2022年09月07日

●「習近平はどういう指導者であるか」(第5809号)

 昨日から引き続き、習近平主席の人物像に迫っていくことにし
ます。その前提として、江沢民、胡錦濤、習近平という3代の中
国の最高指導者(国家元首)の任期を以下に示します。
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     ◎江沢民
      1989年11月〜2002年11月
     ◎胡錦濤
      2002年11月〜2012年11月
     ◎習近平
      2012年11月〜
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 江沢民氏は、1989年の天安門事件で失脚した趙紫陽総書記
の後任としてケ小平主席から指名され、上海市党委員会書記から
総書記になっています。しかし、江沢民氏は自分の能力を自覚し
ており、優秀な部下で自分の周囲を固めることで、職責を果たす
ことができた指導者であるといえます。
 胡錦濤氏は、前任者の江沢民政権の基本路線にそって、堅実な
国家運営を行った指導者です。2010年にGDPで日本を抜き
貿易・投資の自由化促進などについても、無難な経済運営を実施
し、2008年のリーマンショックで打撃を受けたものの、危機
から早々と抜け出して国際経済をリードするなど、主として経済
運営で功績を上げたリーダーです。
 西側諸国との関係も胡錦濤政権時代が一番良好だったというこ
とができます。共産党政権ではあったものの、中国国民は比較的
自由にものがいえたのです。しかし、貧富の格差の問題や腐敗の
広がりについて、徹底力を欠き、ほとんど進捗しなかったといえ
ます。その原因としては、胡錦濤政権と江沢民院政の激烈な権力
闘争があったのです。
 中国の国家指導者には、中国共産党総書記、国家主席に加えて
軍トップの中央軍事委員会主席の3つが資格があります。これら
3つの資格のうち国家主席については、任期は5年で2期を超え
て就任できないと憲法に定められていますが、総書記と軍のトッ
プである中央軍事委員会主席には任期の定めがなかったのです。
そのため、江沢民氏は政権を引き継ぐとき、中央軍事委員会主席
の地位にそのまま居座ったのです。院政のためです。
 さらに、江沢民氏は、胡錦濤政権の次の政権のため、無能では
あるが、家柄の良い、当時浙江省書記であった習近平氏を温存し
ていたのです。これも院政のためです。つまり、習近平氏は、も
ともと江沢民派に属していたのです。
 しかし、2011年に習近平氏が総書記に就任し、2012年
3月に国家主席に就任すると、いわゆる反腐敗キャンペーンを展
開し、自身の政敵を排除していったのです。その矛先は、自分の
出身閥である江沢民派にも、ケ小平派にも向けられています。狙
いは、ただひとつ政敵の排除です。
 そして、2018年3月の全人代で、憲法を改正し、国家主席
の任期を撤廃したのです。これによって、習近平氏は、共産党総
書記、国家主席、中央軍事委員会主席の3つの権力をすべて手中
に収め、独裁色を一層強めていったのです。
 そういう習近平主席について、中国ウオッチャーの福島香織氏
は、習近平主席について次のように論評しています。
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 まったく自分に自信のない習近平は、結局、自分に権力を集中
させ、すべてを自分がコントロールすることで自信を得ようとし
た。少しでも自分と異なる意見を言ったり、習近平に批判的なそ
ぶりを見せたりする人間は許容できなかった。軍制の思い切った
改革を断行し、指揮系統を自分に集中するよう、軍の四大総部を
解体して、その機能を中央軍事委員会の下部組織に置いた。軍に
は、ことさら強い忠誠心を求め、同志ではなく「主席」と呼ばせ
た。次に国務院組織改革を行った。組織改革に伴う人事の抜擢は
有能さより、いかに習近平に従順でごますりがうまいかによって
決まった。
 本来、経済政策は首相の管轄だったが、経済政策も自らが主導
権をとらずにはいられなかった。習近平は、李克強首相の頭越し
に、劉鶴(副首相)ら実務能力の高い経済官僚をブレーンとして
頼りに、自分で次々と鍵となる重要経済政策を打ち出したが、お
おむね失敗している。
 なぜなら、経済官僚たちは習近平と違う意見を言ってしまった
り、その高い知見によって習近平のコンプレックスを刺激すれば
逆に怒りを買って、失脚させられるかもしれない、とびくびくし
て、その本領を発揮できなかったからだ。
 有能と知られた劉鶴ですら米中貿易戦争の交渉過程で、習近平
の気に染まぬ提案をしてしまい、その寵愛を失ってしまった。習
近平は中央軍事委員会連合合作指揮センター総指揮、中央国家安
全委員会主席、中央全面深化改革指導小組組長、中央軍事委員会
深化国防軍隊改革小組組長、中央ネット安全情報化指導小組組長
中央外事指導小組組長、中央対台湾工作指導小組組長、中央財経
指導小組組長など、あらゆる組織のトップを兼務した。これほど
肩書きの多い共産党指導者は過去になかった。 ──福島香織著
   『習近平/ゼロコロナ、錯綜する経済、失策続きの権力者
                 /最後の戦い』/徳間書店
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 ケ小平氏は、権力が長く特定の人物に集中すると、共産党体制
が崩壊するリスクがあると考えていたのです。そのため、集団指
導体制というかたちで、仕事の責任を党中央政治局常務委員メン
バーで分担させるシステムをつくったのです。
 しかし、習近平氏は、その体制というかシステムを自身の任期
である2期10年をかけて、完全にブチ壊し、自身が永遠に中国
を支配できる中国の「皇帝」を目指しています。きわめてリスク
の多いことであるといえます。
             ──[新中国・ロシア論/036]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプが警戒する中国の習近平とは何者か?米国主導の国
  際秩序に宣戦布告/
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   チャイナリスクとは何か、と聞かれると、経済崩壊、軍事
  的脅威、社会動乱などの言葉が頭をよぎるのだが、私はとり
  あえず、習近平政権自身がチャイナリスクではないか、と答
  えることにしている。というのも、習近平政権は前の二つの
  政権、江沢民、胡錦濤政権と明らかに質の違う危うさをはら
  んでいるからだ。江沢民政権、胡錦濤政権時代にはある程度
  予測できた動きが習近平政権では予測できない。
   では、習近平政権とはどんな政権なのかといえば、これは
  私と同じ「中国専門ジャーナリスト」でも、人によってずい
  ぶん違う。
   習近平[1953〜/2013年より第七代中華人民共和
  国主席、第四代中央軍事委員会主席。太子党]は、非常に優
  れた為政者で大衆に人気があり、力強いリーダーシップがあ
  り、ケ小平[1904〜1997/毛沢東死後の実質最高指
  導者として「改革開放」を進める]に次ぐ共産党中興の祖と
  なる、ロシアのプーチン[1952〜/第四代ロシア連邦大
  統領。元KGB職員]タイプの実力者と評価する人もいる。
  一方、歴代指導者の中で最弱の「皇帝」であり、能力も党内
  の信頼も低く、党中央においては孤立し軍権も掌握できてい
  ない、という人もいる。あるいは、強烈な独裁者であり、第
  二の毛沢東[1893〜1976/中華人民共和国初代国家
  主席。大躍進政策、文化大革命を実行]を目指し、亜文革を
  起こそうとしている危険人物という人もいる。
                  https://bit.ly/3TKJkfQ
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習近平中国国家主席.jpg
習近平中国国家主席
posted by 平野 浩 at 06:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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