2022年10月11日

●「日本でGAFAが生まれない理由」(第5830号)

 なぜ米国ではGAFAが生まれ、中国ではBATHが生まれて
いるのに、日本では生まれないのか。米国と中国では、それぞれ
そっくり同じものが生まれているのです。
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    ◎GAFA(米国)
     G ・・    グーグル/検索エンジン
     A ・・    アップル/デバイス販売
     F ・・    フェイスブック/SNS
     A ・・     アマゾン/ECサイト
    ◎BATH(中国)
     B ・・    バイドウ/検索エンジン
     A ・・     アリババ/ECサイト
     T ・・      テンセント/SNS
     H ・・  ファーウェイ/デバイス販売
─────────────────────────────
 深田萌絵氏という人がいます。ITコンサルティングサービス
AI、ネットワーク関連の技術協力を提供する Revatron 株式会
社の創業者です。深田萌絵氏は、日本でなぜGAFAやBATH
が生まれない理由について、著書で次のように述べています。
─────────────────────────────
 米中からは世界が羨望するビッグテックが生まれてきたのだが
なぜ日本からビッグテックが生まれないのか。背景に若い起業家
が抱えるGAFAのビジネスモデルに対する根本的な分析不足、
政治的背景への理解不足と簡単な技術的誤解がある。
 ビジネスプランを競うビジネスコンテストや、起業家を育てる
インキュベーションプロジェクトなどに参加すると、「GAFA
に憧れて起業した」というたくさんの若者に出会う。そして、G
AFAに憧れてクラウドサービスやアプリを始めたという起業家
の多くに根本的な勘違いがあるということを痛感している。
 「そもそもGAFAが何故成功したのか」ということを分析し
ていない。「ガレージでビジネスを始めて、ハッカー精神で成功
した」という「貧乏人でも気合で金持ちになれるというフェアリ
ーテ−ル(おとぎ話)」を信じているのだ。  ──深田萌絵著
    『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する!』
                         宝島社刊
─────────────────────────────
 日本は、もの作りの面では、十分世界に対抗できる技術を有し
ている国です。コンピュータの製作でも、他国にけっしてひけを
とっていません。しかし、ITに関しては残念ながら、頗る弱い
といえます。その証拠に、日本では、マイクロソフトやアップル
に対抗できるソフトウェア企業は、ほぼ皆無といってよいです。
日本はかたちのないものを作るのは得意ではないのです。
 それでもSNSでは、フェイスブック(現在はメタ)より前に
日本では「ミクシィ」とソーシャルメディアがあったのです。し
かし、ミクシィは、ユーザーが思うように拡大せず、2021年
11月にガラケー版のミクシィはサービスを終了しています。な
お、PC版のサービスは現在も継続中です。
 なぜ、ミクシィのユーザーが拡大しなかったかというと、「招
待制」という特別な方式をとっていたからです。つまり、既存の
ユーザーからの紹介がないと入会できないシステムになっていた
のです。これは、高級の社交クラブなどにおいて採用されていた
入会のシステムであり、これをSNSに取り入れることによって
特別感を出したかったのでしょう。
 それともうひとつ、グローバル対応という名の多言語対応がな
されなかったことも重要な原因です。そうこうしているうちに、
後発のフェイスブックに抜かれてしまったのです。フェイスブッ
クは、実名での登録が条件ですが、入会そのものには、制限がな
かったからです。
 今から思えば、GAFAが急成長したのは、元ソニー社長の出
井伸之氏の指摘する3つの法則が、本当の意味でよくわかってい
なかったからといえます。3つの法則を再現します。
─────────────────────────────
          @  ムーアの法則
          A 収穫逓増の法則
          Bメトカーフの法則
─────────────────────────────
 これら3つの法則は、それぞれ関連のある法則です。GAFA
のビジネスモデルを理解するうえで、しっかりと理解しておく必
要があります。その概要について、以下にまとめます。
 @は「ムーアの法則」です。
 これは、あまりにも有名な半導体チップに関するの法則で、半
導体の集積密度は時間の経過に対して、指数関数的に上昇すると
いうものです。物理学者でもあり、インテル社のCEOのゴード
ン・ムーア博士が経験則として唱えたものです。
 CPUの速度は1・5年で2倍、10年に換算すると、100
倍程度になるが、価格は変わらないという経験則です。
 Aは「収穫逓増の法則」です。
 これは、もともと経済学用語です。グラフで、時間を横軸にと
り、縦軸に収入(販売高)をとると、最初は緩やかではあるもの
の、時間の経過にしたがって、倍々の速度で、収入規模を拡大さ
せていくというものです。やがて指数関数的に収入が増大するの
で、あっという間に上場企業や巨大企業に成長します。そのよう
な経済・経営の法則のことを「収穫逓増の法則」といいます。
 Bは「メトカーフの法則」です。
 メトカーフというのは、イーサネットの開発者であるロバート
・メトカーフのことで、「ネットワークの価値は、それに接続す
る端末や利用者の数の2乗に比例する」という法則です。これは
「インターネットの外部性」と呼ばれています。明日のEJで、
その意味について考えることにします。
           ──[ウェブ3/メタバース/006]

≪画像および関連情報≫
 ●日本に「GAFA」級の企業が生まれない根本原因
  ───────────────────────────
   ここ数年、政府や自治体、大学、企業などの努力もあって
  スタートアップやベンチャー企業に対する社会の認知度が高
  まり、設立数も徐々に増えている。しかし、イノベーション
  のリーダーであるアメリカに比べるまでもなく、中国に比べ
  ても依然盛り上がりに欠けているのが実情だ。
   スタートアップといえば、アメリカのシリコンバレーと中
  国の深せんがベンチマーク的な存在となっているが、残念な
  がら、日本ではこれに相当する「聖地」が存在しない。
   また、アメリカの調査会社CB Insights が発表したユニコ
  ーン企業数(2020年11月末時点)を見ても、アメリカ
  の242社や中国の119社に比べて日本はわずか4社と存
  在感が小さい。なぜ、このような格差が生じたのか?
   1つの原因はデジタル化の遅れだ。世界各国ではIT技術
  をベースに斬新なモノやサービスを提供するスタートアップ
  企業が競い合っている。しかし、キャッシュレス決済をはじ
  め日本は全般的にデジタル化が遅れており、そこから生まれ
  るスタートアップ企業数も少ない。
   また、アメリカの場合、最初からグローバル市場を視野に
  入れて起業する企業が多く、中国の場合、14億人という巨
  大な市場を抱えているため、企業にとってスケールの大きい
  戦略が描きやすい。これに対して、日本の国内市場は決して
  小さくないが、ユニコーンという巨大な「怪獣」を育てるに
  は物足りない。        https://bit.ly/3EtUUHk
  ───────────────────────────
ゴードン・ムーア博士.jpg
ゴードン・ムーア博士
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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