2022年10月19日

●「情報流通インフラインターネット」(第5836号)

 情報流通のネットワークにおいて、物流インフラの道路に該当
するのがインターネットです。しかし、インターネット上に各種
の情報をそのまま流すことはできません。ミネラルウォーターを
入れる容器(ペットボトル)が必要であったように、情報によっ
てそれぞれ容器、入れ物が必要になります。
 例えば、映像や音声のデータの圧縮規格であるMPEGや、M
PEGで使われている音声圧縮規格のMP3は、まさにその入れ
物に該当します。これらは、映像や音声コンテンツをデジタル化
してインターネット上に流すためのフォーマットになります。
 スカイプ(Skpe)というサービスがあります。2021年7月
にサービスを終了していますが、インターネットを使って音声通
信ができます。なお、音声通信はLINEでも可能です。スカイ
プではコンテンツである音声を運ぶための入れ物としてGIPS
社の音声符号化方式を採用しています。これによりパケットネッ
トワーク上で、リアルコミュニケーションが可能になります。
 さて、ミネラルウォーターの蛇口に当たるものとしては、各種
ヘッドセットがありますし、スマホ上でソフトウェアを起動すれ
ば、そのまま電話機が蛇口になり、耳に音声が流れます。手順と
してはP2P方式などのプロトコルを使っています。P2P方式
は、サーバーがないノード(ネットワークに参加しているPC)
による協調動作によって機能する通信モデルです。
 興味深いのは、公共の普通の水道水の供給サービスと、ミネラ
ルウォーター宅配サービスが、通信インフラである電話と、スカ
イプによる音声通話サービスとよく似ていることです。これは、
情報通信の分野では、今やインターネットは、オープンインフラ
になっており、あらゆる可能性があります。これに関して、II
Jイノベーションインスティテュート代表取締役、浅羽登志也氏
は論文のなかで、次のように述べています。
─────────────────────────────
 オープンインフラの特徴はすべてインターネットにも当てはま
る。例えば、道路が車に何が積まれているかを関知しなかったよ
うに、インターネットもパケットに含まれるデータがどんなもの
かについて関知しない。だからこそ、映像だろうが音声だろうが
何だろうが、インターネットという共通のネットワークの上で流
すことができる。ただ、そのための情報表現フォーマット、ユー
ザーインターフェース、そして、流通のためのプロトコルさえ決
めればよいのである。
 すると、放送網という専用ネットワークで流されていたテレビ
映像も、電話網という専用のネットワークで流されていた音声も
インターネットというひとつの汎用のネットワークの上に融合す
ることができる。(中略)まったく同じサービスを作る必要はな
く、むしろこの新しい付加価値に着目し、そこを伸ばしていくよ
うな発想の方が重要となる。        ──浅羽登志也著
         『社会の基盤OSとしてのインターネット』
      ──出井伸之監修/『進化するプラットフォーム』
                  角川インターネット講座
─────────────────────────────
 インターネットの商用サービスが始まったのは、1990年代
のことです。1989年には、世界初のインターネット・サービ
ス・プロバイダ(ISP)のPSIネットが発足しています。も
ともと米国の国防総省(ペンタゴン)でインターネットの開設に
従事していた人物が設立した企業です。
 インターネットといえば、米国のイメージが強いですが、その
研究・利用に関しては、日本もけっして遅くはないのです。19
84年、東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学が実験的にネッ
トワークを結び実現した「JUNET」、1988年の産学協同
プロジェクト「WIDEプロジェクト」がスタートを切っていま
す。いずれも、村井純慶応義塾大学名誉教授が設立しています。
 もっとも商用接続サービスがスタートした時点では、1990
年代前半のインターネットユーザーは、エンジニアやIT系企業
などのITリテラシーの高い層に限られていたのです。
 ISPにしても、その頃はインターネットにつなぐことだけが
サービスのすべてだったのです。その当時のインターネットの利
用の状況について、浅羽登志也氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 これは道路の比喩でいえば、どこにもつながっていなかった自
宅の前の私道を最寄りの公道につないでもらったので、車を運転
して自由にどこにでも行けるようになった、というのと同じ状態
である。そこから先はユーザーが自分で考えて自分で行動しなけ
れば何もできない。これと同じように、インターネットにつなが
っても、電子メールを使いたければ、自社内でメール配信を行う
ためのサーバーを立ち上げて、ISPのメールサーバーに接続し
クライアントソフトウェアも入手して、その設定も自分でやらな
ければならなかった。情報サービスを利用したければ、そのサー
ビスを利用するために必要なソフトウェアを入手し、サーバーの
ドメイン名など必要な情報を調べ、ソフトウェアの設定を自分で
行わなければならなかったのだ。      ──浅羽登志也氏
   ──出井伸之監修/角川インターネット講座の前掲書より
─────────────────────────────
 どんな技術でもそうですが、その初期の使い勝手はけっしてよ
くないものです。当時のインターネットは、そのプロトコルであ
るTCP/IPプロトコルをよく理解した人でないと、利用する
ことは難しかったのです。
 初期のこのように使い勝手の悪かったインターネットを素人で
も使えるように劇的に変えたのは、ティム・バーナーズ=リー氏
の開発によるWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)だっのです。
WWWについては、明日からのEJで述べることにします。
           ──[ウェブ3/メタバース/012]

≪画像および関連情報≫
 ●インターネットの歴史と発展/IIJ
  ───────────────────────────
   インターネットが発展してきた今日、もはやインターネッ
  トがない世界を想像すらできなくなってしまいました。いま
  や検索だけでなく、ビジネスや金融、公共サービスなど、イ
  ンターネットは、ありとあらゆるものに関係しています。電
  気・ガス・水道に次いで生活に欠かせないものになっている
  といえるでしょう。
   では、インターネットが普及する前は、コンピュータ同士
  の通信はどのような方法が使われていたのでしょうか?
   当時のコンピューターネットワークは、特定の目的のため
  にコンピュータを個別に接続したものを指していました。例
  えば、銀行預金の確認用ネットワークであれば預金確認のみ
  商品発注のネットワークであれば商品発注のみのネットワー
  クで、用途に限ったネットワークだったのです。
   なお、日本で初めてコンピュータのネットワークが実用化
  されたのは、1964年の東京オリンピックだと言われてい
  ます。各会場での競技結果を集計し、放送センターに集まっ
  た各国のマスコミに向けて、情報を伝えるための専用ネット
  ワークとして作られたものでした。そもそもインターネット
  は研究目的で作られたもの。それまで専用のネットワークだ
  ったものを、汎用性のあるものにしようということが研究目
  的のひとつでした。      https://bit.ly/3expTYu
  ───────────────────────────
インターネットの歴史.jpg
インターネットの歴史
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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