2022年10月18日

●「情報通信インフラとしてのネット」(第5835号)

 昨日に続いて、電気・ガス・水道のライフライン・インフラ、
それよりもオープン性の高い鉄道や道路などの生活に不可欠な移
動インフラと、インターネットを含む情報流通インフラとを比較
することにします。代表的な情報流通インフラとしては、放送、
電話、インターネットがあります。
 ここでの記述は、次の論文を参考にして、記述していることを
お断りしておきます。
─────────────────────────────
  (株)IIJイノベーションインスティテュート代表取締役
浅羽登志也氏の論文『社会の基盤OSとしてのインターネット』
      ──出井伸之監修/『進化するプラットフォーム』
                  角川インターネット講座
─────────────────────────────
 はじめに「放送」について考えます。
 「放送」には、ラジオ放送とテレビ放送がありますが、放送で
は、同じ内容の情報を多くの人に一斉に伝えるサービスを提供し
ます。このサービスを提供する事業者、すなわち放送局は、国か
ら特定の周波数帯の電波の割り当てを受けており、その周波数帯
を使って、放送サービスを提供しています。
 放送局は、電波を発信するためのインフラの構築と、どの曜日
の、どの時間帯に、どの番組を放送するかのサービスの構成や管
理を行い、さらにコンテンツとしての番組の製作までを一貫して
行っています。つまり、放送局は、トランスポートインフラ、サ
ービス制御、コンテンツの全てを管理しているのです。
 この放送に、視聴者であるエンドユーザーが入り込む余地はほ
とんどないといえます。ユーザーが放送に参加する視聴者参加番
組というのはありますが、生中継番組は別として、放送における
視聴者の言動をどこまで流すかに関しては、放送局側の判断で決
められます。つまり、放送局が不適切と判断するコンテンツは放
送されないことになります。
 「電話」について考えます。
 電話や電信は、特定の個人やデバイスを通信回線でつなぎ、そ
の間の通話や電信を媒介するサービスです。通信ネットワークイ
ンフラの構築や電話・電信サービスのコントロールは、すべて通
信事業者が行いますが、コンテンツである通話や電信の内容は、
犯罪にかかわるものは別として、ユーザーが自由に流すことがで
きます。つまり、コンテンツはユーザーが自由に持ち込むことが
できるのです。
 続いて、インターネットのケースを考えますが、その前にミネ
ラルウォーター宅配サービスを例として取り上げます。添付ファ
イルの図を参照してください。
 水は生活インフラとして、水道会社から水道管のネットワーク
を通して全家庭に供給されています。これをユーザーの観点で見
ると、ユーザーは水道の蛇口をひねるだけで、いつでも浄水が得
られるようになっています。
 これに対して、ミネラルウォーターをいつでも飲める宅配サー
ビスがあります。このサービスは、既に実施している業者が複数
あり、利用者が増えつつあります。
 この場合のコンテンツはミネラルウォーターです。業者の立場
に立って考えると、ミネラルウォーターを精製する必要はなく、
第三者から仕入れることも可能です。この場合、次の3つの問題
を解決することが必要になります。
─────────────────────────────
 @ユーザーに届けるミネラルウォーターの容器をどうするか
 Aユーザーにどのようなインターフェースで水を提供するか
 Bユーザーにどういう手順でミネラルウォーターを届けるか
─────────────────────────────
 @のミネラルウォーターの容器としては、専用の大きなペット
ボトルを作り、それを配送するためのトラックを用意します。そ
して道路を使って定期的に家庭に届けます。
 Aユーザーへのインターフェースとして、蛇口が付いたウォー
ターサーバーが必要になります。これは、ユーザーにレンタルし
てもらうなどの方策が必要になります。ユーザーは、定期的に業
者から届くペットボトルをさかさまにしてウォーターサーバーに
セットし、サーバーの蛇口をひねると、ミネラルウォーターが出
てくる仕組みになっています。サーバーによっては、冷水と温水
の両方が出るものがあり、これがセットされると、いつでも冷水
でも温水でも飲むことができます。この場合、蛇口は2つ付くこ
とになります。
 Bのミネラルウォーターの届け方は、宅配のトラックが道路と
いうオープンなネットワークインフラを使って契約宅に定期的に
届けることになります。
 このようにして、上記の3つの問題はすべて解決できます。こ
のミネラルウォーター宅配システムを採用したユーザーの立場に
立つと、家庭には生活インフラとして、いつても水が供給されて
いることに加えて、飲み水については、冷水でも温水でも専用の
サーバーから供給されることになります。
 このサービスは既に実現されています。ジャパネットたかたの
「富士山の天然水定期配送サービス」です。初期費用、冷水温水
付きサーバーレンタル料、水の料金(月3本の場合)、配送料金
全て込みで、毎月4000以下でこのサービスが受けられます。
なかなかよく考えられているサービスであると思います。
 といっても、ここでは、ミネラルウォーター宅配サービスその
ものを宣伝するのが目的ではなく、情報流通インフラとしてのイ
ンターネットの可能性についての説明用モデルとして、このサー
ビスを説明しています。
 インターネットは、情報流通ネットワークインフラにおいて、
物流インフラの道路のような役割を目指すので、明日のEJから
この例を参考に説明していきます。
           ──[ウェブ3/メタバース/011]

≪画像および関連情報≫
 ●インターネットを支える 通信インフラ/樋口雅文氏
  ───────────────────────────
   1992年に日本初の商用インターネットサービスが開始
  されてから約18年が経った。現在では多くの企業や個人に
  インターネットが利用されるようになり、インターネットは
  社会的インフラの一つとして認知されるに至っている。電子
  メールやWWWなど、インターネットを基盤とするアプリケ
  ーションを多くの人が使うようになり、それらのアプリケー
  ションに依存して、生活やビジネスが運営されている場面も
  多くなった。そのため、インターネットが安定的に運用かつ
  提供されることが社会にとって必然ともいえる状況ができあ
  がっている。本稿では、インターネットサービスを支えるイ
  ンフラ、更に安定してサービスを提供するために用いられる
  技術について解説する。
   まず、日本のインターネットがどのような構造をもってい
  るかについて説明する。大きく分けて以下の三つの部分に分
  けてとらえられる。
   @アクセス系ネットワーク/ユーザのオフィス・自宅から
  ネットワーク拠点(多くの場合、通信事業者の局舎など)ま
  でをつなぐネットワーク。Aアクセス系ネットワーク/全国
  に点在するネットワーク拠点を、相互に接続するネットワー
  ク。Bインターネットデータセンタ/ネットワークそのもの
  ではないが、ネットワークにユーザが接続する際に行う認証
  設備や、利用実績に基づき課金を行うための設備、またサー
  ビスの管理・監視等を行う設備を収容するビルで、バックボ
  ーンネットワークの中核近くに存在する。
                 https://bit.ly/3RZPp69
  ───────────────────────────
道路を用いたミネラルウォーター宅配サービス.jpg
道路を用いたミネラルウォーター宅配サービス
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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