2022年10月21日

●「ウェブ基盤技術関連の3つの技術」(第5838号)

 今やインターネットといえばWeb(ウェブ)の時代です。こ
のウェブに関連する基盤技術を開発した人がティム・バーナーズ
=リー氏です。ウインドウズ95に付属していたブラウザには、
デスクトップ上で「インターネット」というラベルが付けられて
いたので、ユーザーは「インターネット=ウェブ」だと思うよう
なったといいます。
 しかし、ウェブの登場は、それ以前からインターネットにかか
わってきた人々にとっては、あまり愉快なことではなかったよう
です。これについて、日本のインターネットの草分けといわれる
村井純慶応義塾大学名誉教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ウインドウズ95とともに、インターネットの利用者は急激に
増加したが、早くからインターネットにかかわっていた技術者は
少々苦い思いでいた。(中略)長い年月をかけて基礎技術を積み
上げてきたインターネット屋にしてみれば、ブラウザーの背後で
動いているインフラのほうこそがインターネットなのだ。まだ簡
素なマークに従って文書を表示するばかりであったウェブが、イ
ンターネットと思われるのは面白くなかった。それは日本でも同
じである。インターネットコミュニティは、ウェブが「お嫌い」
だった。このため、ウェブ記述に使うHTMLの標準化も、ウェ
ブ技術の標準化団体であるW3Cに押し出した形になった。イン
ターネット屋とインターネット利用者の乖離の始まりである。
           ──村井純著『インターネットの基礎/
  情報革命を支えるインフラストラクチャー』/角川学芸出版
─────────────────────────────
 要するに、インターネットはインフラであり、ウェブ、すなわ
ち、WWWはそのインフラの上に築かれたものであるという考え
方です。そのインフラとしての基礎技術を積み上げてきた人々に
とってWWWは、あまり面白くはなかったようです。
 ティム・バーナーズ=リー氏の開発したウェブ基盤技術の3つ
を再現します。
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   @ URL ・・ ウェブページの所在地指定記号
   AHTTP ・・ 通信のさいの転送のプロトコル
   BHTML ・・ ウェブページ作成のための言語
─────────────────────────────
 これら3つの技術は、ウェブサイトにアクセスし、それを表示
させる技術です。添付ファイルにしたがって説明します。
 クライアントは、ブラウザを起動し、インターネット上のもの
や情報の位置を示す「URL」を指定し、インターネット上にあ
るウェブサーバーに対して、コンテンツを取り寄せる方法である
「HTTP」で送信リクエストを行います。なお、URLは「U
RI」ともいいます。
 ウェブサーバーは、その送信リクエストを受け付けて、指定の
「HTML文書」(HTMLで記述された文書)をHTTPでク
ライアントに送信してきます。そして、クライアントは、その送
信されてきたHTML文書をディスプレイに送信させるのです。
 これら3つの技術のうち、HTML文書の概念は、米国の社会
科学者にして思想家のテッド・ネルソンが実現しようとしていた
ハイパーテキストのアイデアからティム氏がヒントを得て、ウェ
ブサイトを発明しています。これについて、村井純教授は次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 HTML文書の最も大きな特徴は、情報の断片から別の情報の
断片へとリンクをたどっていけることだ。この概念はすでにテッ
ド・ネルソンが1960年から実現しようとしてきたハイパーテ
キストというシステムに見ることができる。ネルソンは、決まっ
た順番で情報を読むのではなく、人の思考に沿って、どこからで
も読み始められ、好きな情報にわたり歩け、しかも改訂ができる
壮大な文献システムをコンピューターネットワークの上につくり
たかったのだ。
 CERNに滞在していたティム・バーナーズ=リーは、そのハ
イパーテキストのアイデアに触発され、それを実現するHTML
という簡便な方法を考えた。そしてマーク・アンドリーセンらが
そのHTML文書を解釈して表示するモザイクというブラウザー
をつくつたのである。それが、現在のブラウザーの始祖である。
HTTPという通信手順はそのときにできた。
          ──村井純著/角川学芸出版の前掲書より
─────────────────────────────
 クロード・シャノン、ポール・バラン、ティム・バーナーズ=
リー、ボブ・メトカーフ、そして村井純──これらの名前を現代
の大学生に問うと、ほとんど誰も知らないのが実情です。ちなみ
に、クロード・シャノンは情報工学理論の創始者で、情報の最小
単位「ビット」の概念の考案者、ポール・バランはパケット交換
方式の開発者、ティム・バーナーズ=リーはウェブサイトの開発
者、ボブ・メトカーフはイーサネット(LAN)の開発者、そし
て村井純氏は、日本のインターネットの普及・発展に尽くしてい
る「日本のインターネットの父」といわれる人物です。いずれも
現代のITの発展に不可欠な「ITの偉人」ばかりですが、なぜ
現代人が知らないのかというと、学校でインターネットそのもの
について、教えていないのだと思います。
 現代は、インターネットなしには1日も暮らせないほど、イン
ターネットが深く浸透しています。そのインターネットは、どの
ような経緯で誰が考案し、どのようにして実用化されたかという
インターネットの歴史について知ることは、非常に重要であると
考えます。そうでないと、既にウェブ3という新しいインターネ
ットの時代に入っている現代を生き抜くことが難しくなります。
PC、タブレット操作やプログラミングも大切ですが、インター
ネットの歴史についても小学生から教えるべきです。
           ──[ウェブ3/メタバース/014]

≪画像および関連情報≫
 ●ホームページ制作の歴史
  ───────────────────────────
   アメリカ国防省のサポートを得てW3Cを設立し、今では
  世界で約400社以上のW3Cメンバー企業との共同運営で
  進められています。設立場所がアメリカでしたので、Web
  はイギリス生まれ、アメリカ育ちという事になります。
   Webに関わる数え切れない位の会社やサービスが誕生し
  て来ましたが、2014年は、W3CがHTMLのルールを
  作り始めて20年の節目になります。
   2014年10月28日にW3Cが「HTML5」という
  次世代HTMLの仕様を完全に決め、規格文書が公式に発表
  されました。「HTML4.01」 1999年にリリースさ
  れていますので、ここまで大きいリリースは、約15年ぶり
  になります。
   HTML5は、Webサイトを作るための役割だけでなく
  ウインドウズやマック、アンドロイドやアイフォーンなど環
  境に依存せず、ブラウザさえあればアプリも動く事のできる
  言語でもあります。テレビ、カーナビ、エアコン、洗濯機な
  ど、PCハードの環境を備えていれば、どこにでもブラウザ
  を載せて、Webと繋げられるのです。プラグイン等を利用
  しなくてもブラウザで動きます。それらに技術は業界の垣根
  も飛び越えます。        https://bit.ly/3TyfieD
  ───────────────────────────
ウェブサイトはどのように表示されるか.jpg
ウェブサイトはどのように表示されるか
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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