2007年07月26日

●米国の貿易赤字と財政赤字の関係(EJ第2130号)

 1950年に日本は確実に経済成長する方法を模索していたの
ですが、次の方針でいくことを決めたのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          1.良い製品をつくる
          2.それを最優先する
          3.それを米国に売る
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 まず、競争力のある良い製品を作るのです。そのためには難し
い政治の問題や軍事・外交の問題は、基本的には米国にまかせて
良い製品作りに集中するのです。そして、それを米国に売る−−
米国人はこれを買ってくれたのです。そのために輸出は伸び、そ
れで得たお金で新たに技術や機械を入れてさらに成長するという
方法で、日本はリッチになっていったのです。
 日本経済が発展すると、台湾と韓国がともに難しい政治問題を
抱えていたものの、日本の真似をはじめたのです。そして、台湾
も韓国も成長すると、香港、シンガポール、タイ、マレーシアが
真似をする−−そして最後に乗ってきたのが中国なのです。その
結果できてしまったのが米国の莫大な貿易赤字なのです。
 米国は双子の赤字−−貿易赤字と財政赤字を抱えています。こ
の双子の赤字の解消には財政赤字の解消が先である−−このよう
にいわれるのですが、これはどうもそうではないようなのです。
これら2つはリンクしていないようです。
 1998年から2001年にかけて、対GDP比で2〜3%と
いうかなり大きな財政黒字を達成していた時期があるのです。ク
リントン政権の時期です。しかし、貿易赤字はこの時期ほぼ倍増
しているのです。
 2005年1月にFRBは、財政赤字と貿易赤字の関係を分析
したレポートを発表しています。計算モデルを使って財政赤字と
貿易赤字の関係を算出したものなのですが、その結果は、5対1
であったのです。つまり、仮に財政赤字を5ドル減らしても、貿
易赤字は1ドルしか減らないという結果だったのです。これは財
政赤字は貿易赤字に対してはほとんど影響がないことを示してい
たのです。つまり、貿易赤字の5分の4は財政赤字とは別の要因
で起こっているということになります。その要因には次の2つが
あります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          1.GDP成長率格差
          2.ドルの為替レート
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 まず、考えられるのは「GDP成長率格差」です。確かに米国
の成長率は日本や欧州よりも高かった時期が多いのです。成長率
が高いということは景気が良いということであり、輸入は多くな
るといえます。
 しかし、「GDP成長率格差」が原因であるといっても米国の
成長率を落としても問題の解決にはならないのです。成長率を落
とせば輸入は減少するからです。そうなると、もうひとつの要因
である「ドルの為替レート」しかないということになります。こ
れがあのIMFの声明になってあらわれたのです。
 一般的にいって、米国の大統領は1期目には為替レートの調整
には手を出さないものです。下手に為替レートをいじってドルが
暴落してしまうと、大統領は市場の信認を失ったとして野党から
攻撃されるからです。
 ブッシュ大統領の場合も1期目は貿易赤字が拡大する一方だっ
たのですが、為替レートの調整は何もやってはいないのです。し
かし、2期に入るやこの問題に手を打ってきたのです。ブッシュ
大統領の再選が決まったのが2004年11月の最初の週なので
すが、その2週間後の11月19日にFRBのグリーンスパン議
長はドイツのフランクフルトで次のようにドルのトークダウンを
はじめたのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 このまま不均衡が拡大すれば、ドルは大暴落する。だから、早
 くこの問題に手をつけなければならない。−−グリーンスパン
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 クー氏によると、為替の問題は大統領と財務長官しかいえない
ことになっており、中央銀行に当たるFRBの議長がいうのは異
例のことなのだそうです。
 しかし、グリーンスパン議長のドルのトークダウンについては
議会でも問題になっています。グリーンスパン発言から3ヶ月後
の2005年2月17日の議会でのやりとりです。
 ジョーンズというサウスカロライナ出身の議員はグリーンスパ
ン議長に対して次の質問をしています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ジョーンズ議員−−
 日本が7000億ドル以上の米国債を保有し、中国と香港が合
 わせて2500億ドル以上の米国債を持っているといわれるな
 かで、このまま赤字が増加を続ける一方で、その赤字を抑制す
 るために必要なことをしない場合、仮に日本あるいは中国が米
 国債を買うのをやめたら、アメリカの金融市場にどういう影響
 があるだろうか。
 グリーンスパン−−
 その点について我々は調べたが、我々の結論は、外国人による
 買いは米国債の利回りをわずかに押し下げているというもので
 あり、そこから言えることは、もしも彼らが買うのをやめたり
 売りに回ったとしたら、金利はわずかだけ上ることになる。
                  −−リチャード・クー著
     『「陰」と「陽」の経済学』 −−東洋経済新報社刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 このグリーンスパンの発言は実に意外であったのです。かつて
はそうでなかったのですが、米国では大きく何かが変化している
ようです。         −− [日本経済回復の謎/39]


≪画像および関連情報≫
 ・アラン・グリーンスパンとは何か
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  アラン・グリーンスパンは、米国のマネタリスト経済学者で
  1987年から2006年まで、連邦準備制度理事会(FR
  B)議長を務めた。就任直後の1987年に起きたブラック
  マンデーを巧みな金融政策で乗り切り、1990年代の米国
  経済の黄金時代を招来したため、長期にわたって信任されて
  いた。米国マスコミも彼の手腕を絶賛し、マエストロ−−巨
  匠、名指揮者を意味するイタリア語の称号を与えた。
                    −−ウィキペディア
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

2130号.jpg
posted by 平野 浩 at 06:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本経済回復の謎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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