ついて、詳しく考えます。
はじめにシンプルな例から考えてみます。50人の人がいて、
それぞれの人に50人の友人・知人がいるとします。これらの友
人・知人がそれぞれ重複せず──といってもそういうことはあり
得ませんが──名目的につながったとします。そうすると、5回
目のつながりの人数であるNは、これだけで軽く3億人を超えて
しまいます。
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N=50×50×50×50×50=312,500,000人
─→3億1250万人
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続いて、もうひとつ少し複雑な例で考えてみます。
Aさんという人がいます。このAさんが44人の知り合いを持
っているとします。そのAさんの知り合いであるZさんたち44
人が、Aさんとも互いに重複しない知り合いを44人持ち、Zさ
んの知り合いであるYさんが、AさんともZさんとも互いに重複
しない知り合いを44人持っているとします。さらにYさんの知
り合いであるXさんが、AさんともZさんともYさんとも互いに
重複しない知り合いを44人持っているとする・・・このように
続けて6次まで行くと、その間接的知人は次のようになります。
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44の6乗=7,256,313,856人
─→72億5631万3856人
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72億といえば、地球の総人口(70億人/国連人口部/20
11年現在)を超えています。このケースは44人ですが、それ
ぞれの人が持つ重複しない知り合いの数を23人にすると、次の
ようになります。
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23の6乗=148,035,889人
─→1億4803万5889人
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これは、日本の総人口(1億2805万7352人/2010
年国勢調査にもとづく2010年10月1日現在の確定値)を上
回ってしまいます。
このような現象を「六次の隔たり」といいます。すべての物事
は、6ステップ以内でつながっていて、友達の友達を介して、世
界中の人々と間接的な知り合いになることができるというもので
す。この「六次の隔たり」は単なる仮説ですが、この仮説をビジ
ネスモデルとして採用したのがGAFAです。収穫逓増型ビジネ
スモデルといいます。
従来型のビジネスモデルの場合、規模の拡大を図った先に「収
穫逓減の法則」が待ち構えており、投資効率が次第に悪くなるの
が通例です。それに対して、収穫逓増型ビジネスモデルの場合に
は、一度、損益分岐点を超えてしまえば、それから先は大きな追
加コストをあまり必要としないため、伸びた売り上げのほとんど
全部が利益になります。
ウェブサイトの使いやすさ研究の第1人者であるヤコブ・ニー
ルセン博士のサイトでは、収穫逓増の原理の有効性について、次
の記述があります。
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収穫逓減が支配する世間一般とは違って、ある種の業界には変
わった傾向が見られる。特にソフトウェア業界は、収穫逓増の原
理で動いているようで、取引規模を拡大した方が、得るものも大
きくなるのである。ソフトウェアの製造費(フロッピーやCD)
は、そもそもコードを開発するのにかかったR&Dの費用に比べ
れば、非常に安価だ。従って、本当に儲けようと思ったら数を売
る以外にない。さらに、顧客は大手ベンダーの製品を買うことに
より大きな価値を見出している。なぜなら、そのソフトを使って
いる人が他にもたくさんいるからである。
事業規模を2倍にすれば、多少なりとも2倍に近い価値が出せ
るのだろうか?従来の産業では収穫逓減の原理が働いて、100
%拡大しても、たとえば90%くらいの価値しか生み出せない。
収穫逓増が支配するソフトウェアやその他の産業では、100
%の拡大が、例えば150%の価値を生む。大きいことがいいこ
とかどうか(まあ、だいたいはそうだが)ではなく、大きくなれ
ばどれだけよくなるかが問題なのだ。 https://bit.ly/3VfPUfd
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「収穫逓増の法則」に続いて、「ムーアの法則」について、考
えることにします。
ムーアの法則の公式は、n年後のトランジスタ倍率をpとする
と、公式は次のようになります。
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p=2n/1.5
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この公式にしたがって、時間の経過と倍率を計算してみると、
次のようになります。
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時間 倍率
2年後 ・・・・・ 2.52倍
5年後 ・・・・・ 10.08倍
10年後 ・・・・・ 101.06倍
20年後 ・・・・・ 10321.03倍
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インテルの元CEO、ゴードン・ムーア博士が、この法則を提
唱したのは1965年のことです。この法則と収穫逓増の法則の
関係や、インテルの法則が何をもたらしたかについては、明日の
EJで説明することにします。
──[ウェブ3/メタバース/007]
≪画像および関連情報≫
●IT企業が儲かるメカニズムを経済学的に説明してみた
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21世紀に入ると、新興のアメリカIT企業が収穫逓増の
法則に乗ってすさまじい勢いで成長していく。仕事ではパソ
コンを使うが、日常的にはスマホやタブレットなど、モバイ
ルが現在は主流だ。モバイルのOSは、2016年時点で、
アップルのiOSとグーグルのアンドロイドが市場を二分し
ている(国によってシェアはだいぶ違うが、日本ではほぼ二
分)。モバイル市場では、さまざまなアプリを供給する企業
が収穫逓増を実現している。たとえば日本のSNSで知られ
ミクシィは、SNS市場ではフェイスブックに敗れたものの
2013年10月に発売したスマホゲーム「モンスタースト
ライク」の投入で急激に成長した。
スマホゲームの追加生産要素(労働・資本)はほとんど増
えない。課金は通信会社が行なう。ユーザーはダウンロード
するだけだ。ヒットすればかんたんに収穫逓増になる。
ミクシィの売上高(営業利益)は、2014年3月期で、
122億円(5億円)と中堅企業並みだったが、「モンスタ
ーストライク」のヒットが始まった結果、2015年3月期
には1129億円(527億円)と、売上で9・3倍、営業
利益で105倍(!)と、絵に描いたような収穫逓増となっ
た。2016年3月期は2088億円(950億円)とさら
に増えているが、そろそろ収穫逓増のカーブは収穫逓減に移
ろうとしている。 https://bit.ly/3TqKE71
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六次の隔たり