2022年09月15日

●「外資が逃げると中国は金欠になる」(第5815号)

 中国の不動産市場の現況について、ケネス・ロゴフ米ハーバー
ド大学教授は、次のように述べています。
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 中国にとって不動産の影響は、関連産業も含めると国内総生産
(GDP)の29%にも及び、不動産の活動が20%減少すると
GDPが5〜10%減少する可能性があるという。
          ──ケネス・ロゴフ米ハーバード大学教授
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 中国の不動産に異変が起きています。不動産の値崩れ、取引量
の急減、デベロッパーの相次ぐ債務不履行、住宅購入者による住
宅ローン返済拒否の拡大などです。
 既に述べているように、中国では、住宅完成前に資金を支払う
予約販売のケースが多いので、予定通りに住宅が完成しないと、
住宅の完成前に住宅ローンが始まることになります。しかし、こ
のところデベロッパーの資金繰りが悪化して、約束の期日までに
住宅が完成しないケースが多くなっているので、住宅購入者のロ
ーン支払い拒否が増えているのです。こういう急増している未完
成物件のことを中国では「爛尾楼」(ランウェイロウ)といって
います。
 中国の現況は明らかに不動産バブルです。なぜかというと、中
国は、これまで巨額のインフラ投資を行うことによって、高い経
済成長を実現するエンジンにしてきたのです。2008年のリー
マンショックのさいは中国は4兆元(当時のレートでは約57兆
円)の景気対策は「世界を救った」と称賛されたものです。その
資金は、ほとんどインフラ投資や住宅投資に投入されています。
 一に投資、二に投資、三に投資なのです。それは、個人消費が
弱いからでもありますが、GDPを短期間で嵩上げするにはこれ
が一番効果的なやり方です。
 その投資量たるや、けた外れで、マイクロソフトの創業者であ
るビル・ゲイツ氏は、その投資資金の超巨額さを次のように表現
しています。
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 中国の2011年〜13年の3年間のセメント消費量は66億
トンであり、これは、アメリカが20世紀の100年間の消費量
である45億トンを超えている。     ──ビル・ゲイツ氏
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 中国は、そういう投資を現在まで15年も続けてきたのです。
こういうことをしていけば、次第に大きなリターンを望めない不
要不急のインフラが積み上がるのは当然のことです。10年前に
は、モンゴル自治区のオルドス市などに人が住んでいない「鬼城
(グェイチョン)」が多数出現していたことをEJで書いたこと
を覚えています。
 とくに高速鉄道の総延長は、地球一周分の4万キロに達してい
ますが、ほとんどが赤字路線で、高速鉄道を運行する中国国家鉄
路集団の負債は、120兆円を超えています。しかし、それでも
まだ延長する方針を変えていません。
 そういう中国に現在深刻な事態が起きています。中国から外国
の対中債券投資の引き上げが起きていることです。つまり、外資
が逃げ出していることです。
 ここで、添付ファイルを見てください。このグラフは、産経新
聞特別記者の田村秀男氏のコラムに掲載されていたものです。外
国人保有の中国債券(青)と外貨準備(赤)について、今年の1
月と比較したものです。その驚くべき急減ぶりと、人民元相場の
下落が示されています。これについて、田村秀男氏は、次のよう
に解説しています。
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 これは、全て中国特有の通貨・金融制度に起因する。中国は流
入する外貨すなわちドルに応じて人民元資金を発行し、土地配分
権を持つ党官僚がその資金と結びつけて不動産、インフラなど、
固定資産投資を行い、GDPをかさ上げしてきた。外貨の流入源
は経常収支黒字、それと外国からの対中投資で、言い換えると中
国の対外債務である。
 他方で、習政権は対外膨張策をとるので対外投資が増える。さ
らにもう一つ大きな資本流出がある。規制の網をかいくぐる資本
逃避で、膨らむと、国内資金の裏付けになる外貨はマイナスにな
る。いま最大の資本流出要因は外国からの対中債券投資の引き揚
げだ。ロシアのウクライナ侵略戦争開始後、激しくなっている。
          ──「田村秀男/『お金』は知っている」
        2022年9月9日(8日発行)「夕刊フジ」
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 ところで中国の個人消費はなぜ低いのでしょうか。
 2021年の中国の個人消費(対GDP比)は、38・5%で
す。日本は平均して約60%ですが、このところコロナ禍もあっ
て減少しています。2022年6月の日本の個人消費は56・3
%、それでも中国に比べれば、かなり高いレベルにあります。
 中国の個人消費が低い原因は、高い貯蓄率と表裏の関係にあり
ます。なぜ、貯蓄に励むのかというと、世界第2位の経済大国で
あっても、中国の場合、年金、医療などの、社会的セーフティー
ネットが脆弱であるからです。
 今後中国経済がどうなるかについて、真壁昭夫多摩大学特別招
聘教授は、次のように述べています。
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 短期間で中国の不動産市況が底打ちに向かう展開を予想するこ
とは難しい。共産党政権が債務問題の深刻化に直面する企業や金
融機関に公的資金を注入し、不良債権処理を余儀なくされるまで
不動産バブル崩壊の負の影響は増大する可能性が高い。貧富の格
差は拡大し、若年層などの失業率はさらに上昇して国民の不満が
追加的に高まるだろう。  ──真壁昭夫多摩大学特別招聘教授
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             ──[新中国・ロシア論/042]

≪画像および関連情報≫
 ●中国:不動産に依存した経済発展の終焉
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  ◆中国版総量規制の導入に、新型コロナウイルス感染症の再
  拡大に伴う厳格な移動・行動制限が加わり、中国の不動産市
  場はかつてない落ち込みを経験している。住宅ローン金利引
  き下げなどのテコ入れ策にもかかわらず、住宅需要が刺激さ
  れないのは、住宅を完成前に購入し、銀行への住宅ローンの
  返済が始まっても、工事中断により、その物件が手に入らな
  い懸念があるためである。デベロッパーへの資金サポートな
  どにより、工事を再開させることが、不動産市場の不振脱出
  の第一歩となろう。
  ◆より長期的な観点で、今後の中国の不動産市場はどうなる
  のであろうか。中国政府としては、銀行の担保割れを引き起
  こすような住宅価格の暴落、あるいは調整の長期化は、避け
  たいところであろう。しかし、その懸念は燻ぶり続ける。中
  国版総量規制は、住宅に対する需要と供給をともに抑制する
  ことで、価格のソフトランディングを目指す意図がある。し
  かし、この政策によって、不動産の開発と販売に依存した経
  済発展パターンは立ち行かなくなる。これが経済成長鈍化の
  一因となろう。
  ◆今後の中国の不動産デベロッパーの勢力図は、国有企業を
  主体に、健全性の高い(当局の政策・意図に従順な)民営企
  業がそれを補完する、という形になる可能性が高い。
                 https://bit.ly/3BvvvLg
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中国の外貨準備及び外国の中国債権保有の1月末比.jpg
中国の外貨準備及び外国の中国債権保有の1月末比
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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