2022年10月07日

●「企業価値を変化させる3つの法則」(第5829号)

 このところ急激な円安が進み、日本の凋落ぶりが一層際立って
います。考えてみると、日本は1991年にバブルが崩壊し、日
本経済は長期の経済停滞に陥っていますが、この時期は日本では
PCが普及し、いわゆるIT革命が始まった時期と一致していま
す。そして、1995年以降になると、企業でも家庭でもインタ
ーネットの利用が始まっています。日本の凋落はちょうどこの頃
から始まり、現在にいたっています。
 20世紀の日本は、ものづくりに成功し、第2次産業革命が生
み出した工業化社会の後半に当たる1980年代には「ジャパン
・アズ・ナンバーワン」であるとか、「21世紀は日本の世紀」
などともてはやされ、米国に次ぐ世界第2位の経済大国に駆け上
がっています。形のあるものづくりでは、日本は世界を制覇した
のです。あの米国が日本車をハンマーで叩き割ったぐらいですか
ら、日本の当時の経済成長は脅威のマトであったのです。
 しかし、インターネットが普及する1990年以降、日本の凋
落がはじまっているという見方があるのです。いわゆるIT革命
がはじまってから日本の凋落がはじまっているという見方ですが
新しい見方であるといえます。つまり、日本は「Web1.0」
の波に乗り遅れ、「Web2.0」 にも乗り遅れているのです。
 2022年10月6日付の日本経済新聞によると、スイスの国
際経営開発研究所(IMD)が、このほど発表した2022年の
「世界デジタル競争力ランキング」で、日本は人材不足などから
世界29位と前年より順位を1つ下げています。これでは、これ
から始まる「Web3.0」 にも乗り遅れること必至です。
 その当時の日本の企業価値の考え方は、総売上高と利益をベー
スにして時価総額が決まると考えてきたのですが、インターネッ
トが普及してからは、その考え方に大きな変化が起きており、日
本はそれについて行っていないのです。
 これについて、今年の6月2日に亡くなった出井伸之元ソニー
社長は、それは次の3つの法則により、企業価値の考え方が変化
したためであるといっています。
─────────────────────────────
 1.ムーアの法則
   インテル社ファウンダーのゴードン・ムーア博士が提唱し
  た経験則で、半導体の集積密度は時間の経過に対して指数関
  数的に上昇する、というもの。CPUのスピードは、1.5
  年で2倍、10年で換算すると、100倍ほどになる。
 2.収穫逓減の法則
   半導体企業は、規模を大きくしていくことで、競争力を増
  していく、というもの。
 3.メトカーフの法則
   インターネットの外部性。SNSなどにみられるように、
  サービスのユーザーが増加することで、情報コンテンツおよ
  びその情報ユーザーが共に自律的な増加をする。そのため、
  企業価値も自律的に飛躍的な増加をみせる。
         ──出井伸之監修/角川インターネット講座
               『進化するプラットフォーム/
          グーグル・アップル・アマゾンを超えて』
─────────────────────────────
 GAFAによって代表されるプラットフォーム企業の発展は、
これら3つの法則に基づいています。出井伸之氏がソニーの社長
になったのは1995年のことです。1995年は象徴的な年で
インターネットの商用化が全世界で解禁され、日本では11月に
「ウインドウズ95」が発売されています。
 その前年の1994年に出井氏は、企画スタッフとして、ロサ
ンゼルスで当時米国の副大統領であったアル・ゴア氏のスピーチ
を聞く機会があったといいます。そのスピーチとは「情報スーパ
ーハイウェイ構想」であり、出井氏はこれを聞いて大きなショッ
クを受けたといいます。
 情報スーパーハイウェイ構想(NII)とは「全米情報基盤」
のことで、1993年にビル・クリントン米大統領の指揮のもと
で推進された、米国合衆国のすべてのコンピュータを光ケーブル
などによる高速通信回線で結ぶという構想のことです。NIIは
次の言葉の略です。
─────────────────────────────
      ◎情報スーパーハイウェイ構想/NII
       National Information Infrastructure
─────────────────────────────
 この情報スーパーハイウェイ構想を聞いた出井伸之氏は、ソニ
ーの企画役員として、当時のソニーの社長、大賀典雄氏宛てにレ
ポートを送っています。その要旨は次の通りです。
─────────────────────────────
 ・21世紀の初頭には、ネットワークを利用した巨大企業が、
  2、3社出現する。
 ・通信インフラを利用したビジネス統合者が成長する。
          Multiple Software & Service Integrator
 ・メディアは、一方通行マスメディアから、パーソナルメディ
  アへの変革が起きる。
                   1994年1月28日
   ──出井伸之監修/角川インターネット講座の前掲書より
─────────────────────────────
 この出井氏の予測は、プラットフォーマーの出現によって、現
実のものになっています。それから20年後の2015年現在、
ソニーとアマゾングループの比較してみると、2つの企業の総売
上、利益に大差はないものの、ソニーの時価総額は、アマゾング
ループの6分の1程度でしかなかったのです。
 GAFAによって代表されるプラットフォーマーの分析につい
ては、さらに考えて行くことにします。それが「Web3.0」
と深く関連があるからです。
           ──[ウェブ3/メタバース/005]

≪画像および関連情報≫
 ●情報過剰は新たな脅威/[虚実のはざま]第6部
  私の提言<1> 西田亮介東京工業大学准教授
  ───────────────────────────
   ネット空間に真偽不明の情報が飛び交い、社会に混乱や不
  信を生む。その危うさをコロナ禍は浮き彫りにした。しかし
  この問題に特効薬は存在せず、多角的な対策と継続的な議論
  が求められる。私たちはどう備えるべきなのか。シリーズの
  第6部では、各分野の識者が現状を読み解き、ヒントを提示
  する。
   人々に「情報源を確認しよう」と繰り返し呼びかけること
  は重要だ。しかし、それだけでは解決できない段階に来てい
  る。私たちは「情報過剰」という以前とは根本的に異なる環
  境に置かれているからだ。
   発信の中心がマスメディアに限られていた頃とは違い、誰
  でも発信者になれる今、人々は膨大な情報に囲まれている。
  特定の分野で影響力を持つ「インフルエンサー」が無数に現
  れ、選択肢が多様化したのは良いことだが、根拠のない話や
  デマもあふれるようになった。真実かのように巧妙に装い、
  人を操ろうとする発信者もいる。
   しかし、増大する情報量に対し、人間の注意力や認知能力
  は限られている。SNSに流れる投稿の真偽確認に手間や時
  間をかけられる人は多くはない。そもそも一般の人には、調
  べるインセンティブ(動機付け)が働きにくい。人は自分の
  価値観や願望に合う言説に触れていたい習性があり、いくら
  でも自分好みのものが得られる環境で、あえて根拠を確かめ
  る気持ちにはなりにくいだろう。 https://bit.ly/3CcGw3h
  ───────────────────────────
出井伸之元ソニー社長.jpg
出井伸之元ソニー社長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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