2022年08月03日

●「灰色のサイが動き出している中国」(第5785号)

 「中国で『灰色のサイ』が動き出している」──最近、よくい
われることばです。「灰色のサイ」とは何か。何を意味している
のでしょうか。
 金融市場のリスクを説明するのに動物を使って表現することが
よくあります。例えば、「黒い白鳥(ブラックスワン)」という
表現があります。スワンは「白鳥」というように白色ですが、あ
るとき黒い白鳥が現れ、それまでの常識が崩れるということを意
味します。2008年のリーマンショックは、まさに黒い白鳥が
出現したのです。
 チャイコフスキーの「白鳥の湖」という有名なバレエがありま
すが、このバレエは、同じバレリーナが正反対の性格をした白鳥
・オデットと、黒鳥・オディールを演じるところが、見どころに
なっています。
 これに対して、「灰色のサイ」は、日常に当たり前に存在しま
す。静かにしているうちはいいのですが、いったん暴れ出すと、
手に負えなくなり、極めて大きな影響を及ぼす存在になることを
いいます。つまり、日頃当たり前に存在し、誰も不思議に思わな
い存在が、突如問題を起こし、手をつけられなくなるものを「灰
色のサイ」というのです。
 米国の作家であるミシェル・ワッカー氏が、著書『グレー・リ
ノ/灰色のサイ』で示し、2013年のダボス会議で提起して、
知られるようになった表現です。
 現在の中国経済にとっての「灰色のサイ」は地方政府や企業に
積み上がった過剰債務のことです。2019年1月21日に、地
方や中央政府のトップを北京に集めた学習会では、習近平主席が
「わが国の経済情勢は総じて良好」としつつも、「『黒い白鳥』
だけでなく、『灰色のサイ』も防がなければならない」と強調し
たといわれています。
 中国の不動産市場の4大民営企業は「碧万恒融」といわれてい
ます。「碧万恒融」とは次の4つの民営企業を表しています。
─────────────────────────────
         碧 ・・・・  碧桂園
         万 ・・・・ 万達集団
         恒 ・・・・ 恒大集団
         融 ・・・・ 融創中国
─────────────────────────────
 これらの民営不動産デベロッパーに現在何が起きているかを知
るために、中国ウオッチャーの宮崎正弘氏と経済評論家の渡辺哲
也氏との対談をご紹介します。
─────────────────────────────
渡邊:中国には民間と国有の2種類のデベロッパーがあります。
 今、破綻しているのはみんな民営デベロッパーなのです。銀行
 融資が非常に厳しくなっているので、習近平政権はたぶん最終
 的には民営デベロッパーを全部潰すつもりでしょう。
宮崎:潰したら、中国経済が縮小して、目も当てられなくなりま
 す。すでに言ったように中国では地方政府が土地使用権を民間
 デベロッパーに売ってきました。民間デベロッパーがいなくな
 ると困るでしょう。
渡邊:しかし習近平政権は今、民間デベロッパーの開発中の案件
 を全部、国有デベロッパーに買い取らせています。だからデベ
 ロッパーも人民公社になるのではないですか。
宮崎:日本でいえば三菱地所、三井不動産、東急不動産が国有化
 されるということですね。
渡邊:IT化するとも言えるでしょう。専売公社になるというこ
 とです。民間デベロッパーが土地専売公社や不動産専売公社に
 なります。
宮崎:人民公社になるなら、中国は再びかつてのような社会主義
 に舞い戻ることになります。その代わり人民公社路線ではもう
 中国の経済発展は望めませんね。しかし毛沢東時代に戻るのだ
 から、習近平主席からすれば本望でしょう(笑)。
渡邊:共産主義としての理想が現実になるということです。習近
 平政権は「貧富の格差を是正し、すべての人々が豊かになる」
 という「共同富有」という方針を掲げています。
           ──宮崎正弘/渡邊哲也著/ビジネス社
                    『プーチン大恐慌/
        ”ウクライナ後”の世界で日本が生き残る道』
─────────────────────────────
 中国政府は、ここ数年、この不動産バブルを何とか小さくしよ
うと、バブル圧縮政策を手を替え、品を替えて実施してきたので
すが、うまくいかず、ついに強力な規制を実施することにしたの
です。2020年に中国政府は、「三道紅線」(3本のレッドラ
イン)という一種の兵糧攻め策を打ち出します。その3本のレッ
ドラインとは次の通りです。
─────────────────────────────
    ◎「三道紅線」
    @資産負債比率70%超
    A純負債資本倍率100%超
    B手元資金の短期債務倍率が100%割り込み
─────────────────────────────
 これら3つの指標のどこかに該当した企業には、銀行からの融
資の制限を行うというものです。この政策によって、2020年
だけで、不動産企業が500社以上が倒産しています。不動産市
場の四大民営企業「碧万恒融」も、この3本のレッドラインのい
ずれかに該当しており、なかでも恒大集団は3本のレッドライン
にすべてに該当し、経営上のピンチに陥っています。
 恒大集団の債務には、外国人向けのドル建て債券195億ドル
が含まれており、もし倒産ということになると、国際市場に対し
ても影響は小さくないのです。もし、倒産ということになれば、
リーマンショック級になるといわれています。
                 ──[新中国論/012]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国不動産の連鎖倒産が止まらない」これから習近平政権を
  待ち受ける最悪のシナリオ/真壁昭夫氏
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   足許で、中国の不動産大手の恒大集団(エバーグランデ)
  が、本格的な破綻に向かうとの懸念が高まっている。同社の
  米ドル建て社債の価格の推移を確認すると、2022年3月
  に償還を迎える債券も、2025年6月に償還を迎える債券
  も7〜8割の債務減免を織り込んでいる。9月23日と29
  日に期限を迎えた2本のドル建て社債の利払いは実施されず
  30日間の猶予期間に入った。
   中国の不動産業界では、エバーグランデ以外にもデフォル
  ト懸念が高まる企業が増えている。中国経済は投資に依存し
  た成長の限界を迎え、共産党政権の経済運営に対する不透明
  感が増している。返済能力が低下しデフォルト懸念が高まる
  不動産業者をどう救済、再編するかは共産党政権の意思決定
  にかかっている。
   今後、エバーグランデの経営破綻が、2008年のリーマ
  ンショックのような世界的な金融危機につながる可能性は低
  い。ただ、同社のデフォルトを発端に中国の不動産市況が悪
  化すれば中国国内の理財商品の価値は棄損され、経済の減速
  はより鮮明化するだろう。それは、世界経済にとって無視で
  きないリスク要因だ。中国経済の成長を支えた不動産市場は
  かつての輝きを失い窮地に陥りつつある。その象徴の一つが
  約33兆円の負債を抱えるエバーグランデのデフォルト懸念
  だ。重要なポイントは、エバーグランデ以外にも、資金繰り
  が逼迫して債務の返済能力への不安が高まる大手、準大手の
  不動産デベロッパーが急速に増えていることだ。状況は切羽
  詰まっている。        https://bit.ly/3JmjWbB
  ───────────────────────────
恒大集団.jpg
恒大集団
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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