ミシガン大学卒業後、スタンフォード大
学計算機科学の博士課程に進学し、ウェブのリンク構造、人間と
コンピュータの相互作用、検索エンジン、情報アクセス・インタ
フェースの拡張性、個人的なデータのデータマイニング手法など
を研究しています。
そのとき、同じくスタンフォード大学計算機科学の博士課程に
在籍していたセルゲイ・ブリン氏と出会い、次のタイトルの論文
を共著で書いています。
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ラリー・ページ/セルゲイ・プリン共著
『大規模なハイパーテキスト的なウェブ検索エンジン
に関する分析』
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そして、1998年にラリー・ページ氏とセルゲイ・プリン氏
は、共同でグーグル社を設立。従業員が200人程度になったと
き、そのとき既に経営者として経験豊富なエリック・シュミット
氏を誘い、グーグル社の最高経営責任者に擁立したのです。20
01年8月のことです。
エリック・シュミット氏は、サン・マイクロシステムズ社の最
高技術責任者と執行役員、1997年からソフト開発会社のノベ
ル社の最高経営責任者を務め、重要な経営戦略や技術開発の中心
的な役割を果たしていた人物です。ラリー・ページ氏は、ニコラ
・テスラの例にならい、経営にその道のプロを招聘したのです。
エリック・シュミット氏のグーグル参加は、今から考えると、
絶妙のタイミングだったといえます。そのときの様子について、
小林雅一氏は次のように述べています。
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当初、グーグルは利益を度外視して検索エンジンの精度やスピ
ードの向上、ユーザーインタフェースの改良などに専念した。こ
れによって、グーグル検索の利用者数はうなぎ上りに増加した。
人々はパソコンを起動すると同時に、ブラウザーを開いてグーグ
ルから暮らしや仕事の情報を漁るようになった。それまでの「ウ
ィンドウズ」のようなOS(基本ソフト)に代わって、グーグル
検索が無数のユーザーとコンピューターを結び付ける事実上のプ
ラットフォームと化した。
しかし爆発的に増加する利用者とトラフィックに対応して高速
サーバーや大容量のディスクスペースを続々と買い足すなど、グ
ーグルは巨額の設備投資に迫られ、当初の資金は瞬く間に失われ
ていった。利用者ばかりが増え、一向に利益を生み出す気配のな
いグーグルに、クライナー・パーキンスをはじめ大口の投資家た
ちはしびれを切らしはじめた。 ──小林雅一著
『グーグルのビジネス戦略』
──出井伸之監修/『進化するプラットフォーム』
角川インターネット講座
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エリック・シュミットCEOが、ラリーページとセルゲイ・プ
リンの2人と相談して始めたのが検索連動広告「アドワーズ」で
す。これは、簡単にいうと、ユーザーが入力する検索キーワード
に関連するシンプルなテキスト広告をPC画面に表示するという
ものです。その表示スペースは、オークション形式によって提供
され、高い料金を受け入れた広告主に対しては画面の上位から目
立つ表示スペースを割り当て、ユーザーからクリックされた回数
に応じても広告にはよい場所が提供されるというものです。
このアドワーズは、これまでテレビや新聞などのお金のかかる
広告スペースを買うことができなかった中小企業や個人事業主に
人気が出て、グーグルのドル箱となり、2002年には創業以来
初めての黒字化に成功しています。
──[ウェブ3/メタバース/016]
≪画像および関連情報≫
●「10倍のスケールで考える」/Googleが革新的なプロダ
クトを生み出すために心がけていること
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サルマン・カーン氏(以下、サルマン):10〜15歳ぐら
い世代が違う人として知恵を分けていただきたいのですが
グーグルのすごいところはエリック、ラリー、セルゲイの
三頭政治だと思うのです。従来のビジネス論から見ると難
しいですし、何か判断をする時も大変だと思います。どう
やって行われたのですか?
エリック・シュミット氏(以下、エリック):私が語らなく
とも、ちゃんと機能しているという結果が、何より物語っ
ていると思います。チームとしてのリーダーシップは、説
得力ではなく成果で評価するべきです。何も言わずに責務
を果たすチームは評価されるべきです。
もうひとつ思うのは、世界的にもこの業界においても成
功する会社は、複数のリーダーがいる会社だと思います。
メディアはひとりの人物を持て囃しがちです。もちろんそ
の人も賞賛されるべきですが、実際は数人で動いているの
が実情なのです。
ラリーとセルゲイと共に築き上げた関係性の中では、お
互いの意見をたくさん言い合います。会社としても、オー
ナーとしても、勝つために言い合っていることを認識して
いたから、お互いの動機に対する疑問は一度も抱いたこと
はありません。具体的な戦略で揉めることはありましたが
それはむしろとても良いことです。
https://bit.ly/3TPuRif
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エリック・シュミット氏