2022年09月14日

●「中国の『米国超え』は困難である」(第5814号)

 9月5日付の米紙「ウォールストリート・ジャーナル」(WS
J)に次の記事が出ています。
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◎「中国経済の『米国超え』懐疑論が浮上」
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 【香港】中国経済がここ1年に急減速したことで、同国がいつ
米国を抜いて世界最大の経済国になるのかを巡り、専門家の間で
予想を見直す動きが広がっている。そもそも「米国超え」はあり
得るのかといった懐疑的な見方も浮上してきた。
 ドル建ての国内総生産(GDP)換算で、中国は2020年代
末までに米国を追い抜くとの見立てが、最近までエコノミストの
間では支配的だった。ところが、中国当局による徹底した「ゼロ
コロナ」感染対策や、不動産市場の投機抑制といった政策により
経済成長に急ブレーキがかかっており、今年に入って景気見通し
が急激に悪化している。      ──2022年9月5日付
      「ウォールストリート・ジャーナル/電子版」より
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 「2020年代末までに中国はGDPで米国を追い抜く」──
中国が公表する経済数値が正しいとすれば、それは十分あり得ま
すが、その数値の正確性には疑問があり、まして昨今の中国の国
内事情を勘案すると、上記WSJが伝える「米国超え」の懐疑論
は当然のことです。
 それに中国は豊かになったといっても、14億人の人口のうち
6億人は月収200ドル以下で暮らしているといわれています。
中国は名目GDPでは世界第2の経済大国ですが、豊かさを示す
1人当たりGDPは、世界65位(2021年現在)でしかあり
ません。ちなみに米国は6位、日本は28位です。残念なことに
日本はどんどん順位を下げています。
 それにしても、9月に入るや、メディアでは、中国経済の停滞
論の記事が満載です。参考までに、日本経済新聞「経済教室」の
論文をご紹介しておきます。URLをクリックすれば、記事全文
を読むことができます。
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◎苦境続く中国経済@/2022年9月5日
                 福本智之大阪経済大学教授
              「人口動態、不動産不況に影響」
              https://s.nikkei.com/3Dg3F7e
◎苦境続く中国経済A/2022年9月6日
               西村友作対外経済貿易大学教授
              「投資主導で安定成長」道険し」
             https://s.nikkei.com/3d2QmMy
◎苦境続く中国経済B/2022年9月7日
                 渡辺真理子学習院大学教授
             「指導部、『創造的破壊』に慎重」
              https://s.nikkei.com/3eGSjPa
               日本経済新聞「経済教室」より
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 上記3つの論文を読むと、中国には様々な問題があり、このま
までは、中国の経済は失速し、とてもではないが、米国を抜いて
世界一の経済大国になることは困難です。その理由としては、次
の3つを上げることができます。
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            @債務危機大
            A人口の減少
            B国際的孤立
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 @の「債務危機大」とAの「人口の減少」については当然のこ
とすが、Bの「国際的孤立」とは何でしょうか。
 それはたくさんあります。独善的なワクチン外交、中国共産党
の体制や政策に異を唱える国に対する「報復」措置を吠える戦狼
外交、一帯一路戦略でみられる借金の罠、そして台湾問題があり
ます。この台湾問題に関連して、昨年来のリトアニアへの恐喝問
題も発生しています。
 リトアニアへの恐喝問題とは、バルト3国のひとつであるリト
アニア共和国が、2021年7月、首都ビリニュスで「駐リトア
ニア台湾代表処」を開設したことが原因で起きています。問題は
日本や欧米諸国が、台湾の公館に使う名称「台北代表処」ではな
く、「台湾代表処」という名称で開設したことにあります。これ
はなかなか勇気のいることです。
 中国にとっては、「台北」という都市の名前なら許容範囲であ
るものの、「台湾」という名称を認めたことで、猛反発が起こっ
たのです。中国は、これを「『一つの中国』への挑戦」と受け止
め、リトアニアから自国の大使を召還し、外交関係を格下げして
います。そして、リトアニア企業との取引を停止し、輸入を事実
上差し止めています。さらに、他のEU加盟国の企業に対しても
リトアニアの原材料を使った製品を中国へ輸出しないように圧力
を掛けています。まさに恐喝外交、戦狼外交です。
 2021年12月15日、在中国リトアニア大使館員ら19人
が、中国を退去し、パリ経由でリトアニアに帰国しています。そ
して、2022年8月12日、リトアニア運輸・通信省のバイシ
ウケビチウテ副大臣が台湾を訪問しています。これに対して中国
は、リトアニアの運輸・通信省とのやり取りを停止し、同分野で
の交流や協力も取りやめるとしています。このように両国は台湾
をめぐって関係が悪化しています。このようなことをしていれば
中国は国際的孤立をさらに深めてしまうだけです。
 しかし、中国経済の苦境は、このまま放置すると、深刻な金融
危機を引き起こす恐れがあります。しかし、経済に強いとはいえ
ない習近平政権の取っている措置は、対症療法そのものであり、
危機を回避できるとは思えないものです。
             ──[新中国・ロシア論/041]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の「やられたらやり返す」戦狼外交が抱く難問
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   中国共産党の体制や政策に異を唱える米欧日などに対して
  「報復」措置を吠える「戦狼外交」は、19世紀以降に西洋
  や日本に領土や主権を侵食された「屈辱の歴史」からはい上
  がり、今や「強国」になった国民のナショナリズムを刺激し
  ており、習近平共産党総書記(国家主席)は求心力を高める
  国内的効果を狙っている。
   しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受け、アメリカのバイ
  デン大統領が、ロシアのプーチン大統領について「権力の座
  にとどまってはならない」と述べ、米欧日などの西側民主主
  義陣営と、中ロを中心とした権威主義陣営の対決がより鮮明
  になる中、習近平は体制の存亡を懸けた対西側イデオロギー
  闘争を勝ち抜く「宣伝戦」の一環として「戦狼外交」を強化
  する必要性を感じているだろう。ただロシアに偏りすぎる印
  象も避けたい意向で、その強硬宣伝工作のあり方が問われて
  いる。習近平が2月4日、ウクライナ侵攻を前に北京冬季五
  輪開会式に出席したプーチンと会談し、公表した共同声明で
  こう明記された。「中ロは、外部勢力が両国共同の周辺地域
  の安全と安定を破壊することに反対し、外部勢力がいかなる
  口実であれ、主権や国家の内政に干渉することに反対し、カ
  ラー革命に反対する」
   習近平は米欧日などを念頭に、権威主義陣営を動揺、弱体
  化させる「カラー革命」への警戒感をあらわにした形だ。共
  産党体制を維持、安定させ、社会主義の優位性を広めるため
  習近平にとって中ロ「共闘」は、ウクライナ危機がどう転ぼ
  うと絶対的な原則である。    https://bit.ly/3Rytq6N
  ───────────────────────────
戦狼外交官/趙立堅報道官.jpg
戦狼外交官/趙立堅報道官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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