則」です。ところで、ロバート・メランクトン・メトカーフ(メ
トカフ)とは何者でしょうか。
メトカーフ氏は、米国の電気工学エンジニアで、パロアルト研
究所在籍時に、イーサネット、すなわち、LANの開発者として
知られています。メトカーフの法則というのは、既に何回もご紹
介しているように、次の内容です。
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ネットワークの価値は、そのネットワークに接続するユーザー
数の2乗に比例する。 ──メトカーフの法則
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FAXを例にして解説します。FAXは自分一人が持っていて
も誰とも送受信できず、メリットはありません。したがって、こ
のときのFAXによるネットワークの価値は「0」です。
友達の1人がFAXを購入したとします。そうすると、その友
達とはFAXによる送受信ができるので、送信と受信を別に数え
て、ネットワークの価値は「2」になります。
さらにもう一人の友達がFAXを購入したとします。3人がF
AX持っているので、3人がそれぞれ自分以外の2人と送受信で
きることになり、ネットワークの価値は「6」になります。式で
書くと次のようになります。
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ネットワークの価値=n×(n−1)
ネットワークの価値=
FAXの全ユーザー数×(ユーザー数−1)
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仮に10人がFAXを持っていると、[10×(10−1)=
90]となり、ネットワークの価値は90になります。nが十分
大きくなると、「nの2乗」と一致するため、冒頭のネットワー
クの法則の定義になります。
ここで重要なのはユーザーの数によるネットワークの価値の増
大が、コストの増大をはるかに上回るということです。このケー
スにおけるコストは「FAXの単価×台数」と考えられるので、
ユーザーの数に比例して増加します。しかし、ネットワークの価
値の増大は、ユーザー数の2乗に比例し、指数関数的に増えるの
で、コストの増大を大きく上回ることになります。
添付ファイルをご覧ください。これは、NTTデータ経営研究
所が発表したネットビジネスのユーザー数と売上高の推移を表し
たものです。これは、クックパッド、LINE、フェイスブック
(現メタ)について、ユーザー数の推移(上)と売上高(下)を
示しています。いずれも、ユーザー数及び売上高が、時間の経過
とともに、指数関数的に増加していることがわかります。
これを見ると、ビジネスの初期段階でいかに多くのユーザーを
獲得するかが、ビジネスの成否のカギを握ります。したがって、
初期の段階において、誰もが参加できるプラットフォームをネッ
ト上に用意し、そのプラットフォーム上で、多くの「無料サービ
ス」提供し、ユーザーを囲い込み、ユーザー数を劇的に増加させ
るのです。
確かに、プラットフォーマー企業は、初期のシステム開発やデ
ーターセンターのコスト、あるいは広告費など、初期コストは膨
大ですが、ユーザーが増えてくると、メトカーフの法則が働いて
コストの割合はどんどん減り、利益率は大きく押し上げられるこ
とになります。
かつてのものづくり大国の名をほしいままにした日本の製造業
とGAFAに代表されるプラットフォーマー企業とを天動説と地
動説の例で説明しているレポートがあります。アクセンチュア株
式会社製造・流通本部特別顧問の川原崎由博氏のレポートの一部
をご紹介します。興味があれば全文を読むことができます。
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かつて日本の製造業が元気だった時代と現在を、天文学の「天
動説」と「地動説」にたとえて比較してみましょう。「天動説」
の時代は、たとえば自動車産業であれば、自動車メーカーを頂点
に巨大な業界が形成され、中古車販売、レンタル、メンテナンス
保険、金融などの関連業種がその下に連なっていました。自動車
会社はそのヒエラルキーの内部で完結する「企業中心」、「自己
完結型」のスキームを構成し、優れた製品を作り、消費者に提供
してさえいれば、十分な利益を確保することができたのです。
一方、現在のプラットフォーマーの世界は「地動説」です。こ
れはサプライ側の企業ではなく、サプライチェーンの外側にいる
顧客や消費者といったステークホルダーが中心となって動かす世
界です。まず、消費者中心の社会・生活があって、その周囲をメ
ディアや家電製品、あるいはレジャー、コミュニケーションとい
ったさまざまな領域の製品やサービスが取り囲んでいます。ここ
では消費者が主役であり、自動車でさえ「モビリティ」という1
つの領域の構成要素に過ぎません。
この世界を支配しているのが、いま「プラットフォーマー」と
呼ばれている新しい企業です。プラットフォーム企業は従来の企
業ヒエラルキーのさらに上位に君臨し、メーカーなどの企業群を
その配下に従えてコントロールする、いわば超越的な存在です。
この劇的な地位交代に戸惑う方も少なくないでしょう。しかし、
これこそがまぎれもなく現在の市場の「世界」なのです。
https://accntu.re/3rMtRPQ
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日本のビジネス界は、このWeb2.0 の波に完全に乗り遅れ
ています。これから脱却するには、これまで積み重ねてきた経験
値や世界観そのものを、変更するというレベルではなく、一度す
べてを捨て去って、ゼロベースで考える必要があると、川原崎由
博氏はいっています。急がないと、既にWeb2.0 の世界が終
了し、Web3.0 の世界に入ろうとしているからです。
──[ウェブ3/メタバース/009]
≪画像および関連情報≫
●プラットフォーマー勝者の法則コミュニティとネットワー
クの力を爆発させる方法
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もともと伝統的な小売業者、製造業者だった彼らは、いか
にしてプラットフォーマーとなったか。ビジネスモデルを設
計、点火、上昇、安定させる方法(ロケットモデル)を明らか
にする。
ウーバーは世界最大のタクシー会社だが、クルマを1台も
所有していない。フェイスブックは世界一の人気メディアだ
が、コンテンツをまったく生み出さない。アリババは世界一
の流通企業だが、在庫を全く持たない。エアビーアンドビー
は世界最大の宿泊提供者だが、不動産を所有していない。
――トム・グッドウィン(ゼニスメディア副社長)
プラットフォーム自体は生産も販売もしないが、2つ以上
の顧客グループ(ウーバーならドライバーと乗客)を誘致し
て仲介し、お互いに取引できるようにすることで、大きな価
値を生み出している。本書は、プラットフォームビジネスと
伝統的ビジネスモデルの違い、そこで働く経済原理、プラッ
トフォームビジネスならではの成功法則(ライフステージご
とに直面する課題と対応策)を明らかにする。
たとえば、プラットフォームを立ち上げるために必要な手
間と労力。それは「ロケット」の打ち上げにも匹敵する。2
つ以上ある市場(サイド)に人を集め、それぞれに拡大策とマ
ーケティングを実施する必要がある。プラットフォームを始
動するというのは、2つの会社を同時に起業するようなもの
だと言ってよい。 https://bit.ly/3VdmvT7
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ネットビジネスのユーザー数と売上高の推移